今年、BCリーグの神奈川フューチャードリームス(BC神奈川)に所属していた根本和也と杉浦健二郎は、高校、大学で野球部に…

 今年、BCリーグの神奈川フューチャードリームス(BC神奈川)に所属していた根本和也と杉浦健二郎は、高校、大学で野球部に所属していなかったという変わり種だ。

 BC神奈川といえば、今年、ルートインBCリーグに初参入し、しかも10月のチャンピオンシップ決勝戦で信濃グランセローズを破り優勝。新規参入初年度での優勝は史上初の快挙だった。



今シーズンBC神奈川でプレーした根本和也(写真左)と杉浦健二郎

 鈴木尚典監督(元横浜DeNA)を中心に、林裕幸ヘッドコーチ(元社会人野球の日本石油、明治安田生命で監督、シドニー五輪日本代表コーチ)、さらに荒波翔(元横浜DeNA)と乾真大(元日本ハム、巨人)がコーチ陣として名を連ねる。

 根本は、小学生の時は地元(川崎市)の少年野球チームに所属し投手と三塁手をしていたが、中学校に野球部がなかったためバレーボール部に入部。青稜高校(東京)に進むとソフトテニスに挑戦。一浪して立教大に一般入試で合格。大学でも体育会のソフトテニス部に入った。当時はテニス一本で野球をやるという選択肢はまったくなかった。

 大学卒業後、一般企業に入社するも、「今しかできないことをやりたい。そう考えた時、小学生の頃にやっていた野球の楽しさがよみがえり、この世界に身を投じました」と根本は言う。

 副島孔太監督、内藤尚行コーチ(ともに元ヤクルトなど)がいる連盟非登録のBBCスカイホークス、社会人クラブチームの日本プロスポーツ専門学校、関西独立リーグの堺シュライクスなどを経て、今季BC神奈川に練習生として入り、8月に支配下登録選手となった。

 ポジションは捕手。きっかけは「野球に関しては経験が不足しているので、捕手をやれば多くのことを知ることができると思いました」。練習生の時はブルペンで投手のボールを受けるのがおもな役割だったが、支配下になってからは試合にも出るようになった。だが、
捕手登録は根本だけだったが、経験不足からほかのポジションの選手がホームを守ることが多く、なかなか出場機会に恵まれなかった。

 今シーズンは6試合に出場し、8打数2安打、2打点。それでも練習生では出なかった給料をもらえるようになり、「今まではアルバイトをしながらでしたが、同じ環境のもとで給料が出るというのは大きいです」と喜んだ。

 そんな根本だったが、喜びもつかの間、オフに入った11月に突然「自由契約」を言い渡された。

「あらためて振り返ってみたら、とにかく野球がやりたかった。不安はありましたが、後悔したくなかったのでチャレンジしてみました。上(NPB)に行ければいいと思っていたが、そんなに甘くない世界です。今後は自分自身と日々相談しながら、他球団のトライアウトなどを受けるつもりです。自分の挑戦は、似たような境遇にある選手に門戸を開くことができたのではないかと思っています。これからも努力して、もっと成長していければと思っています」

 一方、杉浦は神奈川県相模原市出身で中央大学に通う大学生。中学2年でヒジ、3年で肩を痛めて投手を断念し、二塁手としてプレーしていたが、麻溝台高校に進学するとバドミントン部に所属。県大会にも出場する実力の持ち主だった。

 大学では軟式の草野球チームに入り、球速が出にくい軟式球で140キロを記録。仲間からBCリーグのトライアウトを薦められると、硬式球で150キロをマークして一躍注目を浴び、BC神奈川からドラフト指名を受けた。大学には休学届を出し入団した。

 身長182センチの大型右腕で、得意球はストレートと高速スライダー。ほかにもカットボール、ツーシームも投げる。動画サイトなどを参考に独学で研究し、自室に人工芝を敷いてピッチングフォームを固めてきた。

 今シーズンは12試合に登板し、うち2試合が先発だったが、計13回2/3を投げて被安打12、与四死球22、失点13、自責点11、防御率7.24と散々な結果に終わってしまった。それでも奪三振は10を記録した。

「こんなものかと思いました。ゾーン内で打者と勝負していないというより、まだその域に達していない。制球力がないのでストライクが入らない。だけど三振もそれなりに取れたので、ストライクゾーンに投げ込めば甘い球でもそんなに打たれないことがわかりました。

 インステップするフォームを強制的に変え、上から投げるようにしたのですが、もともと体の使い方が合っていなくて、スピードが落ち、コントロールまで悪くなってしまった。このオフから元のフォームに戻し、定着させるつもりです」

 杉浦について、鈴木監督はこう見ている。

「いろいろ考えてやっているようです。杉浦は投げるたびに成長しています。今年は中継ぎが多かったですが、先発もさせました。まだまだ勉強中ですが、来年は中心選手として働いてもらいます。アドバイスは、とにかく『走れ』ということだけです」

 オフの過ごし方について、杉浦は次のように語る。

「ウエイトを多めにして、体重を今の81キロから90キロまで増やしたい。練習も地元のグラウンドでトレーニングして、時々、乾コーチに見てもらうつもりです。オフの間は給料が出ないので、運輸会社の配送センターでバイトするつもりです。重い荷物を運ぶので、結構なトレーニングになるんです」

 休学していた大学も9月から復学した。

「NPBに入ったら大学には行けそうもないし、今はコロナ禍でオンライン授業なので、時間を見つけて受講できます。単位も取れそうですし......」

 チームメイトだった根本については、こう感謝の気持ちを述べた。

「自分と同じラケットを手に動き回っていた方なので、阿吽の呼吸とでも言うのでしょうか、気持ちは伝わりやすかったです。ブルペンでもたくさん受けてもらいましたし、試合でも2度ほどバッテリーを組ませてもらいました。頼もしい存在でした」

 お互い置かれている状況は違うが、来年が勝負の1年になることは間違いない。高校、大学と野球部に所属していなかったふたりがどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。興味は尽きない。