オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)は、前日に錦織圭(日清食品)以外5人の日本勢が姿を消し、1回戦で残るは3人。 まずは19歳の大坂なおみ(日清食品)がワイルドカード(主催者推薦枠…
オーストラリア・メルボルンで開催されている「全豪オープン」(1月16~29日/ハードコート)は、前日に錦織圭(日清食品)以外5人の日本勢が姿を消し、1回戦で残るは3人。
まずは19歳の大坂なおみ(日清食品)がワイルドカード(主催者推薦枠)のルクシカ・クンクン(タイ)を6-7(2) 6-4 7-5で退け、出場したグランドスラム4大会連続での初戦突破を果たした。続いて西岡良仁(ミキハウス)が予選勝者のアレックス・ボルト(オーストラリア)を6-4 1-6 6-2 6-4で下し、一昨年の全米オープンに続く2度目のグランドスラム白星を獲得。しかし今回がグランドスラム・デビューの尾﨑里紗(江崎グリコ)は、元トップ5で現在53位のサラ・エラーニ(イタリア)に5-7 1-6で敗れた。
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予想外に苦しい初戦になった。一年前は127位だったランキングを48位に上げて臨む今大会。2週間前に痛めた手首の影響はなかったが、183位のクンクンの速いテンポのカウンターにリズムをつかみきれなかった。
クンクンは昨年12月にアジア枠のワイルドカード・プレーオフを勝ち抜いて本戦出場資格を得た23歳。グランドスラムの本戦は過去5回の出場で2回戦が最高と経験豊富とはいえないが、ダブルハンドで大坂のパワーを跳ね返してくる。「緊張していた」という大坂のほうはアンフォーストエラーが増え、第1セット4-4の第9ゲームで2度あったブレークポイントも生かせずに、苛立ちが募った。
タイブレークでも粘りを見せたクンクンに第1セットを奪われた。第2セットはワンブレークの3-0から3-3に追いつかれた大坂。しかし「絶対に負けたくないと思った」と第9ゲームでブレークポイントをしのぎ、次のゲームでついに初ブレークを果たして最終セットへ。
長いトイレットブレークのあと、いきなりブレークを許す危ないスタートだったが、直後のゲームでクンクンのセカンドサービスを果敢に攻め、すぐにブレークバックできたことが大きい。常にウィナーを狙いにいくアグレッシブなプレーは若いうちはムキになりやすいという短所と隣り合わせだが、最後はパワーと気持ちで押しきった。
2回戦の相手は第9シードのジョハナ・コンタ(イギリス)。昨年ここでベスト4入りし、前哨戦のシドニーで優勝して乗り込んできた強敵だ。2015年の全米オープン予選でコンタがストレート勝ちしているが、当時は大坂が202位でコンタは97位。ほとんど参考にはならないが、コンタに分があることは否めない。
コンタは優勝候補にも挙げられていると記者に言われると、「優勝のチャンスはみんなにあるわ」と、シャイな口調で強気なことを言った。グランドスラムではビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)、シモナ・ハレプ(ルーマニア)、マディソン・キーズ(アメリカ)とこれまで大物にばかり敗れてきた新星だけに、今度はどう戦うのか楽しみだ。 ◇ ◇ ◇
地元の予選上がりの23歳が、グランドスラムの予選7度目の挑戦で初めて本戦に出場した。それが西岡の1回戦の相手だ。ランキングは最高で160位まではいったことがあるが、現在は632位。ワイルドカードで出場した予選を勝ち抜いての本戦入りには、地元ファンの熱いサポートに判官びいきも重なって、西岡にとっては完全なアウェーとなった。
左利き同士だが、プレースタイルはまったく異なる。ボルトは時速200kmを超えるビッグサービスとビッグショットで果敢にネットにも出てくる。フォアもバックも西岡の2倍のウィナーを記録したが、西岡が大きくまさったのはアンフォーストエラーの少なさだ。ボルトの3分の1以下にとどめ、得意のラリー戦でポイントを重ねる西岡は、身長170cmと体は小さくともトップ100に位置する理由を見せつけた。
「予選を上がってきた選手だから気は抜いていなかったですけど、ランキングもかなり下。今日は負けられないという気持ちでした」
1セットは失ったものの、昨年は一度も届かなかったグランドスラムの2回戦に駒を進めた。
次はまったく違うメンタル状態で臨む試合となる。トップ20の選手にはまだ勝ったことがないが、相手は第13シードのロベルト・バウティスタ アグート(スペイン)だ。「スペインの選手はみんな名前が似ていて誰が誰か覚えられない(笑)。でもこれから高田(充)コーチとしっかり作戦を練ります」と話した。
19歳の大坂と21歳の西岡、若い二人のプレーは錦織とはまた違った意味で楽しみだ。それぞれが持ち味を発揮する2回戦以降に期待したい。
(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)