キャンプイン直前に、球界に胸躍るニュースが駆け巡った。1月28日、ニューヨーク・ヤンキースからFAになった田中将大が、…

 キャンプイン直前に、球界に胸躍るニュースが駆け巡った。1月28日、ニューヨーク・ヤンキースからFAになった田中将大が、8年ぶりに日本球界に復帰。古巣・楽天と契約を結んだことが正式発表されたのだ。

 日米通算177勝81敗。MLBに渡る前の2013年に記録した24勝0敗、防御率1.27という超人的な成績は、今後も野球史で語り継がれる数字になるだろう。



8年ぶりに楽天へ復帰することが決まった田中将大

 昨季は得意だったはずのポストシーズンで登板した2試合とも打ち込まれ、防御率12.38。衰えを指摘する声もあった。それでも2020年11月に32歳を迎えたばかりで、老け込む年齢ではない。まだまだ一線級のパフォーマンスを期待できるだろう。

 田中の加入は、楽天にとって間違いなく多大なプラス要素をもたらすはずだ。

 田中が先発ローテーションに入ることで、涌井秀章、岸孝之、則本昂大と4人全員がエース経験者という豪華な四本柱が誕生する。

 ただし、涌井、岸、則本は、近年は故障や成績の上下動が激しく、3人揃って年間通して活躍できるかは不安が残る。そこへ田中という大黒柱がそびえることで3人の負担を軽減し、ゆとりを持って本来の投球に専心させられるだろう。

 とくに田中の渡米以降、エースとして責任を一身に背負った則本は、過去2年は故障もあって5勝止まりに終わっている。マウンドでの闘志むき出しの投球を取り戻すには、田中の復帰はいいきっかけになるかもしれない。

 そして田中加入によってもたらされる最大の恩恵は、即戦力ルーキー・早川隆久(早稲田大)に過度な重圧がかかることなく起用できることだ。

 昨年に東京六大学リーグで見せた、早川のパフォーマンスは圧巻だった。秋のリーグ戦では6勝0敗、防御率0.39。46イニングを投げて被安打18、奪三振74と、まさに快刀乱麻の内容だった。

 ロッテなどで活躍した小宮山悟監督も「あの球速があって、あれだけコントロールのいい左ピッチャーは見たことがない」と太鼓判を押す。本人は「プロの狭いストライクゾーンで自分のボールが勝負できるか」をプロで活躍できるかのポイントに挙げている。

 たしかに、強力打者が揃うパ・リーグ各球団を抑えるには、並大抵の能力では足りない。その証拠に、過去5年間にパ・リーグ新人王を受賞した投手は、みなプロ入り2年目以上でルーキーではなかった。

 早川は近年まれに見るハイレベルな先発型左腕だが、本来の能力を発揮できなければ1年目から活躍することは難しい。田中の入団はメディア、ファンから早川に注がれる視線を分散し、のびのびと調整できる効果を生むに違いない。

 リリーフ陣もクローザーに戻る松井裕樹に、セットアッパーには牧田和久、アラン・ブセニッツと実績のある投手がいる。昨季は不振に苦しんだ森原康平、宋家豪も本来は能力の高いリリーバーであり、巻き返しが期待できる。田中を中心とした先発陣が確立すれば明確な役割分担が生まれ、安定した戦いぶりにつながっていく。

 野手陣も浅村栄斗という脂の乗った主軸に、若手も順調に育ってきている。とくに2019年ドラフト1位の小深田大翔が守備の負担の大きなショートに定着したことで、茂木栄五郎をサードに回せてより打撃に注力させられる体制を作ったのは大きい。昨季は故障に苦しんだ茂木だが、年間通してサードで起用されたら3割20本塁打も期待できる。

 昨季4位に終わったとはいえ、近年の大型補強もあって楽天の戦力充実度はリーグ屈指になった。

 それでも、次から次へと有望株が開花するソフトバンクと比べれば、まだ選手層は薄いと言わざるを得ない。また、西武、ロッテ、日本ハム、オリックスの各球団もいつ大爆発を起こしても不思議ではない、楽しみな陣容を誇る。楽天が熾烈な優勝争いを制するには、さらなる戦力の底上げが必要になりそうだ。

 田中将大という偉大な存在から学び、新たに才能を開花させる選手が現れるか。田中個人の活躍だけでなく、チーム全体にもたらす波及効果が今から楽しみだ。