宮司愛海連載:『Manami Memo』 第21回フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Spo…

宮司愛海連載:『Manami Memo』
第21回
フジテレビの人気スポーツ・ニュース番組『S-PARK』とweb Sportivaのコラボ企画として始まった宮司愛海アナの連載『Manami Memo』。第21回は、世界選手権の活躍で話題となった、あの日本代表チームについて。

ハンドボール男子日本代表について記したフジテレビの宮司愛海アナ
ハンドボール男子日本代表の快進撃をご存じですか?
先月エジプトで行なわれた世界選手権で24年ぶりに1次リーグを突破し、メインラウンドに進出。決勝ラウンドに進むことは叶いませんでしたが、欧州選手権2位のクロアチアに引き分けるなど、存在感をしっかり残す結果となりました。
全敗、そして最下位で終わった2019年の前回大会からいったいどんな変化、進化があったのか。主将の土井レミイ杏利選手に伺ったお話を織り交ぜながら迫っていきたいと思います。
「世界と戦うメンタル」への改革
2015年、世界最優秀監督にも選ばれ、リオオリンピックではドイツ代表を銅メダルに導いたアイスランド人の名将 ダグル・シグルドソン氏が日本代表監督に就任したのは2017年でした。
はじめはなかなか結果が出ず、毎大会、毎試合、試行錯誤を重ねていた日本代表。国際経験を積むという監督の方針で国際試合を多く戦いながらも、接戦で勝ちきれない状況が続いていたなか、メンタル面を常に課題に挙げ、徹底的に改善に取り組んできました。
7戦全敗、出場国中最下位で終わった2019年の世界選手権後、代表合宿中は週に1、2回メンタルコーチによるトレーニングを取り入れます。そこで、これまでオリンピックの舞台で結果を残してきた方たちの話やストーリーをもとに、自分たちの理想のプレーについてグループディスカッションを重ねてきたそうです。
「以前であれば逆転されたらそのままずるずる離されてしまうところを、もう一回盛り返して逆転したパターンも今大会は何回もありました。精神的に強くなってきているのは実感しています」

土井レミイ杏利選手にリモートで取材中の宮司アナ
こう語るのは主将の土井レミイ杏利選手です。2019年の世界選手権後に主将に就任した土井選手は、それまでの6シーズンをハンドボール強国のフランスのチームで過ごしていました。
就任当時のインタビューでは、各選手が試合に向けての準備や強いプロ意識を持って臨んでいくことの重要性を強調していた土井選手。文化の壁や苦しい経験を乗り越えてきた土井選手にしか伝えられない「戦う気持ち」が、チームに良い影響をもたらしたことも、間違いありません。
戦術面・オフェンスの向上、「勝ちビビり」からの脱却
では、戦術面で最も変化したのはいったいどういった部分なのでしょうか。
一つ挙げられるのは、オフェンス面「速攻」の部分です。それが今大会良く現れたのは、大会史に残る引き分け劇を演じたクロアチア戦だったと土井選手は話します。
日本3点リードで終えた前半、日本の強固なディフェンスの前にミスを連発するクロアチアに対し、日本は練習を重ねてきた速い縦の動きを積極的に繰り出していきます。
スタッツを見てみると、前半の速攻からのゴール数は、クロアチアが1本であるのに対し、日本は4本。後半を合わせた試合全体では、引き分けとなった29点中6点が速攻からの得点であり、クロアチアを5点上回る結果となりました。
さらに、前回大会と得失点を比べてみると、平均失点は29.4点(前回大会)→29.3点(今大会)でほぼ変わらなかったのに対し、平均得点は25点(前回大会)→28点(今大会)と、3点伸びています。

こうした点からも、「戦う気持ち」=精神面の強さに裏付けされたオフェンス力の向上が見て取れるのではないかと思うのですが、土井選手はチーム全員が「"勝ちビビり"をしなくなった」からこその結果であると分析していました。
「これ勝てるかもって思ったときに、勝っちゃって大丈夫かなという変な不安が生まれてきてしまうんですよ。前回大会は、試合によってはその"勝ちビビり"っていうのがあったと思うんですよね。最後ここで決めたら勝てる、でも自分が外したらどうしようみたいな。けど、この勝ちビビりが、今回は俺がチームを勝たせるんだっていうくらいの気持ちに変わったので得点が伸びたんだと思います」
勝てそうなときに勝ちきれない。
それがこれまで日本が直面してきた課題であり、この"勝ちビビり"こそが勝利を逃してきた大きな要因でした。それがクリアになった今大会は、日本がこれまで取り組んできたことが間違っていなかったということを証明する大会になったといえるでしょう。
ハンドボール世界選手権が無事閉幕したその先に
そして今大会は、「バブル」と呼ばれる隔離方式を取り入れ、選手たちは期間中2日に1度のPCR検査が義務付けられるなか試合が行なわれました。土井選手は、度重なる鼻の粘膜からのPCR検査に「鼻の穴が2つじゃ足りなかった」と笑いながら話してみせましたが、試合以外はほぼ隔離という生活も相まって選手の皆さんへのストレスは大きなものだったと思います。それでも、東京オリンピック開催もしくは成功へのヒントを伺ってみると、こんな答えが返ってきました。
「これだけの規模の大会をコロナ禍でやれるということはすごく価値があることで、これを成功させることでハンドボールに限らずいろんな競技のみなさんにもちょっとした希望を与えられると思う」
驚くことに、今回の1次リーグ突破が24年ぶりの快挙であるということを、選手誰一人として知らなかったという彗星ジャパン。リオオリンピックでは日本が男女ともに出場できなかった競技であるハンドボール。その男子日本代表が、東京の舞台で"彗星のごとく"また大きな躍進を見せてくれる日を楽しみにしたいです。

PROFILE
宮司愛海(みやじ・まなみ)
91年7月29日生まれ。2015年フジテレビ入社。
福岡県出身。血液型:0型。
スポーツニュース番組『S-PARK』のメーンキャスター。
スタジオ内での番組進行だけでなく、現場に出てさまざまな競技にふれ、
多くのアスリートに話を聞くなど取材者としても積極的に活動。