チームメイトが語る中村憲剛(4)小林悠中村憲剛が引退を発表し、現役最後の瞬間が迫ってきた。スポルティーバでは、川崎フロン…
チームメイトが語る中村憲剛
(4)小林悠
中村憲剛が引退を発表し、現役最後の瞬間が迫ってきた。スポルティーバでは、川崎フロンターレのチームメイトたちにインタビュー。常に先頭に立ってチームを引っ張ってきた中村との思い出や、彼に対する思いを語ってもらった。
「キャプテンだからといって気負うことなく、今までどおり点を取ることで引っ張っていけばいいんだよ。オレのマネをする必要はないし、自分なりのキャプテン像を築けばいい。でも、それを今のあいつに言ったところで、視野も狭くなっているから、聞く耳を持たないと思うんですよね。だから、自分で気づくまで待つしかない。どうしようもなく苦しんでいたら言うけど、今はまだ、その時じゃないかな」

阿吽の呼吸で、多くのゴールシーンをつくり出してきた、中村と小林
その後、小林は自ら気づくと、文字どおり点を取ることでチームを牽引。23得点を挙げて得点王に輝くと、チームをJ1初優勝へと導いた。当時の中村とのやり取りを、今になって小林に明かすと「見透かされていたんですね」と、しみじみとうなずいた。
「僕だったら、すぐに言っちゃうと思うけど、たしかに憲剛さんは、自分で考えさせるところがありますよね」
「家族に近い」と表現した小林の言葉が妙に腑に落ちた。言えば簡単だが、自ら考えさせて成長を促す。突き放すのではなく、中村はずっと見守っていたのだ。
「ホント、お兄ちゃんみたいですよね(笑)。距離が近くなってからは、サッカーのことは全部、憲剛さんに話してきたと思います。怒られる時もあれば、褒められる時もありましたね」
来シーズンからは兄のような存在がピッチからいなくなる。それを問うと、小林はこう返事をした。
「憲剛さんの代わりなんて100%無理ですからね。自分は、今までやってきたことしかできないと思います。憲剛さんがいなくなるのは正直大きいですけど、僕だけでなく、(谷口)彰悟、ノボリ(登里享平)、(大島)僚太と、在籍年数の長い選手たちで分担していければいい」
兄には弟がしっかりと成長していると伝えたくなった。もう、小林が自分を見失うことはないだろう。
すると「あっ」と言って小林はつづけた。
「僕がゴールを決めたあとに、憲剛さんが寄ってきて、頭をバシバシ叩かれるのが好きだったんですよね」
兄と弟、出し手と受け手。11年の月日をかけて紡がれてきた阿吽の呼吸がある。
中村の等々力での最終のリーグ戦となった、12月16日のJ1第33節浦和戦。61分に、これまでの絆を物語るかのように、中村のノールックパスから小林がゴールを決めてみせた。
だから、やっぱり最後も--そんな場面を想像してしまうのは、自分だけではないはずだ。