高校バスケの日本一を決定するウインターカップ(全国高等学校バスケットボール選手権大会)が12月23日に開幕を迎える。優…
高校バスケの日本一を決定するウインターカップ(全国高等学校バスケットボール選手権大会)が12月23日に開幕を迎える。

優勝候補・福岡第一の司令塔、ハーパー ジャン ローレンス ジュニア
ウインターカップは現在NBAのワシントン・ウィザーズでプレーする八村塁(明成高で2013~2015年3連覇)や渡邊雄太(トロント・ラプターズ/尽誠学園高で2011~2012年に2年連続準優勝)をはじめ、多くの日本代表やBリーガーたちが大会を沸かせてきた歴史があり、毎年楽しみにしているファンも多い。
今大会の男子は、八村塁や渡邊雄太に匹敵するスター選手は不在だが、現高校3年生の早生まれまでが対象となる、U16代表を筆頭に将来性豊かな逸材が多く集まっている。
本来、今年度はU16アジア選手権および、アジアを勝ち抜けばU17ワールドカップが開催される年だった。しかし新型コロナウイルス感染拡大のためにU16アジア選手権は中止。U17ワールドカップも延期されて調整中となっている。
そんな中で今年のウインターカップの目玉選手は誰か? ウインターカップに出場する男子選手の中で、「優勝候補の顔」「スピード抜群のスラッシャー」「素材抜群のNo.1オールラウンダー」「昨年の悔しさを晴らす絶対的司令塔」、「日本で一番注目される将来性抜群の2年生」といった注目5選手をピックアップする。
■ダンクができる182cmの司令塔
ハーパー ジャン ローレンス ジュニア(福岡第一3年/182cm/PG/U16代表)
目指すは大会3連覇。絶対的司令塔だった河村勇輝(東海大1年)が卒業しても優勝候補にあげられる福岡第一の顔になるのが、「ジュニア」の愛称を持つハーパー ジャン ローレンス ジュニアだ。身長よりも10cm以上長いウイングスパンと、鍛え抜かれたフットワークを生かしたディフェンスとスピードが最大の武器。
井手口孝コーチは「高校からポイントガードを始めたので河村と比べるのはかわいそうだけど、河村よりワンサイズ大きく、アグレッシブなディフェンスと182cmでダンクができる身体能力という点では河村を上回ります。成長が早くて将来が楽しみな選手」と大きな期待をかける。今大会はゲームキャプテンを務めるハーパー。「先輩たちが2連覇したので、次は自分たちが3連覇する番」と頂点だけを見据えている。
■スピード抜群のスラッシャー
小川敦也(おがわ・あつや/洛南3年/190cm/SG /U18代表候補)
スピード抜群のスラッシャーでありながらも、フローターシュートやステップインなど豊富な得点バリエーションを持つ洛南のエース。父は元プロバスケ選手で、現在WリーグのアイシンAWウィングスでヘッドコーチを務める小川忠晴。幼い頃から母と一緒に父の応援に行き「気がついたら2歳からボールを持ってバスケをしていました」と言うほど、バスケに囲まれた環境で育った。
現在はシューティングガードとして点取り屋の役割を担うが、中学時代や高校に入ってからもポイントガードを務めたことがある。本人は「日本人だと小さい選手がポイントガードをやることが多いけれど、僕はこの身長でポイントガードをやってみたい」と展望を語っており、将来的にはスピードを生かした190cmのビッグガードになることを視野に入れている。
■大会No.1オールラウンダー
金近 廉(かねちか・れん/関西大学北陽高3年/196cm/SF/U16代表)
196cmのサイズで、どこからでもしなやかに得点が取れる今大会最注目のオールラウンダーだ。インサイドにアタックしたかと思えば、状況に応じてアウトサイドに出てスコアを重ね、リバウンドやブロックショットに果敢に跳ぶ多彩さを持つ。チームは2年連続のウインターカップ出場だが、全国大会では上位回戦でプレーした経験が少なく、これから経験値を高めていくという点では、磨けば光る素材型の選手だと言える。
U16代表に選出されてからはプレーの幅を広げて意識が高くなり、チームに与えている影響は大きい。今大会はリーダーとしての役割にも挑戦したい。
■昨年の悔しさをぶつける絶対的司令塔
米須 玲音(よねす・れおと/東山3年/176cm/PG)
昨年は準決勝で河村勇輝率いる福岡第一に敗れた東山。試合後に河村から「来年は優勝しろよ」との言葉をかけられ、「今年こそは」の思いで燃えているのが、東山の絶対的司令塔である米須玲音だ。
生粋の司令塔で大会No.1の呼び声が高い。視野が広く、ハーフコートでも、速攻でも絶妙なアシストでチームメイトを操り、線は細いながらも勝負所ではみずから得点も決める。とくに206cmのサイズを持つ留学生、ムトンボ ジャン ピエールの生かし方はお手のもので、ピック&ロールを仕掛けるスキルが高い。大澤徹也コーチはその才能に惚れ込んで1年次から先発を任せているほどだ。京都府予選ではライバルである洛南によもやの敗戦。昨年の悔しさと府予選の悔しさを背負い、雪辱を期して高校生活最後の大会に臨む。
■将来性が光る199cmの2年生エース
山﨑一渉(やまざき・いぶ/仙台大学附属明成2年/199cm/SF /U16代表)

八村塁に憧れ、仙台大学附属明成に進学した山﨑一渉
ウインターカップの大会アンバサダーを務める八村塁が最も注目する選手にあげるのが、高さと抜群の得点センスを兼ね備える母校・明成の後輩、山﨑一渉(いぶ)だ。山﨑自身はその八村に憧れて明成に入学。ギニア人の父を持ち、八村と同じアフリカにルーツを持つことから『八村二世』と呼ばれることも多い。八村が高校時代につけた背番号8を背負うが、明成の佐藤久夫コーチはプレースタイルも性格もまったく異なる山﨑を八村二世に育てようとは思っていない。
山﨑は遠い距離から放つディープスリーが得意のフォワード。2年生になってインサイドの技術と跳び込むタイミングを身につけながら、どこからでも得点が取れるようにパワーアップしている最中だ。
今年の明成は山﨑だけのチームではなく、3年生を主体に大型で機動力があり、誰でも得点が取れるチームに成長している。それでも佐藤コーチが「最後は一渉に決めてほしい」と大きな期待を寄せるのは、時折受け身なところが出る山﨑に殻を破ってほしいからだ。
山﨑自身も「塁さんはいつも気持ちを出してプレーして、ねじこむ力強さがある『男の中の男』。それは自分にまったくないところなので、自分も気持ちで絶対に引かない選手になります」と決意している。
◆【高校時代】NBAを目指す八村塁が「バスケは楽しいです」と言える原動力
ここに紹介できなかった注目選手も多く、その中には、残念なことに負傷のためコートに立つことができないU16代表の選手が数名いる。一日も早い回復を願うとともに、彼らがコートを走り回る日を楽しみにしたい。また、今年は例年に比べて試合数が少ないため、大会期間中に急成長する選手が台頭することもあるだろう。未来に羽ばたく選手たちをぜひチェックしてほしい。