サッカー名将列伝第27回 カルロ・アンチェロッティ革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてき…

サッカー名将列伝
第27回 カルロ・アンチェロッティ

革新的な戦術や魅力的なサッカー、無類の勝負強さで、見る者を熱くさせてきた、サッカー界の名将の仕事を紹介する。今回は、現在エバートンの監督を務めているカルロ・アンチェロッティ。数々のビッグクラブを渡り歩き、選手を尊重し、生かすスタイルでタイトルを獲得しつづけてきた。実績、経験抜群のその職人芸を明らかにする。

 ところが、ユベントスでは2シーズンつづけて2位。「シルバーコレクター」と揶揄されている。だが、アンチェロッティは自らのスタイルに確信を持ったのだろう。その後ミランの監督に就任すると、やがてピルロを4バックの前に置いて深い位置からゲームをつくらせる役割を与えて開花させた。ミランでは念願のスクデットだけでなく、チャンピオンズリーグ(CL)優勝2回の快挙を達成し、8年間の長期政権を築いている。

<選手を生かす職人芸>

 ミランでは選手の特徴に合わせて柔軟にシステムを組み替えた。ピルロをレジスタに据え、リバウド(ブラジル)、マヌエル・ルイ・コスタ(ポルトガル)にシャドーで自由を与える、4-3-2-1のクリスマスツリー型。ジェンナーロ・ガットゥーゾ(イタリア)にピルロを補佐させながら、カカ(ブラジル)とクラレンス・セードフル(オランダ)を併用したダイヤモンド型の4-4-2など、選手からシステムを創出する手法を確立した。

 選手の才能を無駄なく使うこと。それがチームのパフォーマンスを最大化してくれる。システムのためのシステムではなく、選手のためのシステムをつくる。この分野での職人になったアンチェロッティ監督にとって、スター過多とも言えるビッグクラブはうってつけの仕事場になった。

 チェルシー、パリ・サンジェルマンをリーグ優勝に導き、レアル・マドリードではCL優勝を成し遂げた。チェルシーではデコ(ポルトガル)をトップ下に、フランク・ランパード(イングランド)をボックス・トゥ・ボックス(ピッチ全面を動き回る)のMFとして生かした。

 戦力で図抜けていながら勝てていなかったパリSGには19年ぶりのリーグアン優勝をもたらし、レアルではクリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)、ガレス・ベイル(ウェールズ)、カリム・ベンゼマ(フランス)の"BBC"を生かすべく、アンヘル・ディマリア(アルゼンチン)を潤滑剤として活用した。現在のエバートンではハメス・ロドリゲス(コロンビア)の再生に成功している。

 これまで率いたメガクラブに比べると、エバートンは規模も人材も足りない。アンチェロッティが職人芸を発揮しようにも材料不足の感は否めないのだが、それでも何とかするだろうという期待はある。バイエルンとナポリで珍しくフロントと揉めて解任されているのは気になるが、選手を生かす戦術の構築では何と言っても経験、実績ともに抜群なのだ。

カルロ・アンチェロッティ
Carlo Ancelotti/1959年6月10日生まれ。イタリア・レッジョーロ出身。パルマで選手のキャリアをスタートさせ、ローマ、ミランではチームの黄金時代のMFとしてプレーした。監督としては95年のレッジャーナを皮切りに、パルマ、ユベントスと渡り、ミランではCLを2度制覇。その後もチェルシー、パリ・サンジェルマン、レアル・マドリード、バイエルンとビッグクラブの監督を務め、数々のタイトルを獲得。2018-19シーズンはナポリ、2019-20シーズンからはエバートンの監督を務めている。