勇気を与えることになれば嬉しいな。夢を見る人が増えたなら。
 丸刈り頭の背番号5はそう言った。
 1月8日に駒沢でおこなわれたトップリーグ、リコーブラックラムズ×宗像サニックスブルース。極寒で雨。ランニングスタイルが持ち味の後者には苦手な条件が揃い、試合には3-36と完敗した。しかし、その中で最初から最後までハードに戦い、楽しそうにプレーを続けたブルースマンがいた。
 LOの福坪龍一郎だ。ラインアウトで何度も跳んだ。ブレイクダウン、タックルに体を張り、ボールを奪い取る。両軍入り乱れたシーンではファイトした。今季ここまで全14試合に先発出場し、キヤノン戦の後半27分に途中交代した以外はフルタイムでプレーしている。

 今季が3年目。2014年に合同トライアウトを受け、宗像サニックスと縁ができて入団した。1年目から10試合に出場したものの、「そのときはシーズン終盤に出番が減っていきました。力も信頼も足りなかったのだと思います」。2年目はトップキュウシュウが戦いの舞台となったが、地道な努力を重ねて体を作り、テクニックを高め、ラグビー知識を高めたことが今季の飛躍につながっている。満足感はないけれど、充実している。

 トライアウトを受ける前は自衛官だった(父も弟も自衛官)。鹿児島・鹿屋工業高校出身。長崎の相浦駐屯地勤務だった楕円球愛好家は、習志野行きを望んだ。そこには、通常より厳しい身体検査などをクリアしなければならない空挺団と、関東社会人リーグに所属するラグビーチームがあったからだ。思いは叶い、職場でもグラウンドでも心が充たされる日々を過ごした。
 しかし、もっともっとの気持ちが湧き出た。23歳の頃だった。さらに高いレベルで…の思いが首をもたげた。
 自身の活躍を「体がデカイからだ」と言う人もいた。そうじゃないんだ。そう示したい自信もあって、同ラグビー部を飛び出る決意をする。クラブ化した日本IBMへ。自衛隊に所属しながらラグビーの環境を変えることにいろんな声があったが、自分の志気持ちに正直になった。

 さらに、トライアウトの存在を知って向上心はさらに燃え上がった。妻・純子さんと入籍した2日後におこなわれた勝負の日、福坪は殺気立つパフォーマンスを見せ、採用担当者のハートを掴んだ。妻は『思いに区切りをつける機会に』と送り出したつもりだったが、夫はラストチャンスの覚悟で挑み、気迫は届いた。
 国内最高峰リーグのクラブで、ほぼフルタイムの活躍をできている源流をこう口にする。
「自分に関わってくれた人たちに恩返しするには活躍するしかないと思っています。そして、自分の姿が多くの人に希望を与えることにつながれば嬉しいですね」
 この日は東京出身で、今月20日に第一子を出産予定の妻もスタジアムに駆けつけた。勝利はプレゼントできなかったが、人一倍激しくプレーする姿は見せられた。

 飛躍の要因は目に見えることだけが理由ではない。闘争する者としての強いスピリットが、接点での相手を上回る勢いを生んでいる。
 世界有数のファイターでもあるチームメート、ジャック・ポトヒエッター(元南アフリカ代表/ワラターズでスーパーラグビー優勝を経験)の影響を受けて強い気持ちを持つようになった。頼りになるハードマンは、公私ともに仲の良い親友であり、先生だ。
「彼のアグレッシブさを見て、自分も負けないように、といつも思います。ジャックは、ラグビーはまず体をぶつける勇気が大事と言う。一緒に練習することで学び、ふたりで、まず自分たちが先頭に立って激しく戦おうと言っています」
 188センチ、105キロ。28歳になって、さらにラグビーが楽しくなってきた。

 今季最終戦は今週末、1月14日のNEC戦。最後までピッチに立ち続けたい大男は、「勝って終わりたい」と腕をぶす。チームは入替戦出場はなく、少しでも順位を上げて来季につなげたい。その鍵を握るのがFWであることは誰もが分かっている。その期待に応えたいし、道をこじ開けることこそ、LOを任された男が価値を示す場だ。
 自衛官を辞めてラグビー一本で生きていくことを決めたときの妻の様子を、ルーキーイヤーにこう話した。
「公務員と結婚したつもりだったのよ、と言われたんです」
 しかし妻は夫を支持した。「頑張り次第で未来を変えられる魅力がある」と言い切る姿に、希望と覚悟を感じたからだろう。
「いまは、(挑戦して)よかったね、と言ってくれています」
 生まれくる子どものためにも、全試合出場と今季7勝目を手にして、笑顔で誕生の日を迎えたい。