第96回全国高校ラグビー大会で、大阪の常翔学園高が日本一となった第92回大会以来の白星を挙げた。 12月30日、大阪・東大阪市花園ラグビー場の第3グラウンド。シード校として挑んだ朝9時キックオフの2回戦で、強力なBK陣を擁する佐賀工高に3…

 第96回全国高校ラグビー大会で、大阪の常翔学園高が日本一となった第92回大会以来の白星を挙げた。

 12月30日、大阪・東大阪市花園ラグビー場の第3グラウンド。シード校として挑んだ朝9時キックオフの2回戦で、強力なBK陣を擁する佐賀工高に31-0と快勝した。

 前回大会でもシード校として第3グラウンドの2回戦に挑んだが、天理高に3-5と屈していた。過去の歴史からも「第3グラウンドの朝9時に弱い」というジンクスがあった同校にあって、野上友一監督はただただ安堵していた。

「(対戦カードを予想して)佐賀工高に照準を合わせていました。それで(大会前の練習でも選手を)追い込めもしました」

 序盤は一進一退。佐賀工はFW陣が肉弾戦でしぶとかった。抜け出した常翔学園高のランナーが孤立するや、ターンオーバーを喫した。

 勝者が道を切り開いたのは、密集脇からだ。佐賀工高の幅広な防御網が鋭い出足で前へ出るのに対し、そのラインの目が届きづらい接点周辺を常翔学園高のFW陣が突く。じり、じり、とゲインラインを割って佐賀工高の統制を乱すと、新たに空いたスペースへ一気に球を運ぶ。前半23分の先制トライのおぜん立てをしたのは、そんなチーム全体の判断力かもしれなかった。

「思ったより地面がスリッピーで、ボールも濡れていた。外へ振るよりも近場、近場で(身体を)当てていこうとしました。相手は気にせず、自分たちのラグビーをしようということだったので」

 こう語るのは、LOのファイアラガ望サムエル。先制時にも相手をかわしながら進むランニングスキルを披露し、守ってもランナーをつかみ上げるチョークタックルで相手の流れを断った。「鬼門」とされる2回戦を抜け出し、破顔した。

「取りあえず安心というか、次もできるという嬉しさがあります。どうなるやろうと思っていたのですが、『FWで行くで』という気持ち。FWから(試合を)作って行けた」

 野球少年だった。趣味でラグビーを始めたサモア人の父の影響で、高校から楕円球に触れようと思って強豪の常翔学園高入りした。

 全国有数の強豪をキャリアスタートの場に選んだのは、もともと友だちだったNO8の安田司に誘われての決断。ふたを開けてみたら、周りについて行くので大変だった。それでも、「周りの仲間のサポートがありました。いろいろと教えてくれた」と笑顔である。身長175センチ、体重95キロというたくましいボディを駆使し、いまでは高校日本代表候補に名を連ねるようになった。

「皆とできるということを感謝して、緊張というよりも楽しみました」

 1月1日の3回戦では、第1グラウンドで日本航空高石川と激突。向こうにはCTBのシオサイア・フィフィタらトンガ人留学生がいるだけに、「望」というミドルネームを持つ通称「サムエル」は「同じアイランダー系の相手。対抗したいと思います」。競技転向3年目で、クラブ史上6回目の日本一へ挑める。それが楽しくて仕方がない。(文:向 風見也)