全国高校サッカー選手権準々決勝で、昨年度ベスト4の矢板中央が富山第一に2-0と勝利した。 矢板中央は、これで2大会連続…

 全国高校サッカー選手権準々決勝で、昨年度ベスト4の矢板中央が富山第一に2-0と勝利した。

 矢板中央は、これで2大会連続のベスト4進出。さらには、4大会連続でベスト8以上の成績を残し、うち3大会がベスト4と、近年際立った好成績が目立つ。

 そんな矢板中央の強さを支えているのが、水も漏らさぬ堅守である。

 今年度のチームも、身長187cmのDF新倉礼偉、同188cmのDF島﨑勝也がセンターバックとして中央を固め、最後尾には1年生だった昨年度からゴールを守り続けるGK藤井陽登が控える。

 矢板中央を率いる高橋健二監督も「安定感が増している」と、その存在に全幅の信頼を置く鉄壁のトリオを中心に、自陣ゴール前に築いた砦で相手の攻撃をはね返していく。

 ともすれば、徹底して守備を固めるサッカーには、批判の目が向けられることも少なくない。ロングボールの多用をいとわず、縦に蹴り出していく大味な攻撃も、その理由のひとつだろう。

 ある種のノスタルジーを感じさせるそのスタイルは、ポゼッションサッカーが主流となりつつある現代の高校サッカー界にあっては、確かに異端。前時代的、あるいは悪玉とさえ見なされることもある。

 しかしながら、高校日本一へ到達するための手段が、たったひとつでなければならない理由はない。こうした割り切った守備に徹するチームがあることは、ボールポゼッションを重視するチームの成長につながるという側面もあるだろう。

 何より、守備に徹しさえすれば結果が残せるほど、サッカーは簡単なものではない。矢板中央の最大の武器が堅守であることは確かだが、勝負どころを見逃さず、確実にロースコアゲームを勝利につなげる勝負強さや執念は、そうは真似のできないものだ。

 富山第一との試合でも、前半は劣勢を強いられた。自陣ゴール前での危ういシーンもいくつかあったが、「相手(富山第一)も堅守のチームで、よく似ていてやりにくさはあったが、焦れずに守備から入った」とは、キャプテンのDF坂本龍汰。前半を無失点でしのぐと、後半は少しずつ攻勢に転じ、少ないチャンスを確実に生かして2ゴールを奪った。

 高橋監督が振り返る。

「(2回戦で)徳島市立、(3回戦で)東福岡と対戦してきて(3回戦から)中1日。疲労度が心配だったが、立ち上がりは足が止まって、劣勢の時間が続いた。前半は相手の勢いに飲まれていた」

 そこで、高橋監督は「ディフェンス陣ががんばっていたので、(攻撃の)活性化を図ろうと」打った手は、前半40分でのMF小川心の投入。しかも本来のMFではなく、2トップの一角としてFWでの起用だった。

 指揮官曰く、「(どう転ぶか)流れを見よう」という狙いの交代策ではある。「ドリブルが得意でアイデアを持っている」という左利きのテクニシャンだけに、前線でボールを収めて攻撃の時間を作り、試合の流れを変えてくれれば、という思いだったのかもしれない。



途中出場で先制ゴールを決めた矢板中央の小川心

 ところが、後半49分、その小川が試合を決める大仕事をやってのける。

 小川は中盤でのボール奪取に合わせてDFラインの裏へ走り出し、ロングパスを受けると、まずは巧みなファーストタッチでボールを浮かせ、追いすがる相手DFをかわす。あとは落ち着いてGKの位置を確認し、左足でシュートを流し込むだけだった。

「監督から『FWでいくぞ』と言われたときは、正直ビックリした」という小川だったが、「ディフェンス陣が失点ゼロで守ってくれていたので、自分が試合を決めようという思いでピッチに入った」

 殊勲の背番号8は、試合後しばらく時間が経ったあとでも、興奮冷めやらぬといった様子で語る。

「何も考えず、ドリブルも感覚でやっている。気がついたらゴールに入っていた。(県予選以来のFW起用だったが)抵抗はなく、久しぶりだったので燃えていた」

 敗れた富山第一の大塚一朗監督は、「いくつかあったチャンスで決め切れていたら、違う結果になったのではないか。後半、サイド攻撃のときに横パスを狙われ(奪われ)、縦への一本のパスでやられた。注意していただけに残念だった」と悔しがったが、敵将のコメントには、矢板中央の強さの秘密が端的に示されていると言っていい。

 矢板中央は、1試合を通じて主導権を握り続けたわけではなかったが、気がつけば2点をリード。試合終盤は、焦りの見える富山第一の攻撃を難なくはじき返し、試合終了のホイッスルを聞いた。

 とはいえ、矢板中央にとって、本当の勝負はこれからである。

 過去3度ベスト4に進出しながら、準決勝では一度も勝っていない。昨年度の大会でも優勝した静岡学園と対戦し、30本近いシュートを浴びながらも無失点でしのいでいたが、後半ロスタイムに痛恨のPKを与え、0-1で敗れている。

 1年前の準決勝にも先発出場していた坂本は、「去年の悔しさは今でも持っている」と語り、リベンジを期す。

「自分たちが目指す日本一に近づいているのでうれしさはあるが、去年静学に負けた(埼玉スタジアムの)ピッチには、思い入れもあるし、悔しさもある。あとふたつ勝つために気を緩めず、次も勝って日本一を取れるようにがんばりたい」

 これまで準決勝の壁にはね返されること3度。矢板中央は3度目の正直ならぬ、4度目の正直を成し遂げることができるのだろうか。

 異端の挑戦は、まもなくクライマックスを迎える。