大好きなゴルフに専念するため、通信制高校へ進学を選択 今、日本女子ゴルフ界を大いに盛り上げている「黄金世代」。1998年4月から99年3月生まれの同学年には、昨年の全英オープン覇者・渋野日向子、今年の日本女子オープンの勝者・原英莉花の他、勝…

大好きなゴルフに専念するため、通信制高校へ進学を選択

 今、日本女子ゴルフ界を大いに盛り上げている「黄金世代」。1998年4月から99年3月生まれの同学年には、昨年の全英オープン覇者・渋野日向子、今年の日本女子オープンの勝者・原英莉花の他、勝みなみ、河本結、小祝さくら、新垣比菜、大里桃子ら、日本ツアー優勝経験者が名を連ねる。実力と話題性を兼ね揃えた黄金世代の中でも、抜群の安定感で頭一つ抜き出た活躍を見せるのが、世界ランキングで日本人トップの7位につける畑岡奈紗だ。

 17歳で出場した「日本女子オープン」で、国内メジャー史上初となるアマチュア優勝。その直後、日本女子ゴルフ界では史上最年少でプロ転向を果たすと、翌年から米LPGAツアーを主戦場とし、世界の舞台で戦ってきた。2018年の「ウォルマートNWアーカンソー選手権」で米ツアー初優勝を飾り、ここまで3勝を記録。国内ツアーで挙げた5勝のうち4勝がメジャータイトルというのだから、スケールが違う。

 プロ転向から4年。これまで何度となく「史上初」「史上最年少」の文字を躍らせてきた21歳だが、「あの選択をしなければ、今の自分はない」と思う岐路がある。それが、中学3年生の時に選んだ「通信制高校への進学」だ。

 11歳からゴルフを始めると、すぐに競技の魅力に取り憑かれた。進学した地元中学では「ゴルフにもいいトレーニングになると思って」と陸上部に所属。部活が終わって19時前に帰宅すると、夕食を済ませた後でゴルフの練習に出掛け、2時間ほど打ち込んだ。そんな“二足のわらじ”の生活はタフに見えるが、ゴルフをする楽しさが何にも勝り、「あまり疲れたとは思わなかったですね」と笑いながら振り返る。

 中学生と言えば、進路に頭を悩ます日々を送る。だが、畑岡にとっては難しくない選択だった。「中学生になって徐々に試合に出始めて、そこからだんだんプロになりたい気持ちが出てきました」。目標が定まると、自ずと進むべき道が見えてきたという。

「まず、高校はゴルフ部があるところを選びました。あとは、普通の高校には行かず、ゴルフの練習をたくさんできるように通信制にしたこと。ここが一つ、大きな選択だったのかなと思います」

悩める進路選択も「自分が何を一番やりたいのか考えられたら、進む道を決められる」

 こうして入学したのが、茨城県に本校を置く通信制高校の翔洋学園高等学校だった。高校ではゴルフ部に所属し、ゴルフの練習に没頭した。

「高校の時はほとんど毎日クラブを握ったり、練習場に行かなくても自宅で素振りをしたりしていました。ラウンドする時は1日がかりでしたし、練習だけの日でもスイングを変えた時は5、6時間ほど練習することもありましたし、逆に1、2時間で終わることもあったり。何時間やらないといけないって決めるのではなくて、その時の状態によって変えていました」

 練習の成果は結果として表れた。高校2年生だった2015年に日本ゴルフ協会のナショナルチームに選ばれると、同年の「IMGアカデミー世界ジュニアゴルフ選手権」では個人と団体でダブル優勝を果たした。さらに、その翌年も同大会に出場すると個人と団体で2連覇を達成。その3か月後には「日本女子オープンゴルフ」での史上最年少優勝を決めてみせた。

 高校3年次に翔洋学園高校からルネサンス高等学校に転校したが、ゴルフ中心のスケジュールを組むために、いつでもどこでも学べる通信制高校という軸はぶらさなかった。だが、ゴルフの練習に熱中したあまり、ちょっとした後悔も残っているという。

「練習時間をたくさん取れるので、ゴルフをするためにはすごく良かったと思います。でも、インターネットで調べてレポートを書いたりするんですけど、ずっと練習をしていて、いつの間にか宿題がすごく溜まっていることも時々あって……(笑)。あとは今、海外(米国)で生活し、戦っているので、もっと時間を使って英語を勉強しておけばよかったなと思いますね」

 ゴルフ中心に動いていた高校時代を振り返りながら、「普通の高校生活を送って見たかったなっていう気もするんですけど……」と笑ったが、その選択が間違っていなかったことは自分が一番よく分かっている。

「中学3年生の時、通信制の高校に行ってゴルフに専念するって選ばなかったら、今の自分はないと思います」

 大好きなゴルフに出会い、ゴルフを極める道を選んだ畑岡は、進路に悩む中学生にこんなアドバイスを送る。

「いろいろな選択肢を見て、自分が何を一番やりたいのか考えられたら、進む道を決められるのかなって思います。いろいろ調べることがマイナスになることはないですし。今、明確に『これになりたい』っていう夢がなくても、興味があることや楽しいなって思うことがあったら、それに繋がるような高校だったり、進路だったりを選んでみるといいのかなと思いますね」

 中学生年代は、誰もがみんな大きな可能性を秘めている。自分が好きになること、時になるものとの出会いは、いつどこで訪れるか分からない。そのチャンスを広げ、選択肢を増やすためにも、いろいろなことに挑戦してみるといいのかもしれない。(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)