試合を終えたばかりの新潟工の部員たちを、卒業生の稲垣啓太が激励した。場所は、会場となった大阪・東大阪市花園ラグビー場の第2グラウンドである。

 高校時代の稲垣も指導した樋口猛監督は、「ほら、先輩が来てくれたぞ。聞いてみろ、どうやったら2回戦も勝てますか、とか」と笑みを交える。ラグビー日本代表としてワールドカップイングランド大会に出場した左PRの「先輩」は、後輩たちにこんなメッセージを残す。

「間違いなく2回戦も勝てる。その力を出せるように準備していってください」

 12月27日、全国高校ラグビー大会の初日で新潟工が鹿児島実に50-14で快勝。この日の稲垣は、所属するパナソニックがオフだったため観戦に出向き太鼓判を押した。樋口監督も意気込んでいる。

「何としても、このチャンスを活かしたい」

 チームの軸は、モールなどFWを軸としたプレーと組織的な守備だ。対する鹿児島実にCTB平良海斗ら突破力やパススキルに長けるメンバーもいるなか、樋口監督は「とにかくFWを前に出す」。ボール保持に走る相手を、鋭いプレッシャーで敵陣に押し込む。

 7-0とリードして迎えた前半10分には、ベンチの「(守備列の幅を)広げろ!」という声のもと一枚岩の守備ラインをどんどん押し上げる。敵陣22メートル線付近から徐々にせり上がり、ゴール前で相手の反則を誘う。CTBの市川結貴がペナルティゴールを決め、10-0と点差を広げた。

 以後もエリア獲得からチャンスを探る試合運びがはまり、球を持てば肉弾戦を圧倒した。そんななか「自分らの強みであるFWで勝てた。次につながるいいゲームだったと思っています」と喜ぶのが左PRの近藤芽吹副将だ。身長177センチ、体重103キロの3年生で、クラブ唯一の高校日本代表候補である。この日もスピードに乗ったぶちかまし、ランナーを掴み上げるチョークタックルで魅せた。組織力の勝利だと強調した。

「相手の平良くんはいい選手。徹底してマークしよう、と。FWもインサイドブロック(接点周りのスペースを塞ぐ動き)などで平良くんを見ていこうということでした。抜かれた場面もありましたが、そこもFWの皆で戻って整備をし直して…ということができた」

 1年時からレギュラーで、前年度まではFLだった。コンバートを提案した樋口監督は、「(本人の)将来を見越して、です。それに、フロントロー(FW第1列)にあれだけパワーがあって走れる選手がいるのは大きい」とその背景を明かす。

 当の本人も、時を追うごとにいまの働き場に誇りを持つようになったようだ。同じ位置で国際舞台にのぼりつめた先輩については、「PRであっても何回も起き上がってディフェンスに入る…。稲垣さんのようにいっぱい仕事をするPRになりたい」と意識。縁の下の力持ちとされるPRになっても、FL時代の機動力は保っていたい。

 高校生活最後の舞台に立ついま、こう意気込んでいる。

「(花園は)何度来ても特別な場所。過去2回は年を越せずに悔しい思いをしている。歴史を変えようというスローガンを掲げてこの大会に来ています。自分たちの代で…という思いです」

 冬の全国大会へは13年連続41回目の出場となる新潟工。過去には4強入りの経験もあるが、近年は2回戦の壁を越えられずにいる。近藤の在学期間のみならず、稲垣がいた2006~08年度も然りだ。

 次戦は30日。激突するは、東京の明大中野高だ。新潟工はここで念願の2回戦突破を果たすと、翌年1月1日の3回戦に進める。いわゆる「正月越え」だ。郡馬のホームグラウンドへ帰る稲垣へ、吉報を届けられるか。
(文:向 風見也)