ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 明け4歳のアリストテレスが復帰初戦を飾ったGIIアメリカジョッキーク…
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
明け4歳のアリストテレスが復帰初戦を飾ったGIIアメリカジョッキークラブCで幕を閉じた中山開催。今週から今年最初の東京開催がスタートします。
春や秋の開催と比べると、期間が短く、大きなレースの数も少ないのですが、最終週にはJRAの年間最初のGIとなるフェブラリーS(2月21日/ダート1600m)が行なわれます。
先週は中京でGII東海S(ダート1800m)が、1月27日には川崎で地方交流GIの川崎記念(ダート2100m)が行なわれました。そして開幕週の東京でも、フェブラリーSの前哨戦となるGIII根岸S(ダート1400m)が1月31日に行なわれます。
今年は特別登録馬の段階から多彩なメンバーが名を連ね、面白いレースになりそうな予感がありました。最終的に、地方交流GIでの実績がある馬や、近況が好調で勢いのある若い馬、さらには地方の実力馬や芝のGI馬など、バラエティーに富んだ面々が参戦。前哨戦において、これほどさまざまな路線から馬が集結するのは珍しいのではないでしょうか。
その中から、まずは実力と経験値のある2頭を有力馬に挙げたいと思います。前走でGIチャンピオンズC(12月6日/中京・ダート1800m)に出走していたタイムフライヤー(牡6歳)とアルクトス(牡6歳)です。
タイムフライヤーはダート路線に転向してから、しばらく勝てない時期が続きましたが、昨年の夏にクリストフ・ルメール騎手とのコンビで、オープン特別のマリーンS(7月12日/函館・ダート1700m)、GIIIエルムS(8月9日/札幌・ダート1700m)と連勝。それまでも、勝てないながら内容の濃いレースをしていましたが、この連勝でダート馬として完成した感があります。
東京のダートでは、一昨年のGIII武蔵野S(ダート1600m)で2着、昨年のフェブラリーSで5着、前々走の武蔵野Sで5着という成績を残しています。1400m戦に挑むのは初めてになりますが、広い東京コースであれば、他の競馬場で走るよりも戸惑うことはないと思います。
芝2000mのGIホープフルS(中山)を勝っている馬ですが、最近の競馬ぶりを見ると、気性的に1800mでも長いような印象を受けます。そういう意味では、今回の距離短縮はむしろいいほうに出るのではないでしょうか。
アルクトスは東京のダートで5勝を挙げていて、昨年は同じ左回りの盛岡で地方交流GI南部杯(ダート1600m)を制覇。1400m戦も中京のGIIIプロキオンSを勝っていて、実績面では文句がありません。前走のチャンピオンズCは、最初から距離が長いとわかったうえでのチャレンジでしたから、9着という結果は気にしなくていいと思います。
実績十分の馬だけに、今回は59Kgという斤量が気になるところですが、前半から先手を取ってスピードに乗っていけば、1400mであれば、押し切れる可能性もあると踏んで期待しています。
それに、今回の結果がどうあれ、59Kgを背負って走っておけば、本番のフェブラリーSで楽になるはず。アルクトスに関しては、賞金的に余裕のある立場ですから、フェブラリーSを見据えてどういうレースをするのか、注視したいと思っています。
もう1頭、勢いのある馬として、レッドルゼル(牡5歳)も気になる存在です。前走のGIIIカペラS(中山・ダート1200m)では、先行した2頭のマッチレースと思われたところを、大外から1頭だけものすごい脚を繰り出して2着に突っ込んできました。
川田将雅騎手が手綱を取るようになってから、差し脚を生かす戦法にシフトさせていて、今なら東京コースが一番向きそうな感じがします。ダートでは13戦11連対という安定感もあり、上位争いできる1頭ではないかと見ています。
さて、ここまでに触れた3頭は、おそらく上位人気になると思います。そこで、今回の「ヒモ穴馬」として取り上げたいのは、初ダートとなるステルヴィオ(牡6歳)です。

根岸Sで初のダート戦に挑むステルヴィオ
芝マイルのGI馬がフェブラリーS参戦を見据えて、根岸Sで初のダート戦に臨むというのは、昨年の覇者モズアスコットと同じ。ひと昔前までは、芝の実績馬がフェブラリーSに挑戦する際、同レースが初のダート戦というパターンが多かったのですが、それだとあまり結果が出ていませんでした。まずは、GIIIで適性を試してみるほうがいいかもしれません。
肝心のステルヴィオですが、ダートが合うかどうかは、走ってみないとわからない面があるのは確かです。ともあれ、スタートが決まらなかった前走のGII阪神C(12月26日/阪神・芝1400m)こそ12着に敗れたものの、その能力に衰えは感じられません。
モズアスコットと同様、東京コースにも実績があります。結果次第ではフェブラリーSに向かうようですが、最近は1400m以下の距離にこだわっているので、ダート適性があるとしたら、馬券的な狙い目になるのは一発目で、1400m戦の今回だと考えています。
鞍上は横山武史騎手。昨年は22歳にして関東リーディングを獲得し、将来の美浦を、そして競馬界全体を背負っていくジョッキーになってくれるのではないか、と期待しています。
ステルヴィオはノーザンファームのクラブ馬ですが、こういう馬のテン乗りの依頼が舞い込んでくるのは、関係者の間でも信頼され、ジョッキーとしての格が上がっている証拠です。まだ重賞は一度しか勝っていませんが、今年のうちにGIを勝つ機会が巡ってくるかもしれませんね。