11月に行われた東日本選手権で、3年連続となる全日本選手権出場を決めた石塚玲雄(スポ3=東京・駒場学園)。新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、どのようなシーズンを迎えているのだろうか。全日本を迎えるにあたって伺った特別インタビューを中…

 11月に行われた東日本選手権で、3年連続となる全日本選手権出場を決めた石塚玲雄(スポ3=東京・駒場学園)。新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、どのようなシーズンを迎えているのだろうか。全日本を迎えるにあたって伺った特別インタビューを中心に、ここまでの歩みを振り返る。

 

2020 East Japan Figure Skating Championships

東日本選手権SP

  コロナ禍の影響で、選手にとって厳しい状況が続くシーズンである。氷上での練習が制限されるなど、満足にトレーニングを積むことが難しい時期もあった。それでも、石塚は前進し続けていた。空いた時間にダンスレッスンを受講して表現の幅を広げ、「自分の武器」と語るスピンを生かすプログラム作りに取り組んだ。スピンの難しい出方がレベル上げのための要素として認定される、という新しい採点ルールが発表されると、積極的に「難しい出方」に挑戦。新フリースケーティング(FS)『オペラ座の怪人』後半の足替えシットスピンは、回り終わりをニースライドに繋いでいる。工夫が凝らされ、観客を驚かせる華やかな振り付けだ。昨年度から継続のショートプログラム(SP)『ロシュフォールの恋人たち』では、「音楽を聴いて感じた感情を素直に表現すること」を意識して練習に取り組んだという。 こうした試行錯誤は、石塚の持ち味であるスケーティングとスピンを一層成長させた。東京選手権ではSP、FS共に全体トップの演技構成点を獲得。SPでは、足替えコンビネーションスピンでY字スピンとビールマンスピンを組み合わせた。男子選手には珍しい構成が、ダイナミックに映えた。東日本選手権FSでは、全てのスピンで最高評価のレベル4を獲得した。出場選手は実力者揃いだったが、スピンの合計点はFSトップ。冒頭のミスに動じないで粘り強くジャンプに挑み、気迫せまる演技を見せた。11月14日、石塚の誕生日に始まった都民体育大会で、FSのステップでレベル3評価を受ける。SP3位から逆転優勝を果たす、好演技だった。試合を重ねるたびに新たな課題を発見し、全日本選手権に向けて研鑽を続けている。 「いつも、その先にいるお客さんに向けて演技することを大切にしています」と語る石塚。今シーズンの試合は無観客開催が続いていたが、「配信で見て下さっている方に向けて演技していた」と振り返る。加えて、石塚は試合のたびに、自身の近況や意気込み、早大スケート部での取り組みなどを真摯な言葉でファンに伝えてきた。美しい滑りはもちろんのこと、ファンを思う誠実な姿勢が、観る者の心を掴んで離さない。

 

2020 East Japan Figure Skating Championships

東日本選手権FS

 「絶対全日本(選手権)に出場」と力強く語ったのは、大学デビュー戦の演技後インタビューだった。以降、ファンやメディアの前で何度も繰り返したその目標を、3シーズン連続で達成している。ことしの石塚の目標は、全日本選手権で「FSを滑ること」。今シーズンの試合を通じて得た、「綺麗な流れるジャンプ着氷」を新たな課題に掲げた。これまで一歩及ばなかったFSの舞台に、磨き上げたプログラムで再び挑戦する。全日本選手権は、観客を入れて開催することが決まっている。生の歓声を全身に受けながら、氷上でいきいきと輝く石塚の姿を心待ちにしたい。

(記事 犬飼朋花、写真 アフロ/JSF)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

結果

▽東京選手権

石塚玲雄 6位 150.30点(SP 58.69点 FS 91.61点)

▽東日本選手権

石塚玲雄 8位 153.92点(SP 55.28点 FS 98.64点)

▽都民体育大会

石塚玲雄 1位 168.94点(SP 58.65点 FS 110.29点)

コメント

石塚玲雄(スポ3=東京・駒場学園)

――東日本選手権について伺います。まずはSPの演技を振り返っていかがですか

SPでは自分のイメージと実際の体の動きが限りなく近く動けました。そのため、着氷ミスはありましたが比較的気持ち良くジャンプが飛べました

――昨年から継続のプログラムですが、振り付けの印象に変化があったように感じました。今年の演技をつくるときに意識したことがあれば教えてください

音楽を聴いて感じた感情を素直に表現することを心がけています。でも、後から映像を見返すと表現が内向きになっていると感じました。無観客試合はとても淋しいですが、観客席にお客さんがいない時でももっと華やかな明るいオーラを外向きに出して演技したいです

