ダービージョッキー大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」 日本中が熱狂し、すばらしい勝負が繰り広げられたGIジャパンCは終わり…
ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」
日本中が熱狂し、すばらしい勝負が繰り広げられたGIジャパンCは終わりましたが、秋のGIシリーズはまだまだ続きます。
今週は、ダートの頂点を決めるGIチャンピオンズC(12月6日/中京・ダート1800m)が行なわれます。
この秋のGIはスプリンターズSのグランアレグリアに始まり、1番人気が7連勝中。これは、グレード制導入後の最多タイ記録で、今回も1番人気が勝てば、8連勝の最多記録となるみたいですね。
また、今年の全国リーディングをほぼ手中に収め、ここまで重賞17勝、うちGI8勝という抜群の成績を収めているクリストフ・ルメール騎手が、現在JRAの平地GIを4週連続で勝利中。もしチャンピオンズCも勝てば、GI5週連続勝利、GI年間9勝という2つの最多記録の樹立となるようです。
いずれも注目されますが、チャンピオンズCでは1番人気濃厚なクリソベリル(牡4歳)に川田将雅騎手が騎乗。ルメール騎手が手綱を取るのは、おそらく2番人気のカフェファラオ(牡3歳)。要するに、1番人気馬の連勝記録と、ルメール騎手のGI連勝記録は両立しないことになります。どちらの記録が更新されるのか、はたまたどちらの記録もここで途絶えてしまうのか、気になるところです。
さて、クリソベリルに騎乗する川田騎手は現在、全国リーディング2位。しかしながら、昨年のチャンピオンズCを同馬で勝って以降、JRAでのGI勝利はありません。ルメール騎手の他、リーディング3位の福永祐一騎手、4位の松山弘平騎手らがGIで結果を残しているだけに、川田騎手もここでは何としても結果を残したいところでしょう。
そこで今回は、川田騎手のGI勝利への執念にも期待して、まずはクリソベリルを有力視したいと思います。
初めての海外遠征で、世界から強豪が集まった海外GIのサウジカップ(2月29日/サウジアラビア・ダート1800m)こそ7着に敗れましたが、国内では8戦8勝と無敗。地方交流レースを含めてGIを4勝しています。
前々走の地方交流GI帝王賞(6月24日/大井・ダート2000m)、前走の地方交流GIJBCクラシック(11月3日/大井・ダート2000m)にしても、ともに楽勝。今の日本のダート界では"敵なし"と言っていいのではないでしょうか。
ダート界において、自らの時代を創れる馬というのは、安定した先行力があって、大きく崩れるイメージがありません。馬場にも、展開にも左右されず、自らの力どおりに走って、当然のように先頭でゴールする、といった強さがあります。クリソベリルも同様で、個人的には、連覇の可能性はかなり高いと見ています。
この絶対王者クリソベリルに対して、もし逆転があるとすれば、初対戦の馬、底を見せていない魅力のある馬、ということになるでしょう。そして今回、そのタイプに当てはまるのは、先にも触れたルメール騎手が騎乗するカフェファラオだと思っています。
地方交流GIのジャパンダートダービー(7月8日/大井・ダート2000m)では7着に敗れたものの、JRAのレースに限れば、デビューから4戦無敗です。とりわけ、新馬戦からGIIIユニコーンS(6月21日/東京・ダート1600m)までの3連勝で見せたパフォーマンスは、将来のダート界はカフェファラオの天下になると思わせるほどのインパクトがありました。
ジャパンダートダービーのあと、秋初戦のGIIIシリウスS(10月3日/中京・ダート1900m)では、ルメール騎手が手綱を取って勝利。そのまま、チャンピオンズCでも継続騎乗となりました。
つまりルメール騎手は、チュウワウィザード(牡5歳)、タイムフライヤー(牡5歳)、モズアスコット(牡6歳)、そして昨年のレースで2着だったゴールドドリーム(牡7歳)といったお手馬がいるなかで、カフェファラオを選択したことになります。この秋の主役を張るジョッキーが選んだ馬となれば、このメンバーの中に入っても、勝ち負けできるポテンシャルがあると思います。
もう1頭、勝ち負けというよりは、2、3着に入ってきそうな馬として、クリンチャー(牡6歳)にも注目しています。
ダートに転向して以降、毎回好走するものの、勝ち切れないレースが続いていました。しかし、前走のGIIIみやこS(11月8日/阪神・ダート1800m)では、テン乗りの川田騎手が積極的に仕掛けて、同馬の長所を引き出して勝利へと導きました。
今回、川田騎手が乗れないのは残念ですが、それは陣営も織り込み済みでしょう。代わって、関東リーディング3位(全国8位)の三浦皇成騎手が手綱をとります。いまだGI勝利はなく、今年は重賞でも存在感を示すことができていませんが、今回はチャンスだと思って、一発を狙うような競馬をしてもらいたいと思っています。

今年2月のGIフェブラリーSを制しているモズアスコット
最後にチャンピオンズCの「ヒモ穴馬」ですが、人気薄なら一発の期待が見込めそうな、モズアスコットを取り上げたいと思います。
今年に入ってからダート路線に矛先を向けて、GIII根岸S(2月2日/東京・ダート1400m)、GIフェブラリーS(2月23日/東京・ダート1600m)といきなり連勝。しかも、ともに強い勝ち方を披露しました。ここまで続いている"ルメール旋風"の今年最初のGI勝利でもありました。
フェブラリーSの強さを思い起こせば、クリソベリル相手でも互角に戦える1頭だと思います。しかしながら、今回あまり下馬評が高くないのは、近走の成績がひと息なことと、1800mという距離に疑問が持たれているからでしょう。
ただ、前走のGIII武蔵野S(7着。11月14日/東京・ダート1600m)はトップハンデの59kgを背負っていたこともありますし、レース内容も先を見据えているような、やや消極的な感がありました。前々走の地方交流GI南部杯(10月12日/盛岡・ダート1600m)で、速い時計の決着で2着に好走していることを考えれば、力の衰えやスランプといったことはないと思います。
距離についても、個人的には苦にしないと見ています。折り合いに苦しむ馬ではないですし、スピードだけでなく、タメてキレる脚も持っていますから、距離が延びても作戦ひとつで対応できるはず。武蔵野Sで控えたまま終わったのも、今回に向けての布石だったのかもしれません。
鞍上は、今年ブレイクした横山武史騎手です。勝ち星の内訳はローカルが中心で、重賞勝利は一度だけ。JRAのGIではまだ馬券に絡んだことがありませんが、モズアスコットとはコンビを組んで3戦目になりますから、今回こそチャンスと思って、がんばってもらいたいです。