箱根駅伝2021 有力校戦力分析駒澤大学編 駒澤大は、前回の箱根駅伝で思うような結果を残せず8位に終わっていた。 しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大から出雲駅伝がなくなるなど、いつもとは違う駅伝シーズンを迎えたにもかかわらず、最初の…

箱根駅伝2021 有力校戦力分析
駒澤大学編

 駒澤大は、前回の箱根駅伝で思うような結果を残せず8位に終わっていた。

 しかし、今年は新型コロナウイルスの感染拡大から出雲駅伝がなくなるなど、いつもとは違う駅伝シーズンを迎えたにもかかわらず、最初の手合わせとなった全日本で6年ぶりの優勝を果たした。



全日本ではラストで東海大を一気に突き放し優勝を勝ち取った田澤廉

 この優勝により、出雲と箱根を合わせた優勝回数は22と日本体育大を抜いて最多記録になり、今シーズンも青学大と東海大に注目が集まる中、存在感を示した。

 この優勝の最大の要因は、最終の第8区を走った田澤廉(2年)快走だろう。

 昨年も1年生ながら、全日本7区で4人抜きの好走を見せ、箱根でも3区で流れを取り戻す走りをしていたエースだ。今年の全日本は勝負に徹しながら57分34秒で区間賞を獲得していたが、95年に渡辺康幸(早稲田大)がマークした日本人最高の56分59秒は確実に塗り替えられる手応えを持って臨んでいた。

 田澤は全日本の出場後、12月4日の日本選手権・長距離大会で、日本人学生歴代4位となる27分46秒09で8位の成績を残し、さらに力をつけている。

 駒澤大は今年、5000m14分10秒25以内の有望な選手が6人も入学。チーム力を上げるには彼らの力が必要だと考えた大八木弘明監督は、新戦力になる1年生の強化も意識した。その結果、「1、2年生の勢いがいいので、それが上級生を刺激している」とチーム状況を説明する。

 11月末の記録会では、1年生の1万m自己記録更新が続出。白鳥哲汰の田澤に次ぐチーム2位の28分14秒86を筆頭に、青柿響が28分20秒42、鈴木芽吹が28分23秒87、花尾恭輔と赤津勇進も28分30秒48と64を記録し、チームの2~6位までを1年生が占めたのだ。

 箱根のチームエントリーでは、前回4区区間5位の小島海斗(4年)はケガの影響により外れたが、前回経験者の4年生4名の名前はある。4年生以外の経験者では、石川拓慎(3年)と2年生の田澤だが、今回は2年生が4名に1年生が5名と、下級生が多いのが特徴だ。

 大八木監督は「エントリー上位10名の1万m平均タイムが、出場校中トップの28分26秒81であること」がチームの強みであると話し、それを前提に目標をこう語った。

「若いチームなので流れに乗るためにも往路優勝をして、復路でも確実に前の方でレースを進めていけば総合優勝も見えてくる。最低でも3位以内には入りたい」

 ポイントとなるのは、往路での田澤の起用区間だ。1区は前回も全日本1区で好走していた中村を起用したように、今回は全日本の1区で3位になった加藤淳(4年・前回は8区区間11位)が濃厚だ。1万mの自己記録は大学2年時の28分36秒59だが、今年は全日本インカレの5000mで13分43秒61の自己ベストを記録しており、好調さが覗える。

 続く2区は、順当ならエースの田澤だろう。前回、東洋大の相澤晃が出した1時間05分57秒の区間記録更新は厳しいとしても、1時間6分台前半を出せる力はあるはず。1区で上位につければ、田澤がトップに立つ可能性は大いにある。うまく留学生たちとうまく競り合う展開になれば、青学大や東海大との差を広げることもできるだろう。

 ただ、「どの区間でも区間賞と区間記録を狙えるような走りをしたい」と話す田澤は、昨年納得しきれなかった3区を再び走り、優勝に貢献したい、という思いも抱いている。

 1年生のエースである鈴木も、4区とともに2区を希望。「普通なら2区はエースの田澤さんが走るんでしょうが、田澤さん頼みでは勝てないと思うので、自分が2区を走れば田澤さんをほかの区間で生かせると思います」と意欲を見せている。

 各校ともにエースを揃える2区は、集団で走る可能性が大きいため、圧倒的なスピード差がない場合には、ほかの選手を引っ張ってしまい、逆に相手に好走のチャンスを与えてしまうこともある。

 厚底シューズ効果で各選手のタイムが上がっている今の状況では、思ったほど差を広げることができない可能性は大いにある。だからこそ、展開がバラけてくる3区で走力の差を生かし、大きくタイム差を稼ぐという作戦もあるのだ。

 田澤を3区に起用した場合、2区の候補には鈴木のほかにも、全日本で7区を走り、田澤に3位でつないで、逆転のチャンスを作った小林歩(4年/前回7区)もいる。

「前回の7区は1km3分くらいでしか押して行けず、スタミナとスピード不足を感じたので、今年はスピードと持久力の強化を意識してきた」と言うように小林は今年、今年は5000mの自己記録を13分43秒77に伸ばし、1万mもチーム8位の28分38秒75まで伸ばしている。

 彼を"耐える2区"という形でうまく使えれば、3区の田澤と4区の鈴木でライバルを突き放す作戦も取れるかもしれない。そこについては大八木監督も、今回から当日変更が4人から6人になったルールを活用して、選手の調子やライバル校の様子をギリギリまで見て、狙いを絞ってくるだろう。

 もうひとつ重要なポイントとなる山の区間も、5区には2年連続で走っている伊東颯汰(4年)がいる。前回は区間13位と力を発揮できなかったが今回はこう意気込む。

「前回は、途中から気持ちも少しやられてしまって粘りの走りができなかった。今年は最後まで気持ちが途切れないように、練習でも後半の粘りを意識した走りをしてきました」

 大八木監督も「5区と6区に関してはしっかり準備をしてきた」と言うように、5区は伊東のほかにも、1万mでは28分36秒18を出し、全日本も6区で区間4位の実力を持つ山野力(2年)が希望していて、競り合う状況だ。

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 6区は1万mで28分14秒86、5000mは13分46秒78を出している白鳥が希望しているが、ほかの選手になったとしても13分台のスピードランナーが使えそうな状況だ。

 ただ、近年は有力校のほとんどが5区と6区にそれなりの力を持った選手を投入してくる。それだけに、駒澤大の往路優勝は4区までにしっかりリードできるかどうかにかかりそうだ。

 復路は9区と10区に前回も走った神戸駿介(4年)と石川の上級生がいる。そこにつなぐ勝負区間である7区と8区には1年生や、全日本5区2位の酒井亮太(2年)など、スピードのある選手が起用されるだろう。

 これらの区間で若い選手たちを気持ちよく走らせる状況をしっかり作り出すことができれば、今回の駒澤大の総合結果に大きな影響を及ぼしてくるだろう。