今年の中央競馬も残すところあと2週。今週は2歳GIの朝日杯フューチュリティS(12月20日/阪神・芝1600m)が行な…

 今年の中央競馬も残すところあと2週。今週は2歳GIの朝日杯フューチュリティS(12月20日/阪神・芝1600m)が行なわれる。

 過去10年の1番人気の成績は、4勝、2着2回、3着1回、着外3回。比較的安定した結果を残しているが、3連単では好配当が続出。10万円超えの高配当も3度出ており、昨年も9万円を超える高配当となった。伏兵の台頭も目立ち、波乱含みのレースと言える。

 そして今年は、1番人気と目されるレッドベルオーブ(牡2歳)の評価が高く、デイリー馬三郎の吉田順一記者はこう語る。

「舞台がタフになれば、末脚が鈍る可能性はありますが、当日の天気が穏やかで先週同様に速い時計が出る馬場なら、2戦連続レコード勝ちの、レッドベルオーブの牙城は揺るがないでしょう」

 となると、例年どおり"ヒモ穴狙い"が好配当への近道となりそう。その候補を見つけるためのポイントは「最後の直線にある」と吉田記者は言う。

「速い時計やラップが記録された先週の馬場と大きく変わることはないと思いますが、今週は気温がグッと下がり、最後の直線では"六甲おろし(直線向かい風)"の影響を多分に受けることになります。それにも怯まず、(直線の坂を)力強く駆け上がってこられる馬かどうかの見極めが必要でしょう」



新潟2歳Sを制して、朝日杯FSに挑むショックアクション

 そこで、吉田記者はGIII新潟2歳S(8月30日/新潟・芝1600m)を勝ったショックアクション(牡2歳)に注目する。

「タフな条件になれば、パフォーマンスを上げてくるのが同馬。現在の状態もよく、1週前の段階では出走を予定していたGIIデイリー杯2歳S(11月14日/阪神・芝1600m)を使えなかった影響を感じさせる重めのシルエットでしたが、その後の意欲的なCW追いでグーンとよくなった印象があります。

 今週の追い切りも迫力満点。前向きさがあって、およそ4カ月の休み明けでも能力を出せる仕上がりです」

 過去2勝は左回りの新潟コース。舞台が右回りの阪神コースに替わっての不安はないのだろうか。

「1週前のコース追いでも、手前をスムーズに変えて、どちらの手前になっても走りはダイナミック。大きくて、広いコースであれば、右でも、左でも、回りは問題ありません。

 スピード持久力とパワーが生きる展開になれば、確実に上位争いに加わってきそうです。また、今回は前付けで結果が出ている馬が多く、適度に上がりがかかりそうなのも、追い風になるでしょう」

 吉田記者はもう1頭、超人気薄の馬を推奨する。

「未勝利を勝ち上がったばかりで、果敢にGIに挑戦するテーオーダヴィンチ(牡2歳)です。ダイワメジャー産駒ですが、胴長+脚長でスラッとしたシルエット。道中の折り合いに不安はなく、過去2戦ともに好位から上手な立ち回りを見せました。

 ストライドが伸びる走法ながらも、馬込みを苦にせず、長い直線でしっかりとした脚を使えるタイプ。性別や年齢は異なりますが、大まかには昨年の"2歳女王"レシステンシアと同類と見ていいと思います。

 キャリア2戦で持ち時計は大きく見劣りますが、これは流れによるものが大きく、速い馬が引っ張ってくれる展開なら、大幅に時計を短縮できるはず。タフな設定で上がりがかかれば、この馬のポテンシャルも侮れませんよ」

 一方、日刊スポーツの松田直樹記者は、2歳の阪神・芝マイル戦については"持論"があるという。

「東京の芝マイル戦で好走した馬を狙え、です。阪神と東京では、左右の回りに違いはあるものの、直線が長く、能力がストレートに反映されやすい舞台、という点で共通しています。

 現に、朝日杯FSが阪神に移設された2014年以降と、同じ阪神・芝マイルで行なわれるGI阪神ジュベナイルフィリーズの同時期(2014年~2020年)とを合わせた計13回のレースで、東京・芝マイルの前走で連対した馬が、先週のソダシを含めて7勝もしているんです」

 そして松田記者は、前走で東京・芝マイルのGIIIサウジアラビアロイヤルC(10月10日)を勝ったステラヴェローチェ(牡2歳)を推す。

「前走は、不良馬場で大外一気の末脚を炸裂させて快勝。やや重だった新馬戦(7月5日/阪神・芝1600m)での逃げ切り勝ちとは、対照的な競馬を見せました。

 当初、バゴ産駒の道悪適性の高さが功を奏したとも考えましたが、鞍上の横山典弘騎手がサウジアラビアロイヤルCのレース後、『跳びがきれいなので、(道悪が)プラスに働いたとは思わない。能力が違いました』と絶賛。ならば、良馬場見込みの阪神でも期待せずにはいられません。

 伯父のゴスホークケンは2007年の朝日杯の勝ち馬。血統的にも朝日杯FS向きと見ています。2週前の追い切りでは、調教駆けする古馬オープンのシュウジに追走して先着するなど、動きにも迫力が出ています。一発あってもおかしくありません」

 松田記者ももう1頭、気になる馬がいるという。

「ドゥラモンド(牡2歳)です。近年の朝日杯FSは"無敗馬"がトレンドで、2017年のダノンプレミアム、2018年のアドマイヤマーズ、2019年のサリオスと、デビューから負けなしの馬が3年連続勝利中。過去10年を振り返っても、その3頭を含めて計6頭が無敗で戴冠を遂げています。

 そのうち、2011年に勝ったアルフレードと、2013年の勝ち馬アジアエクスプレスは、ドゥラモンドと同じ手塚貴久厩舎の所属馬。ドゥラモンドはここまで、発馬に手こずるレースが続いていますが、勝ち方を知っている陣営の仕上げに期待しています。

 今回は約3カ月ぶりのレースになりますが、手塚調教師によれば、『前走の1勝クラス・アスター賞(9月12日/中山・芝1600m)の時よりパワーアップして、馬自身もしっかりレベルアップしている。良馬場なら、もっと切れる感じ。ゲート練習も繰り返している。出るのは遅いけど、駐立はだいぶよくなった』とのこと。かなりの良化が見込めます。

 新馬戦(7月11日/福島・芝1800m)では、息の長い末脚を見せて勝利。アスター賞では、上質の瞬発力を発揮しました。これまでの2戦で奥の深さを見せているので、GIでも楽しみです」

 勢力図が固まっていない2歳牡馬戦線。それはつまり、どの馬にも勝つチャンスがあるということ。ここに挙げた4頭が、そのチャンスをつかんでも不思議ではない。