侍ジャパンでも欠かせない戦力となり、米国のメディアでも「ショウヘイ・オオタニ」の名前が頻繁に報じられるようになった22歳。2016年はどのような軌跡を描いたのか。数々の「史上初」を打ち立てたその歩みを10大ニュースとともに振り返ってみたい。…

侍ジャパンでも欠かせない戦力となり、米国のメディアでも「ショウヘイ・オオタニ」の名前が頻繁に報じられるようになった22歳。2016年はどのような軌跡を描いたのか。数々の「史上初」を打ち立てたその歩みを10大ニュースとともに振り返ってみたい。

■投打で進化、二刀流の実力証明した22歳

 今季、投打で飛躍を果たした日本ハムの大谷翔平投手。負傷もあり、規定投球回には届かなかったが、打撃面で大きな飛躍を見せ、「リアル二刀流」が大きな話題を呼んだ。高卒4年目の今季は投手として21試合に登板し、10勝4敗1ホールド、140回、174奪三振、防御率1.86。打撃でも104試合で323打数104安打、打率.322、22本塁打、67打点、7盗塁の好成績をマーク。圧巻の存在感でチームのリーグ優勝、日本一に貢献した。

 侍ジャパンでも欠かせない戦力となり、米国のメディアでも「ショウヘイ・オオタニ」の名前が頻繁に報じられるようになった22歳。2016年はどのような軌跡を描いたのか。数々の「史上初」を打ち立てたその歩みを10大ニュースとともに振り返ってみたい。

〇アリゾナ“品評会”で関係者絶賛

 日本ハムが米アリゾナ州ピオリアで実施した春季キャンプは、まさに“大谷品評会”となった。初登板初先発となった韓国ロッテ戦ではメジャー全球団が視察する中、2回4K、1安打無失点。打撃でも実戦4試合で打率5割(12打数6安打)、1打点をマーク。投手専念を推す声が多い中、バットでもメジャー関係者から評価された。キャンプを視察したパドレスのマーク・ロレッタ氏(ベースボールオペレーション特別補佐)は「すごいパワー。あれだけ若いうちにあれほどのパワーとバットスピードを兼ね備えているのは本当に珍しいこと」、「もちろん大谷の才能あふれる打撃とパワーは素晴らしい。投手だけに専念させるのはもったいないと思う」と絶賛した。

〇史上初、投手として衝撃の初球先頭打者弾

 7月3日のソフトバンク戦で「1番・投手」で先発。1回表、相手先発・中田が初球で投じたスライダーをフルスイングし、右中間スタンドへ叩き込んだ。投げても最速161キロの直球を武器に、8回120球を投げて10奪三振2四球、5安打無失点。チームを2-0の勝利に導いた。この時点で首位だったソフトバンクを3タテにする勝利で、日本ハムは9年ぶり10連勝。栗山監督も衝撃の一発を「完全敵地のアウェーの中でもやっぱりプロ野球のロマンというか、ファンの人たちが度肝を抜かれるというか、そういう空気感になったことはこちらも感じられた。それでいいし、とても意味のある本塁打だったと思います」と称賛した。

■165キロを3球記録、151キロのフォーク、145キロのスライダー…

〇オールスターMVP&本塁打ダービー優勝

「マツダオールスター 2016」第2戦で「5番・DH」で先発出場。自身初のホームランを含む4打数3安打2打点2得点と活躍し、MVPに選出された。また第1戦のホームランダービーでは初出場初優勝。準決勝でヤクルト山田哲人を6-5で退けると、ソフトバンク柳田悠岐との決勝ではあと1アウトで敗退が決まるところまで追い込まれながら、2連発して3-2と競り勝った。投手登録ながらも、「打」で存在感を見せつけた。

〇大一番で圧巻投球&胴上げ投手に

 9月28日、敵地での西武戦で先発し、1安打完封。1-0の勝利を演出し、2012年以来4年ぶり7度目(前身の東映時代を含む)のリーグ優勝に導いた。大一番で今季自身最多15奪三振をマーク。自身3年連続の2桁勝利となる10勝目にも到達した。この日は4回まで無安打5奪三振のパーフェクトピッチング。許したヒットは5回の1本だけで二塁を踏ませない内容だった。

