冬の移籍マーケットが目前に迫るなか、日本のサッカーファンにとって気になるのが、現在ヨーロッパで活躍する日本人選手の動向…
冬の移籍マーケットが目前に迫るなか、日本のサッカーファンにとって気になるのが、現在ヨーロッパで活躍する日本人選手の動向だ。
とりわけ、ビジャレアルでプレーする久保建英の去就の噂を巡っては、連日のように各メディアが報じている。だが、それとは対照的に、同じ東京五輪世代の有望株、ボローニャの冨安健洋に関する移籍報道はほとんど報じられていない。

今季不動のCBとして活躍する冨安健洋
果たして、2018年1月にアビスパ福岡からベルギーのシント・トロイデンに移籍して以来、ヨーロッパ3年目を迎えている冨安が、この冬に動く可能性はないのだろうか?
そもそも冨安の移籍の噂が立ったのは、今夏の移籍マーケットでのことだった。
その時、移籍先候補として挙がっていたクラブは、イングランド・プレミアリーグのウェストハムとニューカッスル、そしてセリエAのローマとミラン。冨安にとっては、どのクラブに移籍した場合も"ステップアップ"に値する。
もっとも、プレミアの2クラブとローマについては具体的なオファーがあったのか定かではない。しかし、少なくともミランからのオファーがあったことは確実と見られている。
「我々が考える(冨安の)移籍金はもっと高額だ」
夏の移籍マーケットを終え、そのようにコメントしたのはボローニャのリカルド・ビゴンSD(スポーツディレクター)だった。
要するに、ミランが提示した金額とボローニャが要求する金額には大きな隔たりがあったため、移籍話が破談になったというわけだ。しかも、ボローニャは昨シーズンの収支を赤字で終えていたため、「貴重な戦力の安売りはしない」と判断するのも当然と言えるだろう。
いずれにせよ、冨安のボローニャ残留は確定。引き続きシニシャ・ミハイロビッチ監督のもとで、2シーズン目を迎えることになった。
そんななか、今シーズンは冨安のプレー環境も大きく変化した。加入初年度の昨シーズンは、主に右サイドバックでプレー。センターバックを本職とする冨安にとっては慣れないポジションでのプレーを強いられたなか、リーグ戦29試合に出場し、安定したパフォーマンスで評価を高めることに成功した。
しかし今シーズンは、指揮官が予告したとおり、満を持して本職のセンターバックにポジション変更。相棒ダニーロ・ラランジェイラとともに不動のセンターバックコンビの一角として、開幕からスタメンでプレーし続けている。
ただ、可変式の4−2−3−1を基本とするミハイロビッチ監督のスタイルは失点の多い傾向が否めず、今シーズンも11試合を終えた段階で22失点。1試合平均2失点という状況下では、当然ながらセンターバックを務める冨安の評価への影響は避けられない。
たとえば、珍しく3バックを採用した第10節のインテル戦では、ロメル・ルカクとアクラフ・ハキミにやられて自身も2失点に関与。試合後に指揮官が自らの失策を認めたものの、3バックの左サイドでプレーした冨安のプレー評価も散々だった。
さらに、4−3−3で臨んだ続く第11節のローマ戦でも、開始からチームの守備戦術が崩壊して5失点。左センターバックに戻った冨安も前に出るタイトな守備を見せたものの、逆にそれが仇となってローマの3トップのエディン・ジェコ、ヘンリク・ムヒタリアン、ロレンツォ・ペッレグリーニによる流動的な動きに翻弄された。
さすがに後半はベンチも動き、3枚代えを行なって3バックに変更して修正を見せたが、1−5で大敗した試合後はミハイロビッチ監督が選手の不甲斐ないパフォーマンスに激怒。クリスマスまでの合宿を宣言するなど、チームの調子も下降気味だ。冨安個人にとっても、悩ましい状況といえる。
とはいえ、冨安に対するミハイロビッチ監督の信頼はまったく揺らいでいない。それは、今シーズンの冨安のスタッツにも表れている。
これまでの11試合すべてでスタメンフル出場。これはチーム唯一であり、セリエA全体のフィールドプレーヤーで見てもわずか8人しかいない。実際、後半から3バックにシステム変更したローマ戦でも、冨安は左センターバックから左ウイングバックにポジションを変え、終了間際には相手ボックス内に進入してシュートを放つなど、あいかわらずの対応力の高さを証明した。
また、カリアリ戦(第6節)、サンプドリア戦(第8節)、そして昨シーズンの第2節以来、約1年3カ月ぶりにクリーンシートで勝利した今シーズンのクロトーネ戦(第9節)では、個人として高いパフォーマンスを見せて高評価を得ている。
そういう意味では、相手FWとの駆け引きや周囲への指示を含めた連係など冨安自身の課題を克服する必要はあるものの、まずはチーム状況さえ改善されれば、自ずと冨安のパフォーマンスと評価も上昇気流に乗ると見ていいだろう。
ちなみに、2018年1月の段階では100万ユーロ(約1億2000万円)にも満たなかった冨安の移籍金評価額は、その後、600万ユーロ(約7億5000万円)、1000万ユーロ(約12億6000万円)、1500万ユーロ(約18億9000万円)、そして現在は1800万ユーロ(約22億7000万円)と、移籍期間を迎えるごとに着々と上昇している。
さすがにこの状況下では、よほど破格なオファーがないかぎり、冬の移籍マーケットで冨安がボローニャを出ることはないだろう。むしろ、現在は困難を乗り越え、選手としてひと回りもふた回りも成長することが、経験がモノをいうDFとしては重要になる。
なにより、わずか1年半でシント・トロイデンからボローニャにステップアップした22歳の若者にとって、伝統的に守備が強いセリエAというリーグで毎試合コンスタントに出場できることは、願ってもない環境と言える。そのなかでしっかり実力をつければ、セリエAの上位クラブはもちろん、イングランドやスペインでも通用するDFになるはずだ。
ぶち当たった壁をどのようにして乗り越えるのか。そして、ボローニャからいつ、どのようにステップアップしていくのか。長期的な視点で見ても、今シーズンの冨安のプレーぶりは注目に値する。