ボールを地面に落とさずに、足で突きつづけるリフティング。サッカーのトレーニングではよく見かける光景だが、リフティングがた…

ボールを地面に落とさずに、足で突きつづけるリフティング。サッカーのトレーニングではよく見かける光景だが、リフティングがたくさん回数できるからといって、サッカーがものすごくうまくなるという話は聞かない。そして、試合ではこのリフティングをする場面がない。果たしてこの謎のプレーは、サッカーに必要なのか?

「リフティングはシュート練習、パス練習と同じで、サッカーの練習のひとつですよね。リフティングができなくても、ほかの部分に特長のある選手はいます。指導者目線で言うと、『リフティングができないから、この選手はダメだ』というジャッジはしないほうがいいですよね。リフティングだけが、サッカーの上手い、下手をはかる基準ではないですから」

 リフティングには、大きく分けて2つのやり方がある。足先でボールを細かく突く「ちょんちょんリフティング」と、足の甲(インステップ)やインサイドでボールを突く「とんとんリフティング」だ(※ネーミングは共に福西氏)。

「子どもたちがリフティングをしている様子を見ていると、足先だけで何度も突く、ちょんちょんリフティングが多いですよね。集中力は養われるかもしれませんが、サッカーの試合中にちょんちょんリフティングが活きる場面は、かなり限定的です。なので、僕は子どもたちに『ちょんちょんができるようになったら、とんとんをやってみたら?』と言います」

 サッカーの試合中、浮き球を足でコントロールするプレーは頻出する。浮き球のコントロールを身につけるにあたって、リフティングは効果的だ。また、空中にあるボールを足でとらえるボレーキックの感覚をつかむ際にも、リフティングは役に立つ。

「リフティングがすべて無意味とは思いません。浮き球やボレーの感覚を養うなど、目的を持って取り組むのはいいと思います。ジーコジャパンの時に一緒だったヒデ(中田英寿)は、練習前のウォーミングアップでボールを頭上に蹴り上げて、落ちてくるまでの間に首を振って周りを見て、足でボールをコントロールする動きを繰り返していました。試合のどういう状況でリフティングの技術が活きるかをイメージしながら練習すれば、実戦で使える技術になると思います」

 リフティングはあくまで、「サッカーの数ある練習のひとつにすぎない」と言う福西氏が繰り返し説くのが「試合に活きる練習をすることの大切さ」だ。

「基本的に、リフティングは上下のボールの動きが中心ですよね。でも試合中は対面からボールが来ることもあります。それに応じて、足の運び方やボールの受け方を変えなければいけません。一方で、ボールのどこに足を当てるかは、ボールが上から来ようが横から来ようが同じなので、ある程度、上下のリフティングができるようになったら、違う軌道のボールに対応するなど、ほかの動きをしたほうがいいと思います」

 最後に福西氏に、「子どもにおススメの練習はありますか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「体操ですね。僕自身、子どもの頃に体操で培った体の動かし方やバランス能力などは、サッカーに役立ちました。サッカーは片足立ちでボールを扱うスポーツです。バランス能力が大切ですし、相手とぶつかった時のバランスのとり方、空中での姿勢や空間認知能力は体操で学んだものです」

 小学4年という遅い時期にサッカーを始めたにも関わらずプロになれたのも、体操で培った身体能力が大きく影響しているそうだ。

「体の使い方を身につけるために体操は役に立ちますし、周りの人にも勧めています。自分の子どもも、小さい頃に体操をやらせていましたから」

 子どもの頃の時間は有限だ。その時に、何に取り組むか。足先のちょんちょんリフティングで1000回、2000回を目指すのか。サッカーの試合を想定したリフティング(ボールコントロール)なのか。あるいは、福西氏のようにキックやボールコントロールに加え、体操など、アスリートとしての土台を大きくすることなのか――。

 正解はひとつではないが、何をすればサッカーがうまくなるかを考えて試行錯誤することが重要であることは間違いないだろう。