2021年(令和3年)の第97回箱根駅伝は、アンカー10区で逆転した駒大の劇的な優勝で幕を閉じた。創価大は惜しくも2位だったが、低い前評判をくつがえす往路初制覇に誰もが驚いた。また、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、応援自粛を求められ…

 2021年(令和3年)の第97回箱根駅伝は、アンカー10区で逆転した駒大の劇的な優勝で幕を閉じた。創価大は惜しくも2位だったが、低い前評判をくつがえす往路初制覇に誰もが驚いた。また、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、応援自粛を求められた特別な大会でもあった。テレビ視聴率が過去最高を記録するなど話題の多かった21年大会の総集編を、備忘録としてまとめた。


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◆ダークホース往路V
前年総合9位で初シードを獲得したばかりの創価大が往路を制し、あっと言わせた。1区から区間3位-6位-3位-2位-2位の安定感ぶり。区間賞なしでの往路優勝は02年順大以来。箱根4度目出場での往路Vは戦後史上最短だった。優勝候補の青学大ら本命が想定外のミスに苦しむなか、新興勢力が伸び伸びと力を発揮した。

 復路も10区の途中まで首位を守り、総合Vまであと1歩だった。唯一の誤算は最終10区。小野寺勇樹(3年)は区間20位と急失速し、駒大に逆転を許した。「精神的なものだと思います」と榎木和貴監督。いつも通りの走りなら逃げ切る計算だったが、アンカーにかかる初優勝のプレッシャーは想像以上だったようだ。

◆失明危機の力走
創価大往路Vの立役者は、4区で2位からトップへと押し上げた嶋津雄大(3年)。前年10区でも区間新をマークした実力者は、今回も区間2位の走りで期待にこたえた。生まれつき「網膜色素変性症」という難病を抱え、目が見えにくい朝晩は練習が限られ、チームメートと別メニューなど苦労も多い。だが「2人だから乗り越えられた」。同じ病気を抱え、8区(区間8位)を走った永井大育(3年)の存在が心の支えだった。進行性の病気で「いずれ見えなくなるかもしれない」運命を共有する2人の懸命な走りは、見る者の心を揺さぶった。

◆激坂王
山上り5区のヒーローには「山の神」の称号が与えられてきたが、区間2位の力走で往路優勝のゴールを駆け抜けた創価大・三上雄太(3年)は「激坂王」と呼ばれた。11月に行われた「激坂最速王決定戦@ターンパイク箱根」で優勝したのが三上だった。片道13.5キロの坂道をひたすら駆け上がるレースで、箱根山上りの前哨戦にはもってこい。(箱根5区を走った順大・津田将希、青学大・竹石尚人らも出場し、入賞していた)。試走禁止の箱根のシミュレーションにもなるため、今後は注目されるレースとなりそうだ。

◆たなぼたV?
「逆転の駒沢」が奇跡を起こしたというべきか、ラッキーが転がり込んだというべきか。最終10区、3分19秒差の2位でタスキを受けた石川拓慎(3年)が区間賞の力走。ズルズルと後退してきたトップ創価大を残り2キロ地点で抜き去り、13年ぶり7度目の総合優勝を飾った。百戦錬磨の駒大・大八木弘明監督も「ちょっと不思議な勝ち方をさせていただきました」と驚きを隠せなかったが、起用したメンバーは3年以下が9人。「同じくらいの力であれば若い選手を使う」と10区の神戸駿介主将(4年)も当日変更し、非情采配に徹した。経験より伸び盛りの「プラスアルファ」の可能性にかけ、11月の全日本大学駅伝に続いて2冠を達成した。

◆ゲームオーバー
連覇を狙った青学大はまさかの往路12位に沈んだ。エース神林勇太主将(4年)が故障欠場、留年してまで5区を走った竹石は区間17位と大ブレーキ。1位と7分35秒差がついた原晋監督は「ゲームオーバーという感じ。(復路は)優勝と言ったらウソになる。確実にシード権を取りにいきたい」と復路を待たずに敗北宣言。これに発奮した選手は復路優勝。総合でも4位にジャンプアップし、王者のプライドを見せた。

