史上初の秋開催となったマスターズ(11月12日~15日/ジョージア州)。誰もがその開催を心待ちにしていたが、同大会にかける意気込みの強さで言えば、ロリー・マキロイ(31歳/北アイルランド)は、1、2を争う選手のひとりと言えるだろう。 なに…

 史上初の秋開催となったマスターズ(11月12日~15日/ジョージア州)。誰もがその開催を心待ちにしていたが、同大会にかける意気込みの強さで言えば、ロリー・マキロイ(31歳/北アイルランド)は、1、2を争う選手のひとりと言えるだろう。

 なにしろ、メジャー4大会すべてを制する"キャリア・グランドスラム"達成まで、マスターズを残すだけ、だからだ。

 これまでにメジャー4勝(2011年全米オープン、2012年、2014年全米プロ、2014年全英オープン)。快挙達成まで「あとひとつ」となった実力者は、今年の大会でも虎視眈々と"グリーンジャケット"を目指していた。

 しかし終わってみれば、5位タイ。ここに向けて調整を重ねてきたが、再びチャンスを逃してしまった。



今年のマスターズは5位タイに終わったロリー・マキロイ

 大会前は優勝候補の筆頭にも挙げられていた。メジャー通算18勝の帝王ジャック・ニクラウスもこう語って、マキロイを有力視していた。

「例年、秋になると調子を上げてくるマキロイにとって、今年は有利なスケジュール。加えて、秋はコースが軟らかく、ボールのランが出なくなるから(コースが)非常に長くなる。ロングヒッターのマキロイにはさらに好都合だ」

 だが、悪天候となった初日が結果的には痛かったかもしれない。2時間45分の中断もあって、マキロイが初日にプレーできたのは9ホールのみ。イーブンで迎えた金曜日の早朝に残りの9ホールを消化したが、10番パー4の第3打となるバンカーショットから再開して、それを寄せ切れずにいきなりボギーを叩いた。

 その後、"アーメン・コーナー"の最後のホールとなる13番パー5でも、ティーショットを左に大きく曲げてボギー。続く14番で連続ボギーを喫すると、16番パー3でもティーショットを左に曲げて池ポチャ。後半だけでボギーを4つも出して、第1ラウンドは「75」と出遅れた。

 2011年大会の最終日、首位を走っていたマキロイは、10番パー4でティーショットを大きく左に曲げるミスから崩れて失速。あえなくタイトルを逃したが、この日の左に曲げるショットは、当時のことを思い起こさせた。

 結局、第1ラウンドは3オーバー、77位タイ発進となったマキロイ。ダスティン・ジョンソンら7アンダーのトップグループからは、10打もの差をつけられた。

「初日で優勝争いから外れてしまったことは、実にショックだった」

 マキロイ自身、のちにそう振り返っている。

 とはいえ、マキロイはそこから意地を見せて逆襲に転じる。第1ラウンドを終えて、わずか30分後にスタートした第2ラウンドでは「66」をマークして躍進。予選通過を果たすと、決勝ラウンドでは3日目に「67」、4日目に「69」と伸ばして、通算11アンダー、5位タイでフィニッシュした。

 最終的には"らしさ"を見せたマキロイだったが、優勝争いに加わることは一度もなく、通算20アンダーで優勝したジョンソンとは9打差。やはり、初日の出遅れが響いたことは間違いない。

「(新型コロナウイルスの感染拡大による)ロックダウンから復帰して以降、一番苦戦していたのがアイアンショットの精度だった。それで、初日はすごく慎重に戦いすぎてしまった。自分のスイングを信じることができなった。このコースでは、それが最も必要なことなのに......」

 ラウンド後、そう言って悔しさをにじませたマキロイ。それでも「54ホールは本当にいいプレーができたんだ」と、第2ラウンド以降の内容については、満足そうに語った。

「(第2ラウンドからの)54ホールでは、ボギーが2つだけ。そこは、ポジティブに考えたい。この54ホールは、オーガスタにおける僕の最もいいプレーだった。来年春の挑戦が待ち切れない」

 マキロイは早くも2021年4月に開催されるマスターズへ目を向けて、同舞台でのリベンジを誓った。はたして、悲願の"キャリア・グランドスラム"達成はなるのか、注目である。

 さて、2019-2020シーズンは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で一時ツアーが中断。いくつかのトーナメントも中止を余儀なくなれた。ただそんななかで、マキロイにとってはハッピーな出来事があった。9月、自身のインスタグラムで、エリカ夫人との間に長女となるポピー・ケネディちゃんが誕生したことを報告。コロナ禍にあって、生まれたばかりの愛娘と貴重な時間を過ごすことができたそうだ。

「まずは2カ月ほどゆっくり過ごしたい。娘の成長を見るのも楽しみでならないからね。その後、しっかりとトレーニングも行なって、ゴルフの状態を万全にして来年の戦いに臨みたい」

 マスターズの戦いを終えて、そう語ったマキロイ。年明け初戦では、欧州ツアーのアブダビHSBC選手権(1月21日〜24日/UAE)の参戦を予定している。そこから"キャリア・グランドスラム"達成への新たな挑戦が始まる。