一塁でトップ評価だったのは中日のビシエド  米国には、データアナリストが選手の守備を分析し、その結果から優秀守備者を表彰する「Fielding Bible Awards」という賞が存在する。これに倣い、株式会社DELTAではアナリスト…

一塁でトップ評価だったのは中日のビシエド

 米国には、データアナリストが選手の守備を分析し、その結果から優秀守備者を表彰する「Fielding Bible Awards」という賞が存在する。これに倣い、株式会社DELTAではアナリストの協力のもと、「1.02 FIELDING AWARDS」というNPBの優秀守備者を表彰する企画を開催している。

「1.02 FIELDING AWARDS」では、今年は9人のアナリストが各々の分析手法で選手の守備貢献を評価。今季各ポジションを500イニング以上守った12球団の選手を対象に順位付けし(1位:10点、2位:9点……)、最も多くのポイントを獲得した選手を最優秀守備者とした。今回は一塁・捕手でどのようなランキングになったかを紹介する。

 一塁手部門では、セ・リーグのゴールデン・グラブ賞を獲得したダヤン・ビシエド(中日)がこちらでもトップ評価を得ている。昨季の本企画においても、一塁手部門2位となっていたが、今季も安定の守備力を見せたようだ。アナリストの分析におると、ビシエドは一、二塁間の打球を多くアウトにすることで高い評価を得たようだ。

 また一塁手はほかの内野手と違い、味方野手の送球を受ける場面が非常に多い。この捕球時にショートバウンドとなった送球を捕球しアウトにできるかどうかは、一塁手の守備の見せ所だ。このプレーは「スクープ」と呼ばれる。一般的なセイバーメトリクスの守備指標ではこういったプレーを評価にしていないが、このプレーを評価対象とするアナリストもおり、このスクープ評価においても、ビシエドは23のショートバウンド送球のうち、19球で捕球を成功させており、高い評価を得ていた。

捕手でトップ評価を得たのは中日の木下でフレーミングに秀でていた

 2位以下は村上宗隆(ヤクルト)、中島宏之(巨人)、ジャスティン・ボーア(阪神)の順で選出されている。村上は三塁手も兼任したシーズンだったが、一塁守備の評価も高く、9名中3名のアナリストから1位票を獲得した。一、二塁間でも、一塁線でも安定して高い確率で打球をアウトにしていた。一方の中島は一塁線の打球に対し、よく処理できていたようだ。

 特徴的な傾向を見せたのがボーアで、対右打者時に一二塁間の打球の処理率が高くなっていたようだ。同様の傾向はホセ・ロペス(DeNA)にも見られており、2人の外国人一塁手が右打者に対して一塁線を大きく空けるポジショニングをとっていた可能性が指摘されている。

 ちなみにパ・リーグのゴールデン・グラブ賞を獲得した中田翔は、8選手中6位の評価。もう1人の受賞者となった中村晃(ソフトバンク)は、一塁での守備イニングが463イニングと、対象となる500イニングに届いておらず、選出対象外となっている。

 捕手部門もビシエドと同じく中日所属の木下拓哉が受賞となった。「1.02 FIELDING AWARDS」では2018年から捕手が捕球によって審判のストライクコールを誘発する“フレーミング”に対する分析・評価を解禁。「DELTA」が取得するデータは目視により取得したものだが、分析時の扱いに注意を払った上でフレーミングを評価項目に取り入れたアナリストもいる。

ゴールデン・グラブ賞に輝いた甲斐はフレーミングの評価で下位に

 木下はこのフレーミング評価において、他選手に圧倒的な差をつけてトップとなった。コース別に見ると、低めの投球に対しストライクを取る能力が抜きん出ていたよう。2位の大城卓三(巨人)はストライクゾーンの横幅、3位の梅野隆太郎(阪神)は左打者に対してより多くのストライクを獲得していた。フレーミングで好評価を得た捕手は、そのまま総合順位も高かったようだ。

 他に戸柱恭孝(DeNA)が一塁側の投球をストライクゾーン枠に引き込む捕球で多くのストライクを獲得していた。ただ一方で三塁側の投球に対してはそれほど多くのストライクを得ておらず、非常に特徴的なフレーミングの傾向が出ているとアナリストは指摘している。

 ちなみにパ・リーグでゴールデン・グラブ賞を獲得した甲斐拓也(ソフトバンク)は、総合で4位の評価だった。低めの投球に対してストライクを奪えず、フレーミング評価で下位に沈んだことが最上位とならない大きな要因となった。

 また甲斐は盗塁をアウトにする、あるいは盗塁をそもそもさせないことでも他選手に圧倒的な差をつけるには至っていない。ただワンバウンドの投球を暴投にしないプレーにおいては、最高評価を得た。奪三振能力の高いパワーピッチャーが多いソフトバンクにおいては、こうした甲斐のブロッキング能力の高さが効果的だったと考えるアナリストもいた。(DELTA)

DELTA
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。