V・ファーレン長崎が逆転昇格へ向け、ラストスパートを加速させている。 J2第40節、東京ヴェルディと対戦した長崎は、「…
V・ファーレン長崎が逆転昇格へ向け、ラストスパートを加速させている。
J2第40節、東京ヴェルディと対戦した長崎は、「しっかりとコレクティブに連動していた」(長崎・手倉森誠監督)という堅い守備で、相手の攻撃に対応。ボールを保持して攻撃を組み立てたい東京Vに対し、決定的なシュートを許さなかったばかりか、テンポよくパスをつなぐ攻撃で、両サイドから何度も敵陣深くへと進入を繰り返した。

40節の東京ヴェルディ戦で先制ゴールを決めたベテランの角田誠(写真中央)
「昇格をかけた戦いで、もうひとつの敵はプレッシャー。(昇格の可能性がなくなって)ノープレッシャーのチームにのびのびやられると厄介だった」
手倉森監督がそう警戒して臨んだ試合も、終わってみれば2−0。前半なかばのわずか5分間で2点を取れたことは、いくらかのツキがあったとはいえ、概(おおむ)ね主導権を握って進めたゲームは完勝と言っていい内容だった。
指揮官も満足そうに語る。
「セットプレーで先制し、2点目もトントンと取れた。(試合終盤に)ピンチもあり、相手の慌てたシュートに助けられた部分はあるが、うちなりにしのげたゲームだった。辛抱強く戦う覚悟が残り2試合に必要だと、(試合後に)選手に話してきた」
3シーズンぶりとなるJ1復帰を目指す長崎は今季、開幕4連勝を含む9戦無敗(7勝2分け)のスタートダッシュで首位に立ったものの、第16節から8試合連続で勝利から遠ざかり(5分け3敗)、J1昇格圏から転落。以降は長らく3位をキープするものの、なかなか徳島ヴォルティス、アビスパ福岡の上位2クラブを捕まえられずにいた。
そして、残り4節となった第38節終了時点では、首位・徳島との勝ち点差は10、2位の福岡とも4まで開き、J1昇格は厳しくなったかに思われた。
ところが、第39、40節と長崎が勝利を重ねる一方で、徳島は1敗1分け、福岡は1勝1分け。特に徳島は、他の2クラブの結果に関係なく、あと1勝すれば自力でJ1昇格が決まる状況にありながら、2試合連続での足踏みとなっている。
その結果、3クラブの順位こそ変化はないものの、勝ち点81の徳島、同78の福岡、同76の長崎と、首位から3位までの勝ち点差は、わずか5までに縮まった。長崎にとっては、一時は遠のいたJ1昇格が、再び手の届きそうなところまで近づいている。
長いJ2リーグも残り2節となった現在、土壇場の勝負に不可欠な勢いや流れといった要素が、長崎を後押ししていることは間違いないだろう。
東京V戦を見ても、値千金の先制ゴールを決めたのは、ベテランCB のDF角田誠。以前、手倉森監督が「(勝負では)最後はメンタルが必要。それを全面に出せるかが大事だが、角田は声も出せるし、気持ちも出せる。それがみんなに伝染してくれればいい」と話していたことがあるが、そんな闘争心あふれる37歳がCKを頭で叩き込み、今季初ゴールを決めたとなれば、チームが勢いづかないはずはない。
角田は「足の筋肉系に問題があり、トレーナーやコーチングスタッフが助けてくれた」と語り、フル出場が難しいコンディションにあったことを認めながらも、「チームのためになんとかしたいという気持ちだった」と、途中交代する73分まで出場。「自分のゴールよりも、チームが勝ててよかった」と、貴重な勝ち点3の獲得を喜んだ。
そんな角田の言葉からは、チーム全員がJ1昇格をあきらめず、一丸となっている様子が見て取れる。
もちろん、勝ち点差が詰まったとはいえ、三つ巴の争いのなかで、長崎が最も不利な立場にいることに変わりはない。
長崎に上位2クラブとの直接対決が残されていない以上、あくまでもJ1昇格は他力本願。残り2試合で長崎が連勝しても、徳島が勝ち点2以上を、福岡が勝ち点4以上を加えてしまえば、逆転は不可能となる。
しかしながら、この争いの妙は最終の第42節で徳島と福岡の直接対決が残されていること。つまりは、上位2クラブが潰し合ってくれることだ。
しかも、残り2試合をともにホームで戦えるのは、上位3クラブでは長崎のみ。他力本願とは言うものの、残り2試合を連勝で終えることさえできれば、J1昇格の可能性はそれほど低いものではない。
これまでJ1、J2で、あるいは日本代表で、数々の修羅場をくぐってきた角田は、悲壮感とは無縁の笑顔で「非常におもしろいシチュエーションになってきた」と語り、「僕たちは勝って、(昇格の)可能性を信じるだけ」と、ラスト2試合に必勝を期す。
熾烈な昇格争いにおける「もうひとつの敵」は、恐らく長崎だけのものではないだろう。
それどころか、より強くそれを感じているのは、むしろ昇格圏内にいる2クラブかもしれない。だとすれば、この争いが確率上、最も意外な結末を迎えたとして不思議はない。
手倉森監督は力を込めて言う。
「サポーターと最後に歓喜を味わいたい。残りふたつ、長崎全体で戦っていきたい」
長崎の逆転昇格はなるのか。最も不利な立場も、見方を変えれば、追う者の強みになる。