2020年J2最終節、アビスパ福岡対徳島ヴォルティスの一戦は、図らずも優勝決定戦になった。首位の徳島は敵地で2位の福岡と対戦し、1-0と敗れて勝ち点で並ばれたものの、得失点差で上回って優勝を決めた。 両チームとも、来季はJ1リーグへの挑戦…

 2020年J2最終節、アビスパ福岡対徳島ヴォルティスの一戦は、図らずも優勝決定戦になった。首位の徳島は敵地で2位の福岡と対戦し、1-0と敗れて勝ち点で並ばれたものの、得失点差で上回って優勝を決めた。

 両チームとも、来季はJ1リーグへの挑戦となる。徳島は2014年以来、福岡は2016年以来のJ1復帰だけに、まずは現実的に残留が目標になるだろう。コロナ禍の変則的なリーグ戦とあって、来季は4チームも降格するのだ。

「終わりは始まり」

 徳島の選手は神妙に語っていたが、昇格の祝祭は新たな船出の合図でしかない。はたして、昇格2チームは生き残れるのか。



J2優勝を喜ぶリカルド・ロドリゲス監督と徳島ヴォルティスの選手たち

 最終節の戦いは、両チームの戦い方の縮図だったと言える。

 徳島は後方から丁寧にビルドアップし、相手のマークをはがしながら、ボールゲームで優勢に立とうとした。リカルド・ロドリゲス監督が就任してから4年目となり、人は変わってもチームに浸透させてきた戦い方。それがひとつのガイドになって、各ポジションの選手が成長を示してきた。

 チームの中心はボランチの一角、岩尾憲だろう。立ち位置がよく、ボールの受け方、入れ方が自然なため、周りとの連係が良く、補完関係を作り出せる。彼がボールを触ることで、劣勢をも挽回できるのだ。

 しかし、自陣からボールをつなぎ、運ぶというのは、サッカーで一番リスクを伴う戦い方だ。ボールを繋いでいる間、どうしても守備は後手に回るだけに、奪われた場合はひっくり返され、失点の可能性が高まる。それを回避するには、並外れた技術と連係が必要になるのだ。

「福岡が前から(守備に)来るのはわかっていて、球際の強さだったり、ホームの後押しだったり、厳しい状況のところでも、どうやって相手をはがすのか、という試合でした。そこで早い時間帯にミスから失点してしまったことは、自分たちのスキルや判断がまだまだ足りなかったんだなとは思います」(徳島・岩尾)

 前半16分、はめてくる福岡に対し、徳島はしつこくつなげようとするが、パスをGKまで下げ、再び組み立てる局面で、鈴木徳真が自陣で入れ替わろうとしてボールを重廣卓也に奪われ、そのままショートカウンターをくらう。そして中に入れられたボールを石津大介に蹴り込まれた。

 J1でも、ボールゲームの追求が徳島の命運を握るはずで、J2では最も"サッカー"が濃厚に匂った。しかし、高いレベルを戦うにはプラスアルファが必要か。

 一方の福岡は、長谷部茂利監督が就任1年目で昇格に導いている。4-4-2のベーシックな戦い方で、随所にJ2では突出した選手の強度が散りばめられていた。徳島戦でも、空中戦、球際の激しさ、出足の速さ、推進力などでパワーを発揮し、敵を凌駕。例えば前線のはめ込みから、ボランチの重廣がショートカウンターの切り替えで縦に突っ込む姿は迫力満点だった。

「アグレッシブに戦う。例えば切り替えのところの速さとか、アビスパのスタイルとして確立していきたいと思います。ボールを止める、蹴る、運ぶ、どれも大事ですが、まずはペナルティエリアの狙ったところに蹴る、スピードを持って入っていく、もしくは逆を取るなど、サッカーの本質のところは高めていきたい。まあ、Jリーグで逆を取るプレーができているのは川崎フロンターレくらいで、ほとんどが悩んでいますが、難しいのは承知で挑みたい」(福岡・長谷部監督)

 今シーズンは鍛えられた強度で、相手を圧倒してきた。それが守備の堅牢さにつながった。守りが安定し、試合の時間帯によって戦い方のテンポを上げられるようになって、勝負にかけるタイミングをデザインできつつある。基本が応用に変化し、徳島と並び昇格に相応しいチームだ。

 しかし、J1を戦い抜くには今以上の戦力を準備する必要がある。徳島のように同等の戦力で主導権を握ろうとするチームや格下相手なら、ミスを誘発し、踏み潰すようなサッカーができるが、J1にはそうした相手は少ない。

「(来季に向けて)補強はたくさん必要」

 長谷部監督は笑顔で言って煙にまいたが、それは本音でもあるだろう。レンタルでの在籍選手も少なくなく、引き止めは難航するかもしれない。その行く末は未知数だ。

 優勝した徳島はその点、もっと不透明である。なぜなら、指揮官のリカルド・ロドリゲスは退任が濃厚で、後任にはスペイン人監督の名前が挙がっている。

 ひとつだけ言えるのは、「スペイン人監督」と一緒くたにすべきではないということだ。例えば、ミゲル・アンヘル・ロティーナ(セレッソ大阪、来季は清水エスパルス)は本物だったが、ルイス・カレーラス(元サガン鳥栖)は控えめに言って凡将だった。スタイルもそれぞれ大きく異なる。ロティーナは守備を出発点にするが、リカルド・ロドリゲスはボールありき、だ。

 いずれにせよ、徳島も福岡も楽な戦いにはならない、ということか。「終わりは始まり」なのだ。