DeNAの公式ドキュメンタリー「FOR REAL―ベイスターズ、クライマックスへの真実。―」(DVD・ブルーレイ、28日発売)が14日から神奈川県内6つの劇場で先行上映が行われる。就任1年目のラミレス監督の下、球団創設5年目にして初のクライ…

DeNAの公式ドキュメンタリー「FOR REAL―ベイスターズ、クライマックスへの真実。―」(DVD・ブルーレイ、28日発売)が14日から神奈川県内6つの劇場で先行上映が行われる。就任1年目のラミレス監督の下、球団創設5年目にして初のクライマックスシリーズに進出した激闘の舞台裏に密着。Full-Count編集部では実際にカメラマンとして激動の1年を取材した金澤佑太氏に話を聞いた。ファン注目の作品の魅力から、密着取材したから分かるDeNAの魅力まで存分に語った。

■映像監督・金澤氏が語るDeNA公式ドキュメンタリー「FOR REAL」の魅力

 DeNAの公式ドキュメンタリー「FOR REAL―ベイスターズ、クライマックスへの真実。―」(DVD・ブルーレイ、28日発売)が14日から神奈川県内6つの劇場で先行上映が行われる。就任1年目のラミレス監督の下、球団創設5年目にして初のクライマックスシリーズに進出した激闘の舞台裏に密着。Full-Count編集部では実際にカメラマンとして激動の1年を取材した金澤佑太氏に話を聞いた。ファン注目の作品の魅力から、密着取材したから分かるDeNAの魅力まで存分に語った。

 DeNAナインの素顔を語ってくれた前編に続き、後編では「ドキュメンタリー監督が語る、本作の魅力」に迫る。DeNAでは「ダグアウトの向こう」と題して、球団創設1年目の2012年から3シーズン、公式ドキュメンタリーを製作してきたが、毎シーズンBクラスと低迷。しかし、昨季は悲願のCS初進出を果たしたこともあり、「FOR REAL」とタイトルを一新し、開幕戦からCS最終ステージまでの道のりで起こった人間ドラマを収めた。躍進の裏で選手が流した数々の苦悩の涙、満身創痍の肉体での怪我との闘いーー。通常メディアが立ち入れないロッカールームなど、禁断のエリアに潜入したから撮れる貴重映像が、ものスゴイことになっている。充実度も5年目でNO1となった本作について、監督が語る魅力とはーー。

ーー金澤さんにとって初めてのスポーツドキュメンタリー作品。プロ野球を撮る難しさは?

「一番は1試合で終わらないということ。もし1試合だけで終わるなら、ちょっとくだけた空気を作ったりして距離を詰めることはできるけど、143試合あるとそうはいかない。選手たちにどこで近づいて、どこで離れてという距離感が難しく感じました」

ーー実際の取材で苦労したことは?

「密着したばかりの3月のオープン戦は開幕直前で調子のいい選手、悪い選手がいる中で状況が分かっていなかった。タイミングが悪いときに調子が悪い選手に声をかけてしまって、距離を取られたり……。勝負の世界で生きていく人に接するのは一層難しいなと痛感しました」

ーーその中で心掛けていたことは?

「一番は一緒に勝利の喜びを分かち合うことです。本来は取材者として一歩冷静に見ないといけないかもしれないけど、うれしさも悔しさも一緒に共有することで、一歩入っていけるというものもスポーツの世界にはある。『撮らないでくれ』と言われたことも、もちろんある。戦術的な理由もあるし、単純に嫌がっている選手もいた。ただ、それも後半戦になるに連れて減ってきました」

■CS初進出決定後のロッカールームで三浦が引退表明、その時ナインの反応は…

ーーその積み重ねとして、球団史上初のCS進出も体験。一番のお気に入りのシーンは?

「全部気に入っているけど、中でも夏の中継ぎ陣のシーンですね。山崎康選手が不振で配置転換になった時に、ほかの中継ぎ陣が個々の役割が増えていく中でも、それぞれが自覚を持ってチームの勝利のために取り組んでいる。でも、心の中では『ヤスが戻って来ないと、チームは勝てない』という思いがある。みんな、自分たちのことをやりながらも山崎康選手のことを気に掛けている、そんな感じが表れる試合中のブルペンのシーンが好きですね」

ーー一番の注目は9月19日の広島戦(横浜)でCS初進出を決めた後のロッカールームで三浦が引退をチームメートに表明するシーン。

「私自身、まったく引退されることは知らなかった。ちょうど、ミーティングで話すラミレス監督を撮っていたけど、あまり喜ぶ様子がない。『ここからCSを勝ち抜いて、日本シリーズも勝つ』と厳しい表情で言っていたんです。南米の方なので陽気で、うれしいことはうれしいと表現する方。おかしいなと思っていたら、監督が『三浦さんから話がある』と……」

ーーその後のロッカールームの空気は。

「選手があまりの出来事にどう反応していいかわからなくて、三浦さんに声を掛けられなかったんです。一番最初に声を掛けたのが同級生の坪井コーチと上田コーチ。選手ではロペス選手、下園選手くらい。三浦さんも落ち着かない様子で腰に手を当てて、うろうろしたりして……」

ーーリアリティーのある場面では、梶谷が巨人とのCS第1ステージ第3戦で死球を受けて左手薬指を骨折した直後のベンチ裏の様子は緊迫感がある。

「そこから彼は最終ステージに強行出場。広島戦の試合前のロッカールームで『根性、出すわ』って言うシーンが印象的です。というのも、彼が『気合』とか『根性』とか言う選手だと思ってなかったんです。でも、あとで聞いたら、そういう言葉がすごく好きだと」

■プロ野球選手が持つ才能、内に秘めた闘志、そして主将・筒香が見せた涙…

ーープロ野球選手の勝負に懸ける執念が伝わってくる。

「CSでも分かったことだけど、彼らが持っているのは才能だけじゃなく、内に秘めている闘志というものがある。裏側で感じた、そういった要素を映像を通して伝えることができたら嬉しいです。」

ーーこの作品中のどこかに、表舞台ではあまり感情を見せることがない筒香が涙を流すシーンが収められている。

「撮っている時は汗と涙、どっちなんだろうと思いながらカメラを向けていました。あの、たった一日の一瞬を撮るために選手たちと一緒に動いてきたんだろうなと。もし、その積み重ねがなかったら、突然行っても撮れることはなかった。そういう部分も感じてもらえたらと思います」

ーー28日のDVD・ブルーレイの発売に先立ち、14日から劇場上映が始まります。

「一番に伝えたいのは、どんな才能を持った人たちも、それだけじゃないということ。プロ野球選手は特別な才能を持っている人だから、自分とは違うんだと思うのではなく、もちろん才能はあるけど、それを開花させるために必死に悩んでやっている。日々のルーティンにかける時間や練習量を考えたら、仕事に対する情熱はずば抜けている。その辺りの彼らの努力を見てもらえたらうれしいです」

ーーファンにとってはたまらないシーンも盛りだくさん。

「普段見ることができない素の表情がふんだんに盛り込まれているので、楽しんでもらいたい。チームは初めてのCS進出、今年行っても2回目で選手が感じるものはまったく違うと思う。2016年しか感じられない彼らの思いがあるので、彼らがどう変わっているのか、この作品を見ることで、今シーズンでの変化を楽しみに見てもえらえると思います」