川崎Fで3度目V経験、G大阪戦ハットトリックの裏側も語る サッカーJリーグは22日、2020シーズンの活躍を表彰する「J…

川崎Fで3度目V経験、G大阪戦ハットトリックの裏側も語る

 サッカーJリーグは22日、2020シーズンの活躍を表彰する「Jリーグアウォーズ」を開催し、ベストイレブンを発表した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、オンライン開催となった今年、2年ぶりにJ1王者に返り咲いた川崎フロンターレからは9選手がベストイレブンに選出。MF部門から、自身2度目の受賞となった家長昭博が「THE ANSWER」のインタビューに応じた。

 ◇ ◇ ◇

 今季のJ1は、川崎Fが2018年以来となる3度目の優勝(17年、18年、20年)を果たして幕を閉じた。史上最速優勝、歴代最多得失点差など、Jリーグの数々の記録を塗り替えての優勝に、今季の川崎Fは“歴代最強チーム”との呼び声が高い。経験豊富なベテランと高い技術を持つ若手が見せた多彩な化学反応は、コロナ禍でうつむきかけたJリーグを盛り上げた。

 そんなチームに、家長昭博は変わらない“らしさ”で貢献した。優勝を決めた第29節のガンバ大阪戦では45分、49分、73分とゴールを決めてハットトリックを達成し、柏レイソルとの最終戦でも2度ゴールネットを揺らすなど、15年、16年の大宮アルディージャ時代に記録した自身最多ゴール数「11」に並んだ。

「ゴールへの意識はあんまり変わっていなくて。でも、ポジションが少し前になったのはあると思います。そんなにゴールにこだわりもないですし、周りにいる若い選手が思いっきりゴールに向かってくれるので、そのサポート役が多いかな。だからあまり自分自身ではゴールに向かっている感覚はないですけど、たまたま点が取れているので、それで評価してもらえているのかなと思います」

 もともとあまり多くを語るタイプではない。それでも、年を重ねるごとに経験値も上がり、後輩たちにアドバイスを送るなど口数は増していくものだ。しかし、家長は「ないですね」と否定する。本人いわく、チーム内でも「言葉数は一番少ない方、相変わらず(笑)」らしい。だからこそ、プレーで伝えているのかもしれない。

 優勝が現実味を増してきた第27節の鹿島アントラーズ戦で足首を負傷した。4日後の第30節横浜F・マリノス戦、3日後の第28節大分トリニータ戦を欠場するも、さらにその4日後のG大阪戦では先発出場し、豪快なハットトリックで等々力陸上競技場に詰めかけたファン、サポーターを笑顔にした。「2試合休んだので、足の状態も良くなっていましたし、練習でも合流できていたので。あとは痛み止めを打ったらプレーできる状態だった。それで試合に出してもらったんです」。何事もなかったかのような表情で淡々と痛み止めを打っていたことを明かしたが、それもまた家長らしかった。

経験を重ねた家長が感じた「興奮度、達成度」の変化

 家長は04年にG大阪でプロデビューを飾り、翌年には自身初のJ1優勝を経験した。スペインや韓国、そして大宮でのプレーを経て、17年に川崎Fに移籍。初年度で自身2度目のJ1優勝、翌年の18年には連覇を達成し、自身も初めてのJリーグ最優秀選手賞(MVP)に輝いた。今回のJ1優勝は、家長にとって4度目。しかし、「優勝するたびに喜びが増えていくのかなって思っていたんですけど、そんなに増えていかなくて。優勝しても、そんなに満足できなくなってきた」。それが、優勝に対する家長の素直な感情だった。

「うれしくて喜びも爆発したんですけど、寝て起きると、また自分の日常が始まるというか。みんなそうだと思うけど、変わらない朝を迎えて、練習が始まる。だから優勝した直後のインタビューでも言ったけど、『今日が終わらなければいいのになあ』って思って。でも明日が来て、やっぱり普通の日常だったんです。優勝しても、そんな感じなのかなって」

 どんなに経験を重ねても、家長は変わらない。「自分でも思うけど、変わっていない。年だけ取っていく」らしい。では、サッカーへの向き合い方はどうなのだろうか?

 その答えも、やはり「変わっていないかもしれないですね」という。サッカーのために生活し、それがすべてだと信じて、今もなお取り組み続けている。「でも……」と一瞬考えて出てきた言葉は、意外にも自分のなかで感じた変化だった。

「1試合で感じることとか、興奮度とか、達成感とかは変わってきたかな。いろいろな経験をしていくなかで、物の感じ方や素直な受け取り方は変わってきたかもしれないですね」

 サッカーへの向き合い方は変わらない。でも、感じ方は変わってきた。重ねた経験の分だけ、濃く、深く感じるようになったのかもしれない。「そうなると思ったんですけど、意外に何も感じなくなってきた」。そう言いながら、家長自身も少し不思議がった。

 何かを手にした瞬間、それが日常になる。そうやって家長は、一つひとつ階段を上がってきたのかもしれない。

周囲の変化が家長に影響「目標を持って残りの現役生活を送らないといけない」

 コロナ禍の影響を受けた今季のJリーグは、例年にない変則的な1年だった。そんなシーズンを、家長は「変化の年」と感じたという。「試合のルールもそうだし、お客さんがスタジアムに入れなかったりもした。それに今年で現役を引退される方に、同年代の選手も出てきた。Jリーグ的にも、個人的にも、今年は本当にいろいろなことがあって、変化の年なのかなって思いながら、1年が終わりそうな気がしています」

 そうした周囲の変化が、変わらない家長にも少しだけ影響を与えようとしている。川崎Fに来て4年。結果を残し、手応えも得た。さて、次なる目標はなんだろうか。

「これは本当に大事なもので、自分のなかで持たないといけないと最近は思っているんですけど、今まではそんなに明確な目標はなくて。自分のモチベーションになることが勝手に照準を捉えてメラメラと燃えてきたタイプだと思うんです。

 今は年齢も上がって、同世代の選手も少なくなってきて。自分のなかで目標を持って、残りの現役生活を送らないといけないと思っているんです。でも、自然に見つけたいというか、無理矢理自分のなかで目標を立てるよりも、今はまだないんですけど、自然に確立できるようにちょっと考えたいなって思っています」

 明確な目標を持たずに、Jリーグにその名を刻んできた選手も珍しいが、それもまた、家長らしさなのかもしれない。「思っていないことは今までも言ってこなかったので、これからも素直にしゃべっていこうかと」。そう宣言する家長に、「素直すぎませんか?」と問いかけると、「みんな一緒だとおもんないので(笑)。自分は自分らしく、“らしく”やっていこうかなと思っています」と、どこか自分自身に言い聞かせるようにも聞こえた。

 来年、プロ18年目のシーズンを迎える。同年代のJリーガーたちが引退を発表し、チームのバンディエラ・中村憲剛も現役を退く。それでもきっと、これまでと変わらない家長昭博がいるはずだ。(THE ANSWER編集部)