◆V候補シード落ち
各校上位10選手の1万メートル(10キロ)平均タイムから優勝争いが予想されるが、今年はデータ通りとはいかなかった。持ちタイム1位の駒大Vは順当だったが、平均タイム2位で優勝候補にも挙げられた明大は11位でシード落ち。快進撃を見せた創価大の平均タイムは上から14番目だった。倍以上の20キロ超を走る箱根では、いかにコンディショニングを整え、ピークを持ってくるかが重要。さらに例年6月に行われる陸上日本選手権が12月に行われた関係で、出場した有力選手は調整に苦労した。早大Wエースの太田直希、中谷雄飛(3年)はともに本来の力を発揮できず、日本選手権組は軒並み低調な結果に。 コロナ禍の影響がさまざまな部分で出た大会だった。

◆2年連続区間新「怪物」
東京国際大の2年生ヴィンセント(ケニア)が圧倒的な「個の力」を見せつけた。「花の2区」で14人抜きの区間賞。各校エースを置き去りにする異次元の走りで、昨年3区に続いて2年連続で区間新を樹立。前年2区の区間記録を塗り替えた東洋大・相沢晃(旭化成)の1時間5分57秒を、8秒更新した。東京五輪1万メートル代表の相沢もその実力を認めており「2区だけは走らないでほしかったですね」とボヤいたほど。ヴィンセントは大会MVPの金栗四三杯を外国人で初めて受賞した。

◆フリーザ様を見習え
例年7区の二宮付近に出没するコスプレ応援団、人気アニメ・ドラゴンボールの悪役キャラに扮した「フリーザ軍団」は、今年姿を見せなかった。コロナ禍を受け「応援したいから、応援に行かない」というキャッチコピーで応援自粛を求められた今大会。昨年121万人の観戦者が18万人と減少したものの、都心に近づくにつれて人垣ができ、「密」になるエリアも散見された。箱根駅伝の名物となっていたフリーザ軍団の応援自粛マナーがSNSで絶賛され「フリーザ様を見習え」のワードが飛び交った。姿見せずとも、フリーザの存在感は絶大だった。

◆歴代最高視聴率
 日本テレビ系で放送された視聴率が初日の往路が31%、復路33.7%と、いずれも歴代1位を記録した。瞬間最高視聴率は、往路が創価大が初優勝したゴールシーンで36.2%。復路は最終10区で3位の東洋大と4位の青学大がゴールする場面で41・8%。最後までどちらに転ぶかわからないドラマチックな展開、沿道応援の自粛もあって、テレビ中継にかじりついた人が多かったようだ。

◆青赤旋風
最後の最後で優勝を逃したが、それでも今大会の主役は創価大だった。見た目にも鮮やかな青と赤の縦じまユニホームが、サッカー界でも21年の年明けから躍動した。創価大が往路初優勝を飾った2日後の1月4日には、サッカーJリーグのFC東京がルヴァン杯を制覇。1週間後の11日には全国高校サッカー選手権で山梨学院が優勝。青と赤のユニホームが大暴れし、SNSには「#青赤旋風」の書き込みがあふれた。

【第97回箱根駅伝・最終順位】
1位 駒大  10:56:04
2位 創価大 10:56:56
3位 東洋大 11:00:56
4位 青学大 11:01:16
5位 東海大 11:02:44
6位 早大  11:03:59
7位 順大  11:04:03
8位 帝京大 11:04:08
9位 国学大 11:04:22
10位 東京国際大 11:05:49
(※上位10校が次回シード権獲得)
11位 明大 11:06:15
12位 中大 11:07:56
13位 神奈川大 11:08:55
14位 日体大 11:10:24
15位 拓大 11:10:47
16位 城西大 11:11:20
17位 法大 11:13:30
18位 国士舘大 11:14:07
19位 山梨学院大 11:17:36
20位 専修大 11:28:26

(参考)関東学生連合 11:18:10

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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