13日から開催されている東京オートサロン2017。トヨタのブースの一角は、18年ぶりワークス復帰となるシーズンの開幕戦を翌週に控えていることもあり、WRC関連展示の充実も目を引く。『TOYOTA GAZOO Racing』チーム副代表である…
13日から開催されている東京オートサロン2017。トヨタのブースの一角は、18年ぶりワークス復帰となるシーズンの開幕戦を翌週に控えていることもあり、WRC関連展示の充実も目を引く。『TOYOTA GAZOO Racing』チーム副代表である嵯峨宏英トヨタ専務役員に感触を聞いた。
その前にまず状況確認だが、1999年以来となるトヨタのWRC(世界ラリー選手権)ワークス参戦は実戦が目前に迫ってきた昨秋以降、WRC界全体の大きなうねりの影響を受けることになった。
2013年から4年連続でドライバー、マニュファクチャラーの2冠タイトルを獲得してきた王者フォルクスワーゲン(VW)の突然の撤退表明。倒すべき強敵の退場は残念であると同時に、それはドライバー市場に突如として有力な現役選手が放出されたことを意味しており、トヨタにはいきなりトップドライバー獲得のチャンスが増すという、追い風要素の存在も意味していた。
そして実現したのが、前VWでWRC通算16勝の実績を誇るヤリ-マティ・ラトバラの獲得である。
トヨタは開幕戦モンテカルロ(今月19~22日)に、今季からの新世代WRカーである参戦車『ヤリスWRC』の2台体制で臨む。1台は昨年12月に加入が決まったラトバラ(31歳/フィンランド出身)、そしてもう1台はそれ以前に実戦起用が決まっていた、ヤリスWRCの開発主担ドライバーでもあるベテランのユホ・ハンニネン(35歳/同国出身)だ。
嵯峨専務はヤリスの開発に関して、「皆で精一杯がんばってきましたので、できるだけ早く勝ちたいとは思っています。ただ、当然やってみないと分からないですけど」と話しつつ、一連のストーブリーグの動きを振り返ってこう補足する。「当初の想定以上にいいドライバーに来ていただいたので、期待は高いですよね」。
やはり初年度から優勝経験豊富なドライバー(ラトバラ)を自陣に迎えられたことは、ある意味で計算外だったようである。ただ、そのドタバタであっただろう獲得過程においては、嵯峨専務ら陣営スタッフが自信を深められる状況もまた、これは必然的に発生していた。
「(ラトバラは)いくつかのチャンスがあった立場だと思いますが、そのなかで実際に乗って、選んでもらっています。それは相当な自信になりましたね」
好感触の上に王者不在の新シーズン。観る側の欲目は大きくなりがちだが、地力の高いシトロエン、進境著しいヒュンダイ、そしてV4王者セバスチャン・オジェが加入したMスポーツ(フォード)と、やはり強敵は多い。新WRカー規定年とはいえ、1年生のトヨタは「これから1年かけて、いろいろと合わせていきます」という立場でもある。そしてもちろん、WEC(世界耐久選手権)等でも勝負の厳しさを重々承知している嵯峨専務は、決して楽観はしていない。
しかし、トップドライバーに「乗って選ばれた」自信は確実なものであり、「1年目にも勝つチャンスは来ると思います」と、嵯峨専務は必ずや好機ありと読んでもいる。その一戦の到来を楽しみに待ちたいところだ。
トヨタのワークス復帰で注目度上昇のWRC。2017年シーズンは伝統のモンテカルロ(1月19~22日)で開幕し、11月の最終戦オーストラリアまで全13戦が予定されている。
今季、ヤリスWRCを駆るドライバーのひとりとしてJ-M・ラトバラが加入(彼のコ・ドライバーがM.アンティラ)。《撮影 遠藤俊幸》
WRC通算16勝のラトバラ。〈写真出典 TOYOTA(2016年12月)〉
トヨタの嵯峨専務。《撮影 遠藤俊幸》
東京オートサロン2017のトヨタ ブースは、復活参戦となるWRC関連の展示も充実。《撮影 遠藤俊幸》
ヤリスWRCの展示もある。《撮影 遠藤俊幸》
往年のトヨタのWRC名車群の姿も。《撮影 遠藤俊幸》
13日には新しい「レクサス RC F GT3」のアンヴェールも実施されており、トヨタ/レクサスのブースはモータースポーツ色も濃い。《撮影 遠藤俊幸》