快晴の秩父宮ラグビー場に雨が降った。 タックルの雨だ。九州電力(トップキュウシュウ1位)の低く、激しいディフェンスを受け、立ち上がりは軽快に駆けていた三菱重工相模原(トップイースト1位)の選手たちの表情が曇り始める。グリーンのジャージーが…

 快晴の秩父宮ラグビー場に雨が降った。
 タックルの雨だ。九州電力(トップキュウシュウ1位)の低く、激しいディフェンスを受け、立ち上がりは軽快に駆けていた三菱重工相模原(トップイースト1位)の選手たちの表情が曇り始める。グリーンのジャージーがボールを持つ時間は長かったが、前半にトライラインを越えたのは、11分にFLリシュケシュ・ペンゼが持ち込んだときだけだった。

 1月3日におこなわれたトップチャレンジ1の第1節。日本ラグビーの東の聖地を訪れていた5301人のファンは良いものを見た。九電が三菱重工相模原を19-12と破った試合は、タックルで勝負を決めた80分。熱がほとばしる勝利だった。
 前半を0-7の僅差で終えた九電は、風上に立った後半に入ってうまくキックを使って敵陣に入り、しつこく、低く、そして激しく守った。そして、いくつかの好機を集中力高く3トライに結びつける。思い通りのロースコアゲームにした。

 昨年度も敗れはしたものの(19-43)、三菱相手に後半は14-12と上回った。一昨年度の対戦時も23-36と敗れたが、後半は14-19とほぼ互角に戦えていた。だから7点ビハインドでも、ハーフタイム時の九電には後半への自信が満ちていた。
 一方の三菱は、ゲームキャプテンを務めたCTBレポロ テビタが「うまくいかずにイライラした」と回想するように、もやもやしたまま後半を迎えた。佐藤喬輔監督も「いつもはしないようなパスをしていた」と言った。臙脂のジャージーの圧力を受けてノックオンを何度も繰り返し、ミスを連発。苛立ちは時間の経過とともにやがて焦りと混乱を呼んだ。

 7点を追う九電は、後半9分にラインアウトから攻めた。ピッチ中央でブレイクダウンを作った後、ブラインドサイドのWTB磯田泰成が切れ込んでトライを奪い(ゴールも成功)同点に追いついた。20分には相手反則からPKを蹴り出す。ラインアウトからモールを押し切り、リードを奪った。
 36分、自陣深くのスクラムから同点トライを奪われた。しかし、試合終了1分前にキックカウンターから攻める。WTB早田健二が大きくゲインし、FL小原渉が前に出る。最後はFB加藤誠央がゴールポスト下に飛び込んで歓喜の時を迎えた。
 最後の最後は、運動量と数で上回った。

 出場した全員が何度も体を張った中でも、SH児玉大輔が見せた猛タックルは光った。セットピースやブレイクダウンの周辺で足首に突き刺さったり、ボールに絡んだり。相手にまとわりつき、好きにさせなかった。
「自分の責任を果たしただけです。今日は全員が自分自身のやるべきことをやった」
 いつも周囲に目を配っている背番号9の目には、仲間の意を決したプレーが何度も飛び込んできた。
「高井(迪郎/NO8)の気合いが凄かった。キャプテンの中靍(憲章/CTB)も」
 先発に外国出身選手が6人並んだ相手(23人の中には8人)を日本人だけで破った瓜生丈治監督は、「何度でもポジショニングをはやくして、相手より先に動き、前に出る。そして、それらを低く。準備してきたことをやり切ってくれた」と選手たちを称えた。

 第1試合ではNTTドコモ(トップウェスト1位)が日野自動車(トップチャレンジ2-1位/トップイースト1位)に68-12と大勝してシリーズ1勝目を挙げた。
 この日登場した4チームが総当たりで戦い、1位チームがトップリーグに自動昇格し、2位以下はそれぞれトップリーグの15位、14位、13位と入替戦を戦うことになる。