――東京選手権の結果からどのようなことを課題に練習をしましたか

東京選手権では特にFSで気持ちが入りすぎて、ジャンプでも余計な力が入っていました。そのため、東日本までの期間でイメージの強化をしてきました。『もっと楽に飛んでいるイメージ』など、イメージ通りに体が動かせるように強化してきました。東日本選手権で演技してみて、収穫もありつつ新たな課題も両方見つかりました

――全日本選手権への出場が決まる重要な大会でしたが、どのような気持ちで挑みましたか

特別なことは考えていませんでした。自分との戦いに勝つこと。自分の練習してきたことを発揮して良い演技をしたいと思って臨みました

――スピンについてお聞きします。東京選手権と違う種類のスピンをなさっていましたが、それぞれ意図などはありますか

自分の武器はスピンなので、東京選手権では自分が入れたい!と強く願うスピンを多く入れて実施しました。ただ、今年は試す場が少なく大きい試合でレベルを取ってもらえるか未知数でした。なので、先生と相談した上で今までのスピン構成を極める方向で頑張っています

――次にFSの演技を振り返っていかがですか

見て頂くお客さんにとっても、安心して見て頂ける演技にしたいな。と強く思う演技内容でした(笑)

――お衣装のこだわりは何かありますか

オペラ座なので黒がメインの衣装も考えたのですが、僕はファントムの嫉妬心・苦しさ・辛かったこと、などの感情を表現したかったので色は暗めの赤が良いと思い提案させて頂きました

――こちらもスピンがとても印象的で素敵でした。どんなことを意識していますか

スピンの出で難しい出方をすると、今年からレベルを上げる要素になるとのことだったのでやってみようかなと思いました。足替えシットの出でニースライドを入れてみたり、楽しみながら工夫しています

――画面越しにも熱量が伝わってくる演技でしたが、表現の面で大切にしていることはありますか。また、その表現をするためにご自身で工夫などされましたか

そう言って頂けて嬉しいです。いつも、その先にいるお客さんに向けて演技することを大切にしています。でも、今シーズンは無観客試合なので配信で見て下さっている方に向けて演技していたつもりです。でも、映像を見返すと全然そう見えなくて『ありゃありゃ』って思っています(笑)

――最初のジャンプでミスがあったものの、次のジャンプで立て直したという印象がありました。その時の心境を聞かせてください

冒頭はやってしまったと思いました。でも、東京選手権でも同じミスをしていたので逆に『まぁ、落ち着いて決めていこう』と思えました

――東京選手権からジャンプ構成が上がっていますが、背景を教えてください

成長することを諦めたくないので、上げられるところは上げたいなと思っていました

――都民体育大会について伺います。逆転優勝ということですが、率直な感想を聞かせてください

優勝っていつぶりだろ?っていうくらい久しぶりの優勝だったので嬉しかったですし、素直に喜んでおこうと思いました(笑)

――3位で迎えたフリー。スピンではレベル4を獲得するなど、石塚選手の持ち味が光っていたと思います。どんなことを思って臨みましたか

1つ1つのポジションを明確にハッキリとしたいと思って臨みました。あとは、回転数をしっかり回りたいと思って臨みました

――全日本選手権について伺います。3Aのご予定はありますか

ないです(笑)

――東日本選手権、都大会を終えて何か課題は見つかりましたか

見つかりました。その課題というのは、『綺麗な流れるジャンプ着氷』です。これまで、飛ぶ前ばかり意識して頑張っていたかもしれません。でも、東京選手権・東日本選手権と戦ってみて今の課題がはっきりと分かりました。 『空中に上がってから〜〜綺麗な着氷』のイメージをもっと鮮明にして意識を高める。GOEで加点がもらえるジャンプにしていくこと。それが今の課題であり、今は日々その課題に向き合って練習できています。明確な課題が見つかって嬉しいです。

――全日本選手権での目標を教えてください

FSを滑ることです

――これまでの試合は無観客開催でしたが、通常の大会と比べて雰囲気はいかがでしたか

やっぱりその場にお客さんがいないと淋しいですね(笑)

――股関節の痛みについてはどのような状況ですか

正直に話すと、痛みにはここまで沢山苦しめられました。でも、色々な方のサポートのおかげで最近は落ち着いて来ました

――自粛期間中にダンスレッスンを受けていたということをおっしゃっていましたが、実際に試合で演技をする際にその経験が生きたと感じた部分があれば教えてください

以前よりも細かい音を感じ取れるようになりました。そして、その細かい音を表現するのが楽しいと思えるようになりました

――最後にファンの皆様に一言お願いいたします

今年もここまで来れたのはいつも元気が出る声援や言葉をかけて下さっているファンの方々の応援の力でもあります。 さらに学びを楽しでいきたいです。全日本選手権ではやっと目の前でお客さんにも見て頂けますし、配信でも見て頂けるのでとても楽しみにしています。いつも応援ありがとうございます!