もはや、常勝軍団と言っていいだろう。 過去4大会のうち3度決勝に進み、2度の全国制覇を成し遂げた。昨年は静岡学園に敗れ…
もはや、常勝軍団と言っていいだろう。
過去4大会のうち3度決勝に進み、2度の全国制覇を成し遂げた。昨年は静岡学園に敗れ準優勝に終わったとはいえ、頭ひとつ抜きんでた存在として近年の高校サッカー界を牽引するのは、青森山田(青森)である。

準決勝でハットトリックを達成した安斎颯馬
今年のチームも、過去に引けを取らない強さを備えている。コロナ禍の1年において各大会が中止となるなか、地道に研磨を積んで集大成となるこの大会に照準を合わせてきた。
1回戦で広島皆実(広島)を2−0で撃破すると、続く帝京大可児(岐阜)戦では4−2と打ち合いを制した。準々決勝では堀越(東京A)を4−0と一蹴。3試合で10得点2失点と圧巻の強さを示し、当然のように"聖地"埼玉スタジアムに乗り込んでいる。
準決勝でも勢いは止まらなかった。対戦相手は矢板中央(栃木)。こちらもここ4年で3度目のベスト4と、強豪校の仲間入りを果たしている。
その強みは、3試合でわずか1失点の堅守にある。青森山田とすれば、その守りをいかに攻略していくかがテーマとなったが、彼らにとってその難易度はさほど高いものではなかったようだ。
守備時には6バックのように自陣を固める矢板中央に対し、立ち上がりこそやや攻めあぐねたが、16分に大きなサイドチェンジで相手を揺さぶると、左サイドの角度のない位置から安斎颯馬が左足を一閃。早々に均衡を破ると、35分には、伝家の"宝投"ロングスローをCBの藤原優大が合わせて追加点を奪取した。
さらに後半立ち上がりにもロングスローを起点に3点目を奪うと、その後は前に出てきた相手にカウンターを打ち込み、2点を追加。安斎がハットトリックを達成するなど、5得点とゴールラッシュを演じ、3大会連続の決勝にコマを進めている。
「蹴り合いや打ち合いになってはいけない入り方をしたなか、落ち着いてボールをサイドに動かしながら前半のうちに2点取れたことで、我々の意図する戦いができた。この1年間を通じて、相手のサッカーにつき合わず、いろんなことができるサッカーをテーマに積み上げてきた。5−0という結果でしたけど、決勝につながるいい試合ができた」
黒田剛監督が振り返ったように、スコアだけでなく内容も伴った圧倒的な勝利だった。
「いろんなことができる」と指揮官が言うように、たしかに青森山田のサッカーはいい意味で掴みどころがない。ロングボールで相手を押し込んだかと思えば、サイドに人数をかけて攻略していくこともできる。あるいは中央での細かいつなぎもあれば、個人の突破で局面も打開できる。もちろん、この試合でも2点を生んだロングスローも大きな武器だ。
対戦相手とすれば、厄介なことこの上ないだろう。矢板中央の高橋健二監督は、「やってくることは大体わかっているんですが、リスタートを含めて取られてしまった。対応できるように時間をかけてトレーニングをしてきましたが、それでも勝ち切る、取り切ることができるのがすごさかなと思います」と、青森山田の強さに舌を巻いた。
どれだけ対策しても、その上をいかれてしまうのだから、手の施しようがないだろう。何よりすごみを感じたのは、3点リードしてからの試合運びだ。
守りを固めて逃げ切ればいい。そんな余裕の展開のなか、青森山田はむしろプレスを強め、高い位置でのボール奪取を狙い、さらに追加点を奪いに行く姿勢を貫いたのだ。ボールホルダーに対して、2人、3人と容赦なく襲いかかっていく。点が欲しい矢板中央が、攻めたくても、攻めに行けない。その構図に青森山田の強さの神髄を見た。
「選手権では、何が起こるかわからない。(この試合の前に行なわれていたもうひとつの準決勝で)山梨学院(山梨)が2点差を追いつかれましたし、去年の決勝の静岡学園戦の教訓もある(※2−0からの逆転負け)。選手権は大会自体が生き物なので、悪い印象を持って決勝に進むことは避けたかった」
選手権の勝ち方を知る黒田監督は、どこまでも用意周到だ。大量リードでも隙を見せず無失点に抑えたことは、決勝に向けての好材料となるだろう。
1月11日に行なわれる決勝の相手は、2点差を追いつかれながらもPK戦で帝京長岡(新潟)を下した山梨学院に決まっている。奇しくも、ともに初優勝をかけて激突した11年前の決勝と同カードとなった。
その試合では、立ち上がりに失った1点を取り返せずに涙を呑んだ。また、優勝に手がかかりながらも逆転負けを喫した昨年の決勝の悔しさも備わるだろう。ともすれば感情的になりがちな一戦だが、黒田監督は決勝への想いを冷静にこう答えた。
「11年前の悔しい想い、リベンジの想いといろんな意味がありますが、青森山田らしく積み上げてきたもの、何でもできるサッカーのテーマがブレることなくやっていきたい」
常勝軍団の自負と、チャレンジャーの想いを胸に、青森山田がファイナルの舞台に挑む。