愛知国体で優勝を飾った坂本花織、ほぼ完璧だったSPの演技  愛知国体フィギュアスケート成年女子個人で、ショートプログラム(SP)首位の坂本花織が、フリーでも1位の149.33点を出して合計227.78点で大会2連覇を達成。2位…



愛知国体で優勝を飾った坂本花織、ほぼ完璧だったSPの演技

 愛知国体フィギュアスケート成年女子個人で、ショートプログラム(SP)首位の坂本花織が、フリーでも1位の149.33点を出して合計227.78点で大会2連覇を達成。2位の川畑和愛に25.42点差をつける圧勝で、3月の世界選手権に向けて充実ぶりを見せた。都道府県別の団体でも、4位の三原舞依とのコンビで兵庫代表として優勝を飾った。

「年末年始は成人式の髪飾り制作をかねて家にこもっていましたが、(その後は)しっかり練習して調子を戻してきました。ただ、全日本選手権までの勢いは半分くらいまで落ちてしまって、若干、全日本選手権ほどの濃い練習はできていないんですけど、それなりにはできたかなと思います」

 コロナ禍の中、新進気鋭の振付師として活躍するフランス人のブノワ・リショー氏にリモートで振り付けてもらい、自身最高難度の演技構成に挑戦している今季のSP『バッハ・ア・ラ・ジャズ』では、ほぼミスのない演技をして、非公認ながらも自己ベストの78.45点をマーク。80点前後で争っている世界のトップ選手たちと肩を並べる得点を、昨年11月のNHK杯に続き、コンスタントに出せるようになった。

「昨年の国体で77点を出せたので、それを超えたいなと思っていた。自己ベストを出せてその点数を超えられたので良かったですし、驚きました。

 今季の手応えで一番大きかったのは、後半に3+3(3回転の連続ジャンプ)を入れたことと、3回転ルッツを入れたことです。後半に3+3をすることは前のオリンピックの時以来だったので、緊張はいまでもあるんですけど、それがやっとできるようになったのが一番の収穫です。ルッツも、(エッジ)エラーになるからずっとやめていたんですけど、それを(気にせずに)思い切って高得点を狙うことだけを考えてやってきたので、それが今季の得点に表われてきているので、自信になったと思います」

 さらに、2シーズン継続しているフリー『マトリックス』(振り付けはやはりリショー氏)は、音楽との一体感が増し、ダイナミックなジャンプとスピード感あふれる滑りが見応えあるプログラムになった。坂本の代表作のひとつになったと言ってもいいだろう。



愛知国体で優勝を飾った坂本花織、フリーの演技

 今大会では序盤の得点源となる得意の3回転フリップ+3回転トーループの連続ジャンプでオーバーターンが入るミスが出て、GOE(出来栄え点)で減点となったが、その後のジャンプはすべてGOEで加点がついた。3つのスピンとステップでは最高のレベル4をそろって出した。フリーでも、ひとつのミスがあっても150点前後の得点を出せる底力を発揮。緊張を上手にコントロールして本番でのミスを最小限に抑える試合巧者ぶりも見せた。

 ジュニア時代はメンタルの弱さが目立ったが、シニアデビューシーズンとなった2017-2018シーズン、リショー氏の洗練された独特なプログラムが坂本の感性と滑りにぴったりはまって相乗効果が生まれ、自信を掴んだ。一気に成長を促された坂本は、勢いのまま2018年平昌五輪代表となり、初五輪で総合6位入賞を果たした。それ以降は、リショー氏とタッグを組んで記憶に残るプログラム作品を演じている。

「今回はSPもフリーもちょっとずつミスがあったので、そこを世界選手権までにしっかり修正して、今季最後の試合となるのでしっかり完成形の演技がしたいです。2年前は(総合)5位という成績で、フリーでノーミスができなかったので、2年ぶりの世界選手権でパーフェクトな演技ができたらいいなと思っています」
 
 初出場だった19年大会ではSP2位発進ながら、フリーで5位と失速して表彰台を逃した。その悔しさを晴らす格好の舞台となるだけに、気合いも入るに違いない。来季に控える北京五輪に向けてもいいスタートを切れるはずだ。

 新時代を迎えている女子は、4回転やトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の大技を跳ぶ選手たちが次々と登場。メダル争いを繰り広げるためには大技の習得が必須の様相を呈している。20歳の坂本もその波に乗り遅れないようにしなければ、今後は勝負の舞台に立てなくなる可能性もあるかもしれない。

「今年は、年末にオリンピック代表が決まる大事な1年になると思うので、やっぱりミスはできないし、だけれど、挑戦しないといけない部分もあるので、うまく臨機応変に対応して、さらに上を目指せるようにしたいなと思っています」

 今季最終戦の世界選手権でどんな戦いができるか、楽しみだ。