「なぜ出られない?」憤まんやるかたないデュラント、スターター連続出場記録も途絶える 渡邊雄太が自己最長となる8試合連続出…

 

「なぜ出られない?」憤まんやるかたないデュラント、スターター連続出場記録も途絶える

 

 渡邊雄太が自己最長となる8試合連続出場(10分間出場、1リバウンド、±が+2)を果たしたアメリカ現地2月5日のブルックリン・ネッツ対トロント・ラプターズ戦は、ラプターズが123-117で接戦に勝利を収めたことよりも、ケビン・デュラントのベンチスタートと途中退場が話題となった。その余波は試合終了後も続いている。
 経緯はこうだ。まずこの日、試合に向けた準備をしていたデュラントとネッツに、デュラントがこの日の午後に会っていた人物のうち一人のPCR検査結果が試合開始に間に合っていなかったことがリーグの安全衛生プロトコルに適合せず、デュラントのスターター出場ができないと告げられる。プロトコルに従いバークレイズ・センターの別室にとどまっていたデュラントは、第1Q残り4分17秒の時点から出場が許されコートに登場。以降19分間プレーする。
 ところがネッツが70-69とリードした第3Q残り9分6秒、タイムアウトでベンチに戻ったデュラントに、前述の人物がPCR検査で陽性だったこと、そのためデュラントはこの時点以降この試合に出られないことが伝えられたのだ。デュラントは即刻コートを離れ、以降ネッツは最大の得点源抜きでプレーし、僅差の勝負を落とすことになる。
 コートを去る際、悔しそうに水の入ったペットボトルを壁に投げつけたデュラントは、それからほどなく「Free me(解放してくれ)」とツイート。その後デュラントの出場可否判断についてのリーグ声明がソーシャルで拡散され、ファンからその判断経過に対する思いが投稿されるのを見ると、今度はリーグに向けて「カッコつけただけのPRメッセージじゃファンはごまかせないぞ」といった趣旨のメッセージを投稿した。
 デビュー以来続いていたスターター出場連続試合記録も866で途切れた。これは1970-71シーズンにNBAがスターターの記録をつけ始めて以来、デビューからの記録としては歴代4番目に長い記録だそうだ。
 ジェームス・ハーデンは混乱したチームの様子を、試合後の会見でこんなふうに表現した。「やる気満々でしたが、コーチが最初のプレーを説明するときになって、『あれ…ケビンは?』です。彼は出られないということで、『まぁしかたないか』と。で、試合が始まったらケビンが出られるようになって、『よし、いこうぜ』となりますよね。その後またケビンは出られなくなる。『わかった、で、オレたちどうなってんのよ?』という感じです。試合と一つ一つのプレーに集中しようと必死でした」

デュラント本人に問題はなかった

 

 リーグ声明のポイントは以下のようなものだ。
1)デュラント自身は試合当日の2度を含め24時間以内に3度検査を受けすべて陰性だった
2)デュラントが当日午後交流した相手の判定結果が得られていないことが試合開始直前に判明し、それが明確になるまで出場を控える旨を通達した
3)プレーヤーは濃厚接触の相手が明確に陽性と確認されるまで隔離要請されない
4)試合中、デュラントが当日午後に会っていた人物の陽性判定が得られたため、念には念を入れて、それ以降の出場を見合せる判断をした
5)同時にデュラントと陽性者との間に実際に濃厚接触があったかどうかを確認するために接触者追跡を行っている

 この声明からは、なぜデュラントを出場させたのかがわからない。また、デュラントとロッカールームやコートで一緒だったネッツ関係者たちに、デュラントと同じ判断をしなかった理由もわかりにくい。試合後の会見でジェームス・ハーデンも「(デュラントが出られないなら)試合自体延期すべきだった」と話していた。
 ただ、この場でこういった点を部外者の立場で追及して責め立てるような意図でこれを書いているわけではない。結局、誰もが混乱の中でバスケットボールを続けるために尽力しているのだ。
 デュラントの憤まんやるかたない気持ちは理解できるし、彼が理解して受け入れられる説明をリーグからしてほしい。彼からしたら訳がわからないだろう。自身のコンディションに何ら問題がなく、ホームで活躍する意欲で会場入りして「さあ、今日もやってやろうぜ」と気持ちがピークになった時点で「ちょっと待て」。「は?」という不可解な思いで待機し、出場が許され元気にプレーして8得点、6リバウンド、5アシストを記録して「まだまだこれからだ」とギアを上げようという段で「お疲れさん…」だ。
 悪いことに、現地翌6日(土=日本時間7日の日曜日)のフィラデルフィア遠征への帯同も控えなければならない可能性が高い。ネッツ公式サイトではデュラントの状況を「uncertain(不確か)」とする記事が出ている。スティーブ・ナッシュHCによれば、試合後会見の段階ではデュラントの接触者追跡にどれだけかかるか、つまり復帰のメドはまだわからないという。一方でチームの遠征は問題なく行われる見込みで、これがいっそうの混乱につながっているところもあるようだ。デュラントがダメでチームは大丈夫だとすれば、その理由がわかりづらいからだと思われる。

 

「コロナ時代」の試合運営はまだ試運転

 

 ただ、リーグがデュラントとネッツに嫌がらせをしたいわけでも、感染を拡大させたいわけでも当然ないはずだ。NBAと選手会がアメリカ時間2月3日に発表したところによれば、1月27日以降の検査で陽性者は出ていない。リスクを最小限にとどめ、人々の生活に溶け込んだ文化であるNBAのエンターテイメントを日々提供しようとしていることが伝わるデータであり、今回はその中で起きた不運な出来事と受け止めるしかない。
 ラプターズのニック・ナースHCは、なぜデュラントが最初は出られず、途中で出られるようになり、最後にコートを去ったかの核心的な情報を、試合中には把握していなかったという。今シーズンの試合にプレーヤーを送り出すことには本来的に一定の懸念が伴うとも言い、「ウチでは例えばノーマン・パウエルが4-5日離脱しましたが、いろんなことの連鎖がからんでくるので安全衛生プロトコルの運用は一筋縄ではありません」と正直な思いを吐露しつつ、それにつきあいながらプレーし続けると話した。
 プレーヤーたちがかなり激しく不満を表している一方、両チームのコーチが落ち着いており、比較的リーグのプロトコル運用の現状に理解を示している様子が印象的だ。プレーヤーには、提示されたプロトコルに従いきちんと行動しているプライドもあり、コーチにはコロナ時代の試合運営がまだ試運転の段階にある中でチームをまとめる立場の自覚があればこその自己表現なのだろう。
 ラプターズは翌日アトランタへの遠征だが、ナースHCは「(この一件で試合開催に影響がでるような話は)まだ今のところ聞いていません」とのこと。この文章を書いている日本時間2月6日午後9時26分(アメリカ東部時間5日午前7時26分)時点でもそういった知らせはない。ネッツについても遠征への影響はデュラントを欠くかもしれないということ以外は伝えられていない。

 

文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)