クライミング界のニューヒロインであり、ケガしても「勝つ」負けん気クライマー、野中生萌。2013年、15歳にしてリード種目でW杯日本代表初選出。めきめきと成長を続け2016年5月にはW杯ムンバイ大会で初優勝を成し遂げる。その3ヶ月後の2016…

クライミング界のニューヒロインであり、ケガしても「勝つ」負けん気クライマー、野中生萌。

2013年、15歳にしてリード種目でW杯日本代表初選出。めきめきと成長を続け2016年5月にはW杯ムンバイ大会で初優勝を成し遂げる。

その3ヶ月後の2016年8月にはW杯ミュンヘン大会で2度目の優勝を果たし、2016年のW杯世界ランキングは「2位」と躍進を続けるトップクライマーだ。

Vol.1の今回は、25年間に渡り、アスリートを取材してきたスポーツジャーナリスト生島 淳が19歳にして世界トップクライマーである彼女の強さの秘訣に迫る。

ニューヒロイン野中生萌が語るクライミングのコツとは

生島>
さすが鍛えた肉体という感じですね。
 
野中>
ありがとうごいます。
 
生島>
どうでしょう、オリンピックの正式競技に選ばれて。
 
野中>
ここまでオリンピック競技になるまで広まって、私は素直に嬉しいです。
 
生島>
お約束というか、私も挑戦したいと思うんですけど、コーチングしていただいてよろしいでしょうか?
 
野中>
ピンクのテープをたどっていって、両手で掴んで、離陸してスタート。両手でゴールを持ってゴールになります。ちょっとお手本をやってみますね。
 
生島>
両手でホールドするのね。
 
野中>
次だけ見ていちゃダメなんですよ、その先のことを読みながら。足の位置とかバランスとかを考えて。
 
(生島が実際にやってみる)
 
野中>
いい感じです。それで両手で掴んでゴールです。
 
生島>
イエス!
 

 

オリンピック初採用《スポーツクライミング》を野中生萌が語るボルダリングの魅力とは

生島>
まずスポーツクライミングという、カテゴリーがありますけど、その中にも色々種類があるんですよね。
 
野中>
その中でも3種目。まずボルダリングはこういう4、5mぐらいの短い壁を命綱無しで登る競技ですね。
 
ボルダリング…壁面に設定されてスタートからトップ《ゴール》までのコースを制限時間内にいくつ登れたかを競う
 
リード…ロープとハーネス《命綱》で自分を壁に繋ぎ、高さ12m以上のコースをどこまで登ることができるかを競う。
 
スピード…高さ10m~15mの同じコース設定の壁を2人並んで登り、トップにあるスイッッチを押すまでのタイムを競う。
 
生島>
その中でボルダリングを中心に今やられているのは?
 
野中>
ボルダリングが一番楽しくて、簡単な課題でも難しい課題でも、登れた時の達成感とか、ものすごいいいなと思うし、大会とかだと、その時目の前に出された課題とかってその時にしか触れないので、そういう楽しさ。その場で感じられるそういう楽しさっていうのはなかなか魅力的ですね。
 
生島>
クライミングに対して自分は、クレイジー(身体能力や考え方がずば抜けて優れていること)だという風に思いますか?
 
野中>
いやなんか、まずここまでクライミングをやっているっていう時点で、結構クレイジーなんじゃないかなって単純に思います。
 
生島>
通信制の高校を選ばれているじゃないですか。その段階で、プロで勝負するんだっていう覚悟をもう中学のとき決めていたんだなということがこれは「すげーな」と僕は思うんですよ。
 
野中>
結構聞かれるんですよね。そういう選択って大きい選択なのに、「よくそんなすんなりできたね」って言われるんですけど、自分の中ではそんなことなくて。なぜかっていうと、自分が好きなことをしたいから、それに必要な選択だったんですよね。
 

 

トレーナーが語るクライマー野中生萌の強さの秘訣

生島>
2016年を振り返りますと、どの大会が印象深いですか?
 
野中>
やっぱり初優勝したインドの大会。
 
2016年5月 W杯ムンバイ大会で初めての優勝を果たした。彼女はなぜ優勝することができたのか。フィジカルトレーナーの小田佳宏が語る。
 
小田>
日本国内でも、海外でも女性クライマーの中では確実にフィジカル面でトップにいるんですね。そこはやっぱり国内で勝てている、海外でも成績を今期残せている要因の一つではあるんですけども、それに加えて見落とされがちなのは、柔軟性もしっかりあるっていうことですね。ホームランも打てるけど、盗塁とかも。トリプルスリーが狙える選手って言ったらいいのかな、野球でいうと。
 

 

怪我しても《勝つ》負けん気クライマー野中生萌

生島>
怪我をしていたという情報もあるんですけど。
 

野中>
ウォーミングアップのときに手首になにか一瞬違和感があって、すごい気になるんですけど、でも競技中は全然アドレナリンが出まくっているので、そんなに言うほどは気にはならなくて。
 

生島>
それでも大会には出続けていたわけ?
 

野中>
出ない選択肢はあんまりなかったですね、痛かったけど。
 

生島>
腫れていてできたんですか?
 

野中>
怪我があったから、ダメだったみたいな、なんかそういうのはしたくてなくて。怪我だからダメって、すごい弱いなと思うので。
 

生島>
ものすごい負けん気が強いのかなと思うんですけど。
 

野中>
うーん、そう思います。いや、これ登れないって決めつけたら登れないし、ケガしたときも、ケガしたから無理だと思ったら絶対無理だけど、でもできるかもしれないし、実際にできたし、そういう風に考えていくのって絶対に大事だとも思いますね。