東京都府中市で活動する者同士のクラシコ。戦前から戦後まで、両者の立場は対照的だった。

 昨季準優勝も今年度は戦前まで6勝7敗と苦しむ赤いジャージィは、お家芸たるフィジカル勝負に注力。「スローダウンさせよう」とは、NO8リーチ マイケル。CTBリチャード・カフイもうなずく。

「クイックボールを出させたらサントリーは攻撃でプレッシャーをかけてくる。ラック(からの球出し)を遅く、ということはやりました」

 前半4分頃。自陣ゴール前右の「ラック」へCTBカフイが衝突。相手の球出しを「スロー」にする。サントリーのSH流大主将はなんとかさばくも、左中間でNO8リーチがタックル。落球を誘った。

 以後もFLリアム・メッサムらがぶちかまし、試合を締める。それでも果実を得たのは、開幕13連勝中のサントリーだった。球の出どころで苦しめられながら、最終的にはアタックを貫いたのだ。

 その秘訣を、主将経験者のNO8竹本隼太郎が端的に示す。

「スペースをよく観られているのと、判断が良かったです」

 8分。ハーフ線付近右でランナーとなったCTBカフイが突進。ここから東芝が攻め始めそうなところだったが、出された楕円球をサントリーのLO真壁伸弥が拾う。直進。

 同時に黄色い攻撃陣形が一気に広がり、パスは逆側へつながる。最後は端にいたWTB中靏隆彰が、目の前の防御を振り切った。ゴールラインまで、約40メートルを駆け抜けた。スコアは7-0。

「皆のリアクションが良かった時は、いいトライにつながっている」

 サントリーのSO小野晃征が控えめに手応えを明かすかたわら、東芝のNO8リーチはこう認めた。

「サントリーの上手いところは、ボールをスペースに運べるところ。それに自分たちが対応できず…」

 SH流主将は、敵の背後へのキックでも魅せつつ「東芝さんは早い展開の方が嫌かと思い、なるべく早く外に…」。24-0とした前半こそ、しばし「外」で東芝の「スロー」に直面。ただ後半は、CTB村田大志いわく「ダイレクトプレーを」。接点付近に人を引き寄せながら、7、25、39分と「外」で得点した。

 防御でも皆で素早く起き、網を張った。CTB村田はこうも続ける。

「安心して守れたと思います」

 強化方針を変えた今季の東芝は、NO8リーチによれば「例年よりフィジカリティが落ちています」。かたや前年度9位のサントリーにあっては、沢木敬介新監督が各項目で厳しい基準を明示。白星を得ながら、細部の反省を怠らずにきた。

 この日3トライのWTB中靏も、快勝劇の背景をこう観たようだ。

「ひとつの画を観ることに関して、チームのレベルが上がりました」

 試合後。優勝に大手をかけた側のスタッフは「紙一重」とつぶやく。

 1つひとつの激しい打ち合いを「紙一重」でしのぎ続けたことでやっと大勝できた、との意味だろう。

 では、何がその「紙一重」の堆積を生んだのか。

 同じ人物は応えた。

「準備、です」(文:向 風見也)