昨年の全豪オープンで開幕前夜にテニス界の八百長の嫌疑についての憶測記事が流れた際に、選手たちは驚きに捕らわれた。すべての試合後記者会見には不正行為についての辛辣な質問がちりばめられ、奇襲や罠のように感じられたものだった。 今年、ロジャー…

 昨年の全豪オープンで開幕前夜にテニス界の八百長の嫌疑についての憶測記事が流れた際に、選手たちは驚きに捕らわれた。すべての試合後記者会見には不正行為についての辛辣な質問がちりばめられ、奇襲や罠のように感じられたものだった。

 今年、ロジャー・フェデラー(スイス)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)や、そのほかのスター選手たちは、よりしっかり準備を整えているように見える。彼らは自分たちの意見をしっかりと準備してきていた。そして、ときにその議題に対してユーモアのセンスを利かせる余裕さえある。

 フェデラーは土曜日に彼の大会前記者会見の最後の最後に八百長に関しての質問が出たとき、「いい質問で会見を終えることになると思っていたよ」と皮肉を込めて言った。

 それから彼は微笑んだ。これが彼が八百長について尋ねられる最後の機会でないことはほぼ間違いない。

 昨シーズンの初頭にBBCとバズフィードが、『テニスの統率機関は、幾人かのトップ・プレーヤーが関わった八百長の疑いのある事件を、大目に見て見逃してきた』と主張したあと、全豪は疑惑の雲の下でスタートすることになった。記事の中で、関わったとされる選手の名前は伏せられていた。このことについて質問されたフェデラーは、状況を「非常に深刻」と呼び、八百長に関わった者の名は公表されるべきだと主張した。

 それが昨年テニスの統率機関がやろうと努めてきたことだった。2016年、テニス界の不正を暴くために設立されたテニス・インテグリティ・ユニット(TIU)により、9人のプレーヤーとオフィシャル(審判など)が処罰を受けた。これはこの団体が2008年に設立されて以来、一年に検挙された数としては最多となる。今年の最初の2週間にさらに6人がこのリストに加えられた。

 捕まった選手の全員が、主に低いレベルのチャレンジャーやフューチャーズでプレーしているランキング下位の選手たちだった。このレベルの試合は、八百長に関わる危険がもっとも高いとみなされている。なぜならこれらの大会はATPやWTAの大会と比べて予算が低く、監視や綿密な検査を欠いているからだ。

 フェデラーはテニス運営団体のオフィシャル(役員)たちが力を注ぐ必要があるのは、そこであると言う。

「我々のスポーツには、その手の振る舞いのための場所はない。それは明白なことだ」としたフェデラーは、不正行為と戦うための努力はポジティブな波及効果を生んだとも言い添えた。

「よい点は、こうも多くの試合、多くの選手がいる中で、実際にその手のことをやった者はパーセンテージ的には非常に低く、極めてわずかだということだ。我々は実質的にはそこそこよくやってきたと思う」

 正確を期せば、TIUは昨年行われた11万4000の試合のうち賭けの疑いがあったのは292に過ぎず、パーセンテージで言うと約0.2%になるという。そして『賭けの疑い』自体が、その試合で八百長が行われたという決定的な証拠というわけではない。

 フェデラーはまた、TIUが活動を検査し、変革を提案・推薦するための独立した審査員団を任命したことを称賛した。彼らが作成するレポートは、今年の終わりに提出される予定になっている。

「それは、このスポーツをよりよく変えることになるだろう」と彼は言った。

 ジョコビッチはこの手の問題はより低いレベルの大会に限られているようだと言って、事件が持ちあがったときに大げさに騒ぎ立てることについて間接的にメディアを非難した。

 しかし彼もまた、これらの不正を取り締まる活動に向上が見られることを強調し、テニスは今、12ヵ月前よりもクリーンだと信じていると言う。

「理想をいえば、我々はどのような八百長が行なわれるところも目にしたくはない」と彼は言った。

「不運なことに、ときどきは起こっているようだ。でも、あまり多くあるわけではない。一般的に見て、ATPやすべての責任者たちは、このような八百長がなされた可能性のある試合を追って調査することにおいて、いい仕事をしていると思う」(C)AP