今季J1では、川崎フロンターレが圧倒的な強さを見せつけて、早々にリーグ優勝を決めた。そして、そのサッカーは見ていても「…
今季J1では、川崎フロンターレが圧倒的な強さを見せつけて、早々にリーグ優勝を決めた。そして、そのサッカーは見ていても「楽しい」と評判だった。プロのクラブとして、まさに今季の川崎は群を抜く存在だったと言えるが、成績は別として、川崎の他にも「いいサッカー」「面白いサッカー」を見せてくれたチームはあったのだろうか。今季Jリーグをくまなく観戦した識者たちに、それぞれの見解を聞いた--。
設問:今季J1で、川崎フロンターレ以外で面白いチームはあったか?
回答:いいえ。
杉山茂樹(スポーツライター)

浦和レッズの両ウイングを生かしたサッカーも悪くなかったが...
「面白い」の定義にもよるが、特質すべきサッカーをしたチームは他になかった。今季は川崎フロンターレに終始した1年だった。
ただ、「面白い」とは言えないが、「悪くない」サッカーをしたチームはある。
セレッソ大阪はその筆頭だ。4-4-2の布陣をベースにした手堅いサッカーである。ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督のサッカーは、スペイン時代から「守備的で地味だ」と言われている。
だが、攻撃的サッカーがまだ完全に根付いていない日本にあっては、そこまで偏った感はない。ボールを奪う位置は低いほうではない。「攻撃的」と言ってもいいほどだ。
スタイルが出来上がっているので大崩れしない--監督の力を感じずにはいられないサッカーである。
マッシモ・フィッカデンティ監督率いる名古屋グランパスのサッカーにも同じことが言える。特段、「面白い」とは言えないが、歓迎すべきスタイルに入る。マテウス、前田直輝の両ウイングを使ったサッカーをベースに、年間を通して安定感のあるサッカーをした。
リーグ戦10位に終わった浦和レッズをどう評価するか難しいところだが、従来のサッカーより、個人的には、現在のほうが好みだ。汰木康也、マルティノスの両ウイングを生かしたサッカーである。
高い位置からのプレスを実現しようとすれば、両翼の高い位置にウイングを配置するサッカーが得策であることは自明の理。ドリブルの得意なウインガーが日本で急増している背景を加味すれば、目指すは昨季の横浜F・マリノス、今季の川崎的なサッカーになる。
この流れに、日本の多くの指導者が感化されてほしいものである。
設問:今季J1で、川崎フロンターレ以外で面白いチームはあったか?
回答:はい。
浅田真樹(スポーツライター)

昨季よりレベルアップした試合を、いくつか見せていた横浜F・マリノス
川崎フロンターレの強さが際立った今季J1だが、内容的に見れば、現実的で手堅い(要するに退屈な)サッカーではなく、自らアクションを起こすスタイルを志向するチームは多かった。実際、川崎に数少ない土をつけた大分トリニータやコンサドーレ札幌は、旧態依然とした弱者の論理で挑んだわけではない。
それはJ2降格なしの特別ルールがあったからできたことかもしれないし、だからこそ、川崎の独走を許す結果になったのかもしれない。だが、異例の超過密日程にもかかわらず、今季がそれなりに見応えのあるものとなったひとつの要因ではなかっただろうか。
結果のうえでは期待外れに終わった感のある昨季王者の横浜F・マリノスも、順位から想像するような内容のサッカーをしてはいない。
確かにシーズン途中、昨季の強さが見る影もないほど酷い試合もあるにはあったが、その一方で、いくつかの試合では、昨季からさらにレベルアップした内容を見せている。
たとえば、第20節のヴィッセル神戸戦や、ルヴァンカップ準決勝の柏レイソル戦。いずれも、ちょっとしたボタンのかけ違えで敗れた試合ではあるが、相手をアタッキングサードに閉じ込め、多彩な崩しのパターンで何度もサイドを突破していく連続攻撃は、昨季以上の迫力があった。
もちろん、結果が出なかった以上、問題を抱えていたことも事実だが、昨季J1を席巻した現代的で上質なサッカーは、決して頭打ちになったわけではなかったと思う。
設問:今季J1で、川崎フロンターレ以外で面白いチームはあったか?
回答:はい。
小宮良之(スポーツライター)

ロティーナ監督のもと、サッカーの正当性を見せたセレッソ大阪
ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が率いたセレッソ大阪は、チームとして"サッカーの正当性"を見せたと言えるだろう。
「守りの安定が、良い攻撃を生み出す」
その定石を守って堅守を確立し、各選手の成長・進化を促したのだ。
右アタッカーを任された坂元達裕は、今シーズンがJ1初挑戦とは思えないプレーだった。いるべき場所、やるべき仕事が単純化されているからだろう。右サイドで、存分に攻撃を創り出した。左利きだが、右でも左でも抜け出せるため、相手を幻惑させ、強力な攻め手となった。
また、奥埜博亮はFWとボランチを兼務。どちらでプレーしても、質は落ちなかった。戦術的プレーヤーとして、"ロティーナの申し子"と言えるだろう。
何よりシーズン前半戦、首位を突っ走る川崎フロンターレに唯一、食らいついていたのはセレッソだった。第11節、直接対決ではアウエーで2-5と敗れたものの、堂々と渡り合っている。その後も、リーグ戦は6連勝で地力を示していたのだ。
結局、選手層の差が出ることになって首位争いから脱落した。
「守備は堅いが、つまらない」
そんな声も聞いたし、結果的にロティーナは退任になった。
しかし繰り返すが、"ロティーナ・セレッソ"は正当性を示した。堅固な守備で、最後までAFCチャンピオンズリーグ出場圏内を競った。若いセンターバックの瀬古歩夢はマテイ・ヨニッチと組み、新人王にも値する守りを見せた。キム・ジンヒョンはスーパーセーブだけでなく、足元の技術も向上させ、GKとして総合力を高めている。
ロティーナなくして、その健闘はあり得なかった。
"川崎だけでなかったシーズン"に、1票を入れたい。