全豪オープンが間近に迫る中、テニスの八百長事件がまたも浮上した。 メルボルン南東160kmのところにあるトララルゴンでの低いレベルの大会における八百長嫌疑について調べていたスポーツ・インテグリティ・インテリジェンス・ユニット捜査員による…

 全豪オープンが間近に迫る中、テニスの八百長事件がまたも浮上した。

 メルボルン南東160kmのところにあるトララルゴンでの低いレベルの大会における八百長嫌疑について調べていたスポーツ・インテグリティ・インテリジェンス・ユニット捜査員による取り調べに続き、ビクトリア州警察は1月5日、18歳のテニス選手を逮捕した。

 警察は逮捕した男の名前や詳細を明かしてはいないが、その人物は昨年の3月2日に賭けの結果に害を与える不正行為に関わった罪で、ラトローブ・バレー治安判事裁判所に出頭するという。

 ビクトリア州警察のニール・パターソン副長官は、「八百長は世界中で急激に成長している組織的犯罪のひとつであるため、法執行機関、警察にとって、スポーツの健全性(の是非)は問題であり続けている」と言った。

 14度グランドスラムを制したラファエル・ナダル(スペイン)はブリスベン国際での試合のあと、この嫌疑はテニスを曇らせかねないものではないか、と尋ねられた。

 そしてこう答えた。「もっとも重要なのは、この手のことに立ち向かい、戦うことだ」とナダル。彼はまた、告発がなされたということは、「正しい仕事が行われている証拠でもある」と言い添えた。

 昨年の全豪オープンの出だしは、“テニスの統括団体は、約10年にわたりランキングトップ50以内の選手16人が関わった八百長疑惑を正しく調査しなかった”というメディアの報道によって、陰らされてしまった。

 BBCとバズフィード・ニュースによって発信されたこの申し立ては幅広い憶測の引き金を引いたが、裏付ける証拠のある重大な新事件ではなかった。それでもこの一件はテニス界の4つの統治団体----ITF(国際テニス連盟)、ATP、WTA、そしてグランドスラム委員会に、不正行為と不正行為防止対策の有効性を調査、研究するための独立した調査団を創設することを強いたのである。

 この調査団の中間報告は、来月発表される予定になっている。

 ナダルはテニス界のトップレベルでは重大な問題があるとは思わないと言ったが、シーズン最初のグランドスラムを前にこのような事件や嫌疑が新聞を騒がせるのは言うまでもなくネガティブなことだ、という点に同意した。

 「僕はもう長いことツアーを回っているが、こういう話がほとんど毎年もち上がっている」とナダル。「こういった話には、うんざりしつつあるよ」。

 ナダルはよりレベルの低いチャレンジャーやフューチャーズの大会などで起きていることについて推測することはできないが、トップレベルで10年以上も過ごした経験を通し、エリートレベルの状況については自信をもって話せると言った。

 「プロのATPツアーについてなら話せるよ。これがここ(ATPツアー)で起こったことがあるのかは知らないが、間違いなく頻繁には起きていない。もし起こったことがあったとしても、ごくわずかだろう。なぜなら僕は試合ごとに選手たちが必死に戦っている様子、負けたくないと思って戦っている様子を目にしている」とナダルは言った。

 「選手が諦めたり、試合を投げたりするのを僕は目にしていない」

 スペイン当局は先月、警察がスペインとポルトガルのより低いレベルのツアーにおける17の男子大会で八百長が行われた証拠を見つけたのに続き、テニスの八百長ネットワークに関わった疑いのある6人のテニス選手を含めた34人の容疑者を留置していた。

 検挙されたテニスプレーヤーの名前は明かされていないが、当局は問題の選手たちは世界ランキング800位から1200位の間に位置していると話した。この捜査はテニスの汚職防止団体であるテニス・インテグリティ・ユニット(TIU)に、あるプレーヤーが秘密情報をもち込んだのが発端で開始された。

 ナダルは母国スペインで行われている警察の捜査活動は、当局が真剣に不正行為の取り締まりに取り組んでいる証拠だ、とも言った。

 「スポーツ界はこのような不正行為と戦うため、正しいことを行っていると思う」とナダル。「そして、正しいことをやっていない人々は今、冷や汗をかき、困った状況に立たされていることだろう」。

 電子メールでの声明の中でTIUは、ビクトリア州の取り調べをサポートするため、オーストラリアで警察と密接な協力体制をとって働いている、とした。

 「法執行機関による不正行為の取り調べと起訴は、テニスの懲戒処分よりも優先されることである」とTIUは言った。「ひとたび刑事訴訟が終わったら、TIUはテニスの反不正行為プログラムに則り、取り調べを続けることになる」。

 豪テニス協会はビクトリア州警察の取り調べについて直接コメントすることを拒否したが、「テニス界から不正行為を撲滅するため、(警察など)法執行機関の努力をサポートし続ける」と発言した。

 豪テニス協会の健全性と法令遵守部門の責任者であるアン・ウエストは、TIUからのスタッフは大いに支援してくれ、ここ6ヵ月は警察と密に協力しながら働いていると説明した。

 「八百長やあらゆる種類の不法な賭けに対し、我々はまったく容赦しません」とウエストは電話インタビューに答えた。

 彼女によればTIUのスタッフは、12歳からプロまで幅広い層のプレーヤーたち、コーチ、親、管理者、選手とともに働くスタッフたちの教育に特に力を注いでいるという。

 「我々は現場に出て行き、現実と向き合い触れ合っています。これはかつては行われていなかったことです」とウエスト。「ことはまだ試みの初期の段階であり、皆をとらえられないことはわかっていますが、我々は全力を尽くします。それは基本的に教育であり、情報を集結させることであり、何より重要なのは、顔をつき合わせ、相互にやりとりすることです」。

 彼女は八百長がオーストラリアのテニス界で広く行き渡っていることだとは思っていなかった。

 「率直に言って、どこでもあり得ることだと思います」とウエスト。「通常、トップレベルのプレーヤーに関しては、(不当なことは)何もないようです。彼らは自分たちのスポーツの世界で不正が行われるなど絶対に嫌なのだ、という事実を非常に率先してプロモートしようとしています。彼らはその面においてリーダーなのです」。(C)AP