欧州各国リーグは今季の前半戦を終え、活躍に応じて選手たちの市場価格も変動した。日本人選手のなかで、価値を高めた選手たちは…

欧州各国リーグは今季の前半戦を終え、活躍に応じて選手たちの市場価格も変動した。日本人選手のなかで、価値を高めた選手たちは誰だろうか? 移籍市場を専門に取り扱うポータルサイトとして有名な「トランスファーマルクト」で、日本人選手のデータ・アナリストを務めるトビアス・ドライマン氏に解説してもらった。今季の開幕前の2020年7月1日の市場価格と、最新のものを比較。上昇額から今季前半の"勝ち組"を明らかにした。そのトップ5を紹介する。

2位 久保建英(ヘタフェ)
上昇額650万ユーロ(約8億1900万円)/市場価格2000万ユーロ(約25億2000万円)

 何年にもわたり、日本のサッカーファンたちは才能あふれる久保建英のプロ選手としてのキャリアの成功を待ちわびている。だが、久保のケースは、「トランスファーマルクト」内の市場価格と実際の評価額の違いを示す好例だ。ここで少し、日本国内の選手の「トランスファーマルクト」内の評価について話をしよう。

 久保が日本国内でプレーしている間、「トランスファーマルクト」内の評価額は、低いものだった。その理由は、「トランスファーマルクト」が世界中の選手を比較可能にするのを目的としているからだ。そのため、サイト内の市場価格は、ヨーロッパの移籍市場の評価を基準としている。

 日本国内で、久保の存在は大きなものだったのは間違いない。だが、サイト内で基準となる欧州の市場に上がったのは、18歳になってからだ。それ以前に、すでに数百万ユーロの評価がついていた可能性もあるが、それがメディアや一般の話題となっていたのは主に日本国内であり、「トランスファーマルクト」の評価にそれほど反映されていなかった背景がある。

 そのため、欧州の市場と離れている選手たちの実際の市場価格と、サイト内の評価額の差が大きく開いてしまうことが多々ある。日本国内の選手たちが、サイト内では数十万ユーロの市場価格に設定されていても、実際の移籍市場ではもっと高い評価がされているケースは大いにあるのだ。

 ヨーロッパの舞台にやって来ると同時に、久保の市場価格は期待どおりに跳ね上がった。スペインで"タケ"と呼ばれる名手は、マドリードでのプレシーズンで観衆を感激させた。レンタル移籍先のマジョルカでは、潜在能力の高さを証明してみせた。

 年齢的にも若く、レアル・マドリードというビッグクラブが所有権を持っていることもあり、市場価格も3000万ユーロ(約37億8000万円)まで一気に跳ね上がった。ただ、この急激な評価の上昇は、ビジャレアルでは維持できなかった。それは、久保自身の責任とは言い難い理由だ。ウナイ・エメリ監督のチームはすでに固まっていて、短期間でその序列を崩すには至らなかったのだ。

 再び移籍市場でスポットライトを浴びるチャンスを掴むためにも、ヘタフェへの移籍は必要だった。ビジャレアルとはまったく違うスタイルのヘタフェで適応し、再び活躍を見せれば、市場価格はさらに上昇するだろう。久保の才能と幅広く起用できるフレキシビリティを見れば、その可能性を否定する理由はない。



欧州日本人選手のなかで、今冬、市場価値をもっとも高めた鎌田大地

1位 鎌田大地(フランクフルト)
上昇額800万ユーロ(約10億800万円)/市場価格1600万ユーロ(約20億1600万円)

 2017年の夏に160万ユーロ(約2億160万円)でフランクフルトにやって来た、当時20歳の鎌田大地は、チームで苦しい状況に置かれた。

 事態が好転したのは、シント・トロイデンへのレンタル移籍だ。ベルギーの地で活躍し、市場価格を約3倍の450万ユーロ(約5億6700万円)まで上昇させ、フランクフルトに復帰した。そして2020年末では、1600万ユーロまで市場価格が上昇。フランクフルトでの成長のなかで、鎌田大地が持つ役割の大きさが、市場価格の上昇にそのまま反映されている。

 ここまで11スコアラーポイント(2得点、9アシスト)の鎌田は、そのポイントでドルトムントのジェイドン・サンチョ(1億ユーロ、約126億円)や、バイエルンのヨシュア・キミッヒ(8500万ユーロ、約107億1000万円)と並んでいて、能力の高さを証明している。

 サンチョやキミッヒと比べて、市場価格が低いのは、ピッチ上のプレー以外の要素も影響しているためだ。この価格設定には、サッカー面の評価に加えて、所属する国内でのマーケティング効果、選手の評判、年齢、クラブ内の序列なども考慮に入れられる。サンチョやキミッヒのように、日刊紙に連日名前が挙がるような選手と比べて、価格が下がるのはしかたがない。

 そうは言っても、鎌田がブンデスリーガ屈指のアシスト数を誇るチャンスメーカーだという評価は揺るがない。鎌田のエゴを捨てた献身的なプレーは、フランクフルトに信じられないほどの恩恵をもたらしている。その一方で、好プレーが持続しない部分も見られる。ときどき見られる集中力を欠いたようなパスミスや、ボールコントロールのミスが、それまでの良い印象に暗い影を落としてしまっていた。

 しかし、直近のフランクフルトが3-4-2-1で攻撃的ミッドフィルダーを2枚並べる布陣にすると、鎌田への負担も減って、以前に比べてミスも目立たなくなった。

 フォーメーションが変わり、多少役割が変わっても、変わらないひとつの事実がある。それは、鎌田大地は"違いをつくれる選手"であり、フランクフルトの勝敗を左右する選手のひとりであることだ。鎌田が、この自身の能力をさらに確実なものにし、評判を定着させられれば、遅かれ早かれビッグクラブからのオファーも舞い込むだろう。