大阪・東大阪市花園ラグビー場でおこなわれている全国高校大会にあって、長崎北陽台高は12月27日の1回戦で札幌山の手高を下した。30日の2回戦でも力強く、創造的だった。

 後半3分には敵陣ゴール前で得たペナルティからトリッキーなパス回しを繰り出し、背負っていたビハインドを7-12と縮めた。続く15分、自陣ゴール前でのスクラムで得たボールを、アウトサイドCTBの山口莉輝に渡した。定石通りに司令塔へ託すのではなく、身長180センチ、体重95キロの好ランナーの力をダイレクトに発揮した。陣地を一気に挽回した。
 
 何より、この日は肉弾戦で魅せた。FW陣はラックサイドの突破や度重なるモール形成で、ゲインラインをじりじりと破る。対するシード校の深谷高は、防戦一方とされる時間は長かった。前半を12-0とリードしたものの、20分までは無得点だった。

 しかし、勝ったのは埼玉・深谷高だった。時に1対1で差し込まれても、タックルした選手がすぐに起き上がって守備網を形成。声を掛け合い、スペースを埋める。我慢して、我慢して、ミスや反則を誘った。

 タックルする選手も、ただぶつかるのではなくひと工夫を凝らす。足を相手方向へ踏み込みながら、ボールへ手をかける。サポートする味方が相手の援護を引きはがしやすいよう、ランナーを自陣側へ引きずり倒す…。

 攻めては高校日本代表候補のSHの新井駿主将が、サイドアタックと防御網の裏へのキックを織り交ぜラインを前に押し出す。深谷高は結局、後半28分にだめ押しトライを決め、19-7で勝利。2017年1月1日の3回戦進出を決めた。

 どうやら、夏場までは守備の連係に課題を抱えていたようだ。それだけに、好ジャッカルでノット・リリース・ザ・ボールを奪ったFLの古田勇作はこう満足する。

「夏まではあまり前を観られていなくて、ディフェンスの左右のバランスが取れていなかった。遠征を重ねていくなかで修正していった。きょうもまだ完璧ではないですけど、ダブルタックルで相手を前に行かせなかった。そこはよかったと思います」

 試合後、最も多くのメディアに囲まれた選手の1人が、山沢京平副将だった。2年時から高校日本代表候補になったFBは、この日も持ち前のボディバランスの良さで人垣をすり抜ける。前半20分のWTB井下英司による先制トライも、敵陣ゴール前左での山沢のオフロードパス(タックルされながらボールをつなぐプレー)がきっかけだった。当の本人いわく、「WTBの奴にスピードがあるので、相手の外側のディフェンスを引きつけたかった」とのことだ。

 兄の拓也が同じ深谷高出身で、現在は筑波大4年ながらパナソニックでプレー。そんな経歴と相まって、きょうもひたすら称賛されるような質問を浴びていた。しかし当の本人は、「自分のプレーは0点に近い。全然、周りを見られていなかった。判断と精度が全然」。兄と一番、似ているのは、自分のプレーに酔わぬこんな資質かもしれなかった。

 それでもチームの歩みには、確かな手応えを感じている。あるチームスタッフが「この代(3年生)はよくミーティングをする。納得いくまで話し合う」と感心するなか、山沢副将も「わからないことをあやふやにしていたら、強い相手には勝てない(と思っていた)」。接戦を勝ち切る背景を示唆する。

 長崎北陽台高戦後はただただ「判断」と「精度」を反省していたが、このままで終わるつもりはない。

 1月1日の次戦では、前年度王者の大阪・東海大仰星高とぶつかる。チーム初のベスト8を目指す山沢副将は、ライバルへの敬意を保ったうえでこう意気込む。

「全国優勝したのは去年のチーム。日本一とかそういうのはまったく気にしないで、まず自分たちのラグビーを貫く。勝ちに行く、ということです」

 強豪を相手にする際の「雰囲気」とやらには、決して呑まれない。(文:向 風見也)