毎年12月、愛媛・松山に全国の大学野球リーグから推薦を受けた選手たちが集結し、翌年の「侍ジャパン大学日本代表」の選考合…

 毎年12月、愛媛・松山に全国の大学野球リーグから推薦を受けた選手たちが集結し、翌年の「侍ジャパン大学日本代表」の選考合宿が行なわれるのが恒例になっている。

 大学球界の逸材たちが数多く集まり、しかも実戦形式の真剣勝負が見られる。普段なかなか見られない選手たちを間近で見られるとあって、毎年この日を楽しみにしている。今年はコロナ禍の影響により中止になってしまったが、ここ数年、この合宿が1年の締めくくりとなっていた。



ドラフト3位でロッテに指名された国学院大の小川龍成

 とくに印象に残っているのが、昨年の合宿だ。参加した選手は49人。そのなかから、この秋のドラフトで指名されたのが22人(育成ドラフトを含む)。また当時、1、2年生で参加していた選手たちも、そのほとんどが来年以降のドラフト有力選手だから、それはすごい選手たちが集まっていた。

 なかでもすごかったのが内野陣だ。シートノックのメンバーは豪華絢爛だった。

 近畿大の佐藤輝明(阪神1位)と横浜桐蔭大の渡部健人(西武1位)がサードを守り、中央大の牧秀悟(DeNA2位)がセカンド。そしてショートには東北福祉大の元山飛優(ヤクルト4位)、国学院大の小川龍成(ロッテ3位)、九州産業大の児玉亮涼(大阪ガス)と"名手"が揃った。

 スピードと華やかさなら元山、素早さと正確さなら児玉......そして、それらのすべてを兼ね備え、さらに"風格"を漂わせていたのが小川だった。

 アマチュアの逸材のなかに、プロの一軍で4、5年もショートを守っている選手がひとり混じっているような感じだった。捕球してから送球までの一連の動きのなかで、頭の位置がまったく変わらないから目線がブレない。

 合宿が行なわれていた坊ちゃんスタジアムは土のグラウンドで、イレギュラーも普通に起こるが、その打球にも難なく反応するからファインプレーに見えない。どこに打球が来るのかあらかじめわかっているようなグラブ捌きは、プロでもそう見られるものではない。見ていてこれほど安心感のあるショートはそういるものではない。

 シートバッティング中にこんなことがあった。ショートを守る小川の"相方"であるセカンドの選手が次々に代わる。たとえば、走者一塁でショートに打球が飛び、二塁ベースに入るセカンドが誰であろうともドンピシャのタイミングで送球してくる。

 そうかと思えば、左中間最深部に飛んだ打球をレフトの定位置あたりまで追走し、外野手からの送球を受けるなり、振り向きざまに本塁へ送球。その距離はおよそ80メートル近くあったが、キャッチャーへ見事なワンバウンド送球。

 この時、打球を追う小川が一瞬だけランナーの様子を確認したのは見えた。しかし、ホームの位置までは確認していなかったはずだ。それでも、あれだけの距離をストライク返球できるというのは、グラウンドの大きさ、ベースまでの距離を把握しているからなのだろう。こういうプレーができるのは、天性の才能を持った選手だ。プロのショートをこなせる選手というのは、みんなこうした天性の才能を持っている。

 そんな小川に対し、「たしかに守りはプロ級だけど、バッティングがねぇ......」という声も聞こえてくるが、正直、心配していない。

 滑らかなスイング軌道、全身のバネと抜群のボディバランス。真ん中より少し外寄りの球をとらえ、右中間をライナーで破る打球などは、思わず見とれるほどだ。ただ、スイングがやや遠回りしているのがなんとももったいない。だから、真ん中より外の球は気持ちよく弾き返せても、インコースに苦しんだ。

 愛知学院大時代の源田壮亮(西武)が、ちょうどこんな感じのスイングをしていた。源田はその後、トヨタ自動車、西武でインサイドアウトのバッティングに徹し、今の地位を築き上げた。要は、明確な到達イメージを持って練習できるかどうかだろう。

 プロに進めば、藤岡裕大を筆頭に平沢大河、西巻賢二、三木亮など、アマチュア時代に"名手"と称された選手たちとポジションを競うことになる。はたして、大学球界屈指の名手と呼ばれた小川がロッテ"不動の遊撃手"へと成長を遂げることができるのか。その可能性は大いにあると見ている。