2月9日、リーガ・エスパニョーラ王者レアル・マドリードは、ヘタフェを2-0と軽くひねりつぶしている。チームは成績不振と…

 2月9日、リーガ・エスパニョーラ王者レアル・マドリードは、ヘタフェを2-0と軽くひねりつぶしている。チームは成績不振とケガ人続出で、ジネディーヌ・ジダン監督の去就も取りざたされるほど、不穏な状況だったが、「1軍半のレアル・マドリードで十分」と、スペイン大手スポーツ紙『アス』は、ヘタフェ戦後の見出しを打った。

 この試合、ジダン・マドリードは、変則的な3-4-3のシステムで挑んでいる。セルヒオ・ラモスの戦線離脱によるセンターバック補強のために3バックを採用。左ウィングバックのような位置で久々の先発に入ったマルセロは、プレーレベルの低下で批判を浴びていたが、その攻撃センスを生かして起点となっていた。右には、カスティージャ(セカンドチーム)から若いマルビン・パクを引き上げた形だ。

 いわば、苦肉の策と言える布陣。しかし、ヘタフェを下すにはそれで十分だった。

 ヘタフェに所属する久保建英は、レアル・マドリードの所有選手でもある。レンタルでのプレーは武者修行とも言えるだろう。いつか戻って、白いユニフォームを着ることがひとつの目標だ。

 この日、久保が体感したマドリードとの距離感とは――。



レアル・マドリード戦で先発を外れ、54分から出場した久保建英(ヘタフェ)

 レアル・マドリード戦で先発から外れた久保は、54分にフランシスコ・ポルティージョに代わって出場している。

 今年1月、ビジャレアルからヘタフェに移籍すると、最初の2試合、久保は勝利に大きく貢献していた。同じく移籍してきたカルレス・アレニャはバルサの薫陶を受けた選手だけに、通じ合う部分が多かったのだろう。やはりバルサ出身のマルク・ククレジャも含めて、長年プレーしてきた者同士のような攻撃を見せた。もっとも、相手はあくまでエルチェ、ウエスカという昇格組だった。

 その後、ヘタフェはスペインスーパーカップで優勝したアスレティック・ビルバオには5-1で大敗。アラベスには本拠地で、スコアレスドローに終わっている。チャンピオンズリーグでベスト16に進んでいるセビージャには、やはり3-0で完敗した。3試合、勝ち星から見放されることになった。

「久保、アレニャの効果は消えた」

 2人を救世主のように評価していた『アス』は、瞬く間に手厳しい評価に転じている。直近のセビージャ戦で久保につけられた星はゼロ(0~3の4段階評価)。レアル・マドリード戦で久保が先発を外れたのは自明の理だった。

 0-0の膠着状態でピッチに出てきた久保は、即座に才能の片鱗を見せている。右サイドでボールを運び、人を集めてから、アレニャへパス。それがゴール前のククレジャにつながっている。久保の投入で、明らかにヘタフェペースになった。得点の機運は高まっていた。

 ところが、レアル・マドリードの選手たちは少しも慌てず、取り乱さなかった。王者としての泰然さか。各自が落ち着いてポジションを取って、ボールを回す。すると59分、前がかったヘタフェを裏返すように、右サイドでフリーになったヴィニシウス・ジュニオールがFKを蹴るようなクロスを放り込み、これをカリム・ベンゼマが相手の前を取ってヘディングで押し込んだ。

 ヘタフェ陣営はリードを許したことによって、途端にナーバスになってしまった。

 試合巧者のレアル・マドリードは、それを見透かしたような戦い方を見せた。マルセロは、まさに円熟の域だった。65分、左サイドで幅を取って、プレーを作り出す。そして再び、左サイド奥深くでボールを呼び込むと、ニアサイドに速い球足のクロスを打ち込み、インサイドを取ったフェルラン・メンディが合わせてネットを揺らした。

「終わった」

 今シーズンはそう言われるマルセロだが、随所で魅せた技術は傑出していた。例えば、ダイレクトにノールックでゴール前のカゼミーロに出した左足のスルーパスは神がかっていた。スルーパスの角度やパスに対してのランニングの質など、「ワールドクラス」が横溢していた。

 久保も、中に入って状況を打開しようと試みた。しかし、パスが集まらない。そこで久保自身が自らインサイドにドリブルで持ち込み、ゴールに迫るが、味方と息が合わなかった。差を見せつけられた戦況が、チーム内にノッキングを引き起こしていたのかもしれない。

 レアル・マドリードとの地力の違いばかりが際立った。

 久保は、"存亡の時"を迎えているだろう。レアル・マドリードとの距離感を云々している場合ではない。守備面での消耗を余儀なくされる中、攻撃面で貢献できるか。ヘタフェ入団前から指摘されていた難しさをクリアしなければならない。

「ゼロ」

 レアル・マドリード戦、それが主要スポーツ誌からいっせいに浴びせられた日本人への非情な評価である。

 2月14日、ヘタフェは上位を争うレアル・ソシエダと対戦する。久保は、先発の座をつかめるか。

 展開としては、受けて守って、カウンターを狙うことになるだろう。出場した時間で決定的な仕事をすることによって、再び流れを劇的に変えられるはずだ。