プロ野球eスポーツリーグ「eBASEBALLプロリーグ」を語る上で避けて通ることのできない男がいる。 今シーズンはオリックス・バファローズ代表プレイヤーとして活躍する前田恭兵選手だ。 バファローズ代表プレイヤー・前田恭兵選手 ©Nippo…

プロ野球eスポーツリーグ「eBASEBALLプロリーグ」を語る上で避けて通ることのできない男がいる。

今シーズンはオリックス・バファローズ代表プレイヤーとして活躍する前田恭兵選手だ。

バファローズ代表プレイヤー・前田恭兵選手 ©Nippon Professional Baseball ©Konami Digital Entertainment

2017年に開催された全国大会で見事優勝。その翌年に発足した「eBASEBALL プロリーグ」でも活躍が予想されていた。

しかし2018シーズンはまさかの全敗。再起をかけた2019シーズンも未勝利に終わった。それでも再び立ち上がり、2020シーズンのプロテストではトップ通過。eドラフト会議で見事、バファローズから4巡目で指名を受けた。そして迎えた開幕戦でファイターズの岡坂選手を相手に1-0で待望のプロ入り初勝利を挙げた。

誰もが待ち望んだ初勝利を挙げた前田選手に、2017年の全国大会決勝で前田選手に敗れた私、ドラゴンズ代表プレイヤーの菅原が、3年目のシーズンへの臨み方などを聴いた。

 

−まずは念願の初勝利おめでとうございます!

ありがとうございます!

−観ている私たちとしても、だいぶ待ったなという印象です(笑)。

お待たせしました(笑)。

−初年度から未勝利のまま迎えた今シーズンはどのような心境で開幕を迎えましたか。

さすがに今年は勝てるだろうとは思いました。この3年間で自分の実力が衰えたとかこの舞台で通用しないと思ったことはあまりありませんでした。実力が足りないならプロテストも通らないだろうし、プロテストもトップ通過できたので自信にはなっていました。そういう意味で今年はやってやるぞという気持ちで臨みました。

−過去2シーズンとの心境の変化はありましたか。

初戦に関してはこれまで通りです。だから紙一重の試合になるのかなと思いました。

−不安に思ったりはしましたか。

正直めちゃくちゃ不安ではありました。過去2年勝てていなくて、悩んで、苦しい気持ちで過ごしていたので。ただもうこれ以上ヘコむことはないだろうとは思っていました。今後プロリーグが10年、20年と続いていったとして、ルーキーから10連敗して堂々と3年目を迎える人なんてまず出てこないと思います。そういう意味では3年目まで挑んで、ここまで来られたというだけでも俺えらいなと(笑)だから本当に挑戦してよかったと思います。

−初勝利のあとのインタビューでは言葉に詰まっていた様子が印象的でした。

いやもう辛かったです。初年度から関わらせてもらって期待してくださる方が多いのに、結果が出せないと感じるプレッシャーがとても大きかったです。開幕戦では試合中よりも試合が終わった後の方に足の震えが来ました。それくらい溜め込んでいたんだなぁという感覚があったので、あの1勝で解放された気持ちになりました。

開幕戦で初勝利を挙げて安堵の表情を浮かべる前田選手 ©Nippon Professional Baseball ©Konami Digital Entertainment

−昨年ベストプレイヤーに輝いた指宿選手がいるバファローズに指名されましたが、チームの雰囲気や支えなどはいかがでしょうか。

指宿キャプテンに関しては上手いのはもちろんですが、試合に臨むにあたっての準備や相手への研究、試合中の考え方であったりとすごく頭を使ってやっています。それがカルチャーショックを受けるくらいの感覚がありました。藤本選手の状況判断もデータとして頭に入っているので、今のパワプロってこんなに頭を使ってやる時代になったんだなというのをひしひしと感じています。だから、今年このチームで戦えているのは自分にとってためになっています。

−若い選手も増えてきて、われわれ結構なベテランになっていますが…

結構でもないくらいベテランですよね?(笑)

−(笑)若い選手に対しての意識などはありますか。

年齢としてはかなり上の方になってきているので、若いのは純粋に羨ましいなとは思います。こういう年齢になった分、プロとしてこうでなければならないと考えてしまう部分もあるので、若い頃なら大人の事情とか考えないで自分のことだけ考えて試合をできていた部分もあるんじゃないかと思うので、そういう部分での羨ましさってのはちょっとあります。

−プレイの面ではいかがでしょう。

自分の技術が誰よりも秀でているとは思ったことはないですが、経験を武器にしていた部分はありました。指宿選手のように研究と対策を重ねた上で試合に臨んでいる選手も多いので、以前のような考え方だけでは通用しなくなってきています。そういった新しいことを取り入れた上で、技術的な面も維持していかなければいけないという部分で、「eBASEBALL プロリーグ」はますますレベルが高くなってきたなと感じています。

−今シーズン、バファローズに指名されて良かったと思う部分はありますか。

スワローズにいた初年度は周りも手探りな状態で、ライオンズにいた昨年はチームカラー的にそんなに難しく考えずガンガンいこうぜみたいなところはありました。そして今シーズン、とても頭を使う選手に囲まれて試合ができているというのは自分にもすごくプラスになっていると思います。

©Nippon Professional Baseball ©Konami Digital Entertainment

−セ・パe交流戦では、2017年の全国大会以来の私との対戦になりました。個人的にはかなり楽しみですが、ロースターを見た時はどんな気持ちでしたか。

変な意味では捉えて欲しくはないですけど、ただフラットに「あぁ菅原選手か〜」という感じです(笑)。

何も思わなかったわけではなくて、誰が来てもそういう感覚でいこうと思っています。これまで結果が出ていない中で試合への臨み方をどうしていこうと考え、メンタルの本やプロスポーツ競技に関わっている方などの本を読みました。その中で、緊張は横ばいの状態から急に跳ね上がるものではなくて、1日の流れの中でゆるやかに上っていって例えば試合直前になってぐっと上がるようなものと見て、自分の中で腑に落ちました。過去気負い過ぎていた部分はあったので、何があっても日常的にフラットに行こうと。そういう意味で意識はしないで、試合に向かう集中力だけ上げていきました。

−かなり参考になりました。

勝てていない時のメンタルってすごくしんどいものがあって、どうしても考えてしまいます。続けて試合をするわけでもない、すぐに取り返せるものでもないという中で身体に不調をきたす部分も必ずあると思うので、試合に臨むにあたってそういうものは日常的に排除していきたいポイントだと思います。過去2年失敗してきたことでつけられた知恵というか試合に対してのルーティーンみたいなところではあるので、結果としてそれがいい方向に働くのであれば昨年までの負けは無駄ではなかったと思います。

−今後の目標を教えてください。

チームの雰囲気もすごく良くて、自分の感覚も悪くないのでこのままでいけば自然と優勝は見えてくるのかなと思いますので、意識し過ぎずに勝っていきたいと思います。

 

3年目のシーズンでようやくプロプレイヤーとしての一歩を踏み出した前田選手。彼の一言一言は今後悩める選手の道しるべになるように感じた。

そんな前田選手と私のマッチアップとなったセ・パe交流戦の試合の模様は12月25日(金)に配信予定だ。お見逃しなく。

(聞き手・文/eBASEBALLプロプレイヤー・菅原翔太)