岡副麻希が振り返るスーパーGT2020 後編コロナ禍により約3カ月遅れで開幕した2020年のスーパーGTは大混戦の末、劇的な決着を迎えた。『SUPER GT+』(テレビ東京系列/毎週日曜23時30分〜)のリポーターを務め、シーズンを通してサ…

岡副麻希が振り返るスーパーGT2020 後編

コロナ禍により約3カ月遅れで開幕した2020年のスーパーGTは大混戦の末、劇的な決着を迎えた。『SUPER GT+』(テレビ東京系列/毎週日曜23時30分〜)のリポーターを務め、シーズンを通してサーキットで取材した岡副麻希さんにインタビュー。後編では、現場で岡副さんが見たスーパーGTの舞台裏や人間ドラマを語ってくれた。

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『SUPER GT+』のリポーターを務めている岡副麻希さん

 2020年シーズンは開幕時点ではトヨタ陣営が圧勝するのではないか、というぐらいスープラの前評判が高く、実際、開幕戦はスープラ勢が1位から5位までを独占。このまま独走するかと思われましたが、ホンダとニッサンの両陣営がレースを重ねるごとに速さを増し、最終戦・富士を迎えた時には10台にチャンピオンの可能性がある大混戦になりました。そんなシーズンになるとは開幕時は予想もしていませんでした。

 タイトル決定戦となった最終戦は劇的な展開となりましたが、第6戦の鈴鹿もドラマチックなレースとして印象に残っています。松田次生選手とロニー・クインタレッリ選手がドライブするNISMOのニッサンGTーRは予選のタイムアタック中にクラッシュを喫して、最後尾からのスタートになってしまいました。

 しかしレース中盤、クラッシュが発生してセーフティカーがコースインすると、絶妙なタイミングでピットイン。レースが再開すると、なんと松田選手のドライブするGT--Rがトップに立っていたのです。松田選手はそのまま後続を引き離して大逆転で優勝を飾ります。

 レース後、NISMOの鈴木豊監督や松田選手は涙を流していました。松田選手はスーパーGTで2度のチャンピオンに輝いていますが、その彼でさえ、2020年シーズンはニッサンのエースとして結果を出さなくてはならないプレッシャーの中で戦っていたんだと実感しました。この第6戦・鈴鹿や最終戦・富士を見ていると、「モータースポーツは最後まで諦めない者が勝つ」ということをあらためて認識しました。



岡山国際サーキットで開催された開幕戦。2020シーズン序盤はスープラ勢が優位だった



スーパーGTの舞台裏を語る岡副さん

 また、GT300クラスもGT500クラスに負けないぐらいの大激戦でした。K2 R&D LEON RACINGのメルセデスAMG、埼玉トヨペットGreen Braveのスープラ、GAINERのニッサンGT-R、R&D SPORTのスバルBRZなどが、毎戦、コース上だけでなく、多彩なピット戦術を駆使しながらバトルを演じていました。

 最終的には藤波清斗選手とジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手のコンビがKONDO RACINGに初のタイトルをもたらしました。近藤真彦監督が率いるチームの結束力は強かったですし、ピットの雰囲気はポジティブで明るかったです。

 藤波選手はいつも元気で、私がピットの前を歩いていると「インタビュー、いつでもいけますよ」と声をかけてくれるんです(笑)。経験豊富なオリベイラ選手はシーズン前半戦はやや精彩を欠いていましたが、尻上がりに調子を上げました。さすがでしたね。

 近藤監督のインタビューの受け答えも印象的でした。レース中に自分のチームが抜かれても、抜いた相手チームのことを必ず褒めるんです。ジェントルマンでしたね。

 ジェントルマンといえば、NISMOの鈴木豊監督も負けていません。勝っても負けても、取材時の口調はいつもソフトです。そしてインタビューが終わると、「今日も取材していただき、ありがとうございました」と挨拶してくれます。毎回こちらが恐縮するほどの丁寧さで、本当に紳士的でした。

 スーパーGTでは、監督の皆さんが魅力的で、ARTAの鈴木亜久里総監督はサーキットの中で一番と言っていいぐらいオーラがあります。TEAM IMPULの星野一義監督は「鬼の星野」と言われるぐらいレース中は怖い存在なのですが、とても優しい一面を持ち合わせています。第6戦でNISMOが劇的な勝利を飾った時には、松田選手たちのところに駆け寄ってきて、「よくやった」と褒め称えていました。素敵だなと思いました。

 2021年シーズンは、各陣営のドライバーがまだ発表されていませんが、若手ドライバーが新たに入ってきたらさらに面白くなると思っています。スーパーGTの前座でFIA-F4選手権が開催されていましたが、10連勝を記録してチャンピオンに輝いた平良響選手(20歳)はぜひステップアップしてほしいですね。2020年シーズンに新型コロナウイルスの影響で来日できなかったヘイキ・コバライネン選手に代わって、TGR TEAM SARDからGT500クラスにスポット参戦した阪口晴南選手(21歳)にも期待しています。

 シーズン終盤2戦にケガで負傷欠場した高木真一選手に代わってGT300クラスのARTAから出場した松下信治選手も楽しみです。ずっと海外のフォーミュラカーシリーズで活躍していて、GTのような「箱車」に乗るのは初めてでしたが、すんなり対応して速さを発揮していました。2021年シーズンにフル参戦したら、きっと活躍すると思います。ぜひインタビューして話を聞いてみたいです。

 ベテランの高木選手にはしっかりとケガを治して、またGT300クラスを盛り上げてほしいです。高木選手は11月初旬に開催された他のツーリングカーのレースでクラッシュして、入院したと聞いていたので心配しましたが、事故から1カ月も経たない最終戦のパドックを歩いて、「ヨオッ!」と声をかけられました。腰椎と右手首を骨折して手術するほどの大ケガと聞いたので、びっくりでした。

 コロナ禍の2020年は、チームやドライバーの皆さん、そして取材する私たちにとっても、いろんな意味でいつもとは違うシーズンでした。取材者としては、やっぱりマスクを着用しないとドライバーにインタビューできなかったことが大変でした。特に夏場にクルマから汗だくで降りてきて、すぐにマスクをつけるのは大変だったと思いますが、しっかりと対応してくれました。すべての選手やチームがコロナ禍の中でモータースポーツを盛り上げるために協力し合っていたような気がします。

 2年間、レポーターとしてスーパーGTを見てきましたが、2020年シーズンはドラマチックなレースの連続で、何度も驚かされ、時には泣きそうになりもしましたが、現場にいて本当楽しかったです。これからもスーパーGTを追いかけていきたいと思っています。

【profile】 
岡副麻希 おかぞえ・まき 
フリーアナウンサー。1992年7月29日、大阪府生まれ。早稲田大在学中より、テレビ番組のキャスターなどとして活動をスタート。現在は、テレビ番組『SUPER GT+』(テレビ東京系列)のほか、『岡副麻希のほくほくみゅ〜じっく』(文化放送)などに出演。特技は水泳、ピアノ。趣味はストレッチ。
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かんだゆうこ●ヘア&メイク hair&make-up by Kanda Yuko
田名部敦士●スタイリング styling by Tanabe Atsushi