〇「リアル二刀流」解禁で負けなし

 5月29日の楽天戦で「6番・投手」、いわゆる「リアル二刀流」を解禁すると、右手中指のまめを潰して登板を回避するまで破竹の7連勝をマークした。今季の投手成績は21試合登板、10勝4敗、防御率1.86。その中で投手に専念した14試合は3勝4敗、防御率2.83だったが、投打で出場した試合は7戦7勝、防御率0.33。7勝のうち2勝は対ソフトバンク戦で、計16イニングで1失点のみ(自責はなし)に抑えた。打撃でも打率.381(21打数8安打)、1本塁打、4打点。圧倒的なパフォーマンスを見せた。

〇初の「DH解除」から日本最速165キロマーク

 ソフトバンクとのCSファイナルステージ第5戦(札幌ドーム)で「3番・DH」でスタメン出場。7-4と3点リードの9回に自身初めて指名打者を解除してマウンドに上がった。ここで右腕は圧巻の3人斬りを披露し、プロ初セーブをマーク。その中で自身が持つ日本最速を更新する165キロを記録した。打者3人に対して15球を投じ、ストレート8球は全て160キロ超え。そのうち、3球で日本記録となる165キロを記録し、151キロのフォーク、145キロのスライダーも披露した。

■米国内でも話題となった大谷、米記者「最高の才能を秘めている」

〇ドーム天井二塁打

 11月に行われた侍ジャパンの強化試合で衝撃の一打を放った。東京ドームで行われた強化試合第4戦オランダ戦で6点を追う7回先頭で代打で登場。強烈な大飛球はライト方向に飛び、天井の隙間へと吸い込まれた。打球が落ちてこない状況に会場は騒然。大谷はダイヤモンドを一周してホームインしたが、最終的には二塁打の判定となった。この一打は米複数メディアも動画付きで紹介。CBSスポーツ電子版は「ショウヘイ・オオタニの伝説は増え続ける」などとレポートした。

〇史上初Wベストナイン&MVP

 今季のベストナインでは投手部門、指名打者部門で史上初めてダブル受賞を果たした。これまで禁止となっていた投手と野手、投手と指名打者の重複投票を認められるようベストナインの投票規定が改定されていたことで実現した。またパ・リーグのシーズンMVPも初受賞。規定投球回、規定打席にこそ到達しなかったものの、「二刀流」を非常に高いレベルで実現できることを証明してみせた。

〇来季以降のメジャー移籍容認

 契約更改では2億円から7000万円増の2億7000万円(推定)で一発サイン。その席で球団側から来オフ以降のポスティングによるメジャー移籍を容認された。「球団の方から、『自分の意思を尊重してくれる』と話をしていただきました。僕の意思を全面的に応援してくれると」と大谷。島田代表は「実績も大きな要因。成長は想像以上のスピード。彼が1番いい時に行かせてあげるべき」と話した。

〇米国で加熱報道

 2016年は米国やアジア、中南米など世界でも大谷の名が多く報じられた年となった。投打での活躍により、「10ツールプレイヤー」「3億ドル(約350億円)を手にするかもしれない二刀流のベーブ・ルース」など多くの称賛が寄せられ、オフには「ニューヨーク・ポスト」の名物コラムニスト、ジョエル・シャーマン記者がメジャーリーグ専門チャンネル「MLBネットワーク」で「彼は一生に一度お目にかかれるかという、その世代で最高の才能を秘めている。スポーツ界の一般的な話として、素晴らしいアスリートがいると目が離せなくなるはずだ。スカウトや球団関係者が大谷を見て語るのは、まさにこれなんだ。あるスカウトは私にこう言ったよ。『彼を見てみろよ、まるでハリウッドだ。目が離せないだろ』」とのコメントを残した。その後、メジャーの新労使協定により大谷の早期メジャー移籍に制約がかかる可能性が持ち上がると、米国の記者やメディアはこぞって速報。解説記事も掲載された。