福田正博 フットボール原論 というのも、メキシコ戦のように混乱したまま試合を終えてしまうと、選手たちが次の試合に向けて「…
福田正博 フットボール原論
というのも、メキシコ戦のように混乱したまま試合を終えてしまうと、選手たちが次の試合に向けて「なにをどう改善すべきだったのか」の糸口を手にできないからだ。
「チームとして対応しようとしたが通じなかった。だけど、この部分はうまくできた」といった感触があれば、選手は足りない部分を伸ばす努力ができる。しかし、それがないと漠然と「個の力を伸ばそう」との結論だけになってしまいがちなのだ。
もちろん、個の力は必要だ。しかし、何でもかんでも個の力を敗因にしていてはダメだろう。メキシコ戦で足りなかったのは個の力だけでなく、チーム全体としての柔軟性や臨機応変に対応する力だろう。そこを見誤っていては、どれだけ経験を積もうと改善されることはないように感じる。
メキシコ戦の後半に苦しんだ要因は、相手に押し込まれてボールを奪い返しても、そのボールの預けどころを消されてしまって、再びボールを奪われて押し込まれたところにある。
この状況を打開するためには、相手に囲まれながらもボールをキープし、味方がサポートに入れる時間をつくりださなければいけない。それをピッチの選手たちだけで改善できないのなら、監督が選手交代や布陣の変更などで解決策を提示すべきだった。
押し込んできた相手を跳ね返すための有効な手段のひとつが、奪い返したボールを預けられる起点をつくること。そこでマイボールの時間が生まれれば、味方がラインを押し上げられるし、相手も引かざるを得なくなる。
大迫勇也のように、DFを背負いながらボールキープできる選手を投入するのが有効だが、そういうプレーができる選手がいなければ、別の方策を考えるのもベンチの仕事だ。2トップにして相手DFの意識を分散させたり、サイドにボールキープの巧みな選手を入れて時間をつくったりなどの手立てがある。メキシコ戦ではそうしたものを見せてもらいたかった。
森保監督にすれば、試合前に準備したプランの遂行を優先したのだと思う。来年は東京五輪が控え、中断しているW杯予選も再開になる。そこに向けて試しておくべきことがあるのは理解できる。だが、徹底的に勝負にこだわるベンチワークも見せてほしかったというのが、率直な感想だ。
来年も格上との強化試合ができるのかは不透明だが、そうした機会が訪れたなら勝利を最優先にした采配を取ってもらいたい。自分たちのやりたいことを試すのも大事ではあるものの、22年カタールW杯の本番に向けて、格上国を相手にベンチによる駆け引きを経験するのも重要だからだ。
W杯まであと2年。日本代表は森保監督のもとで着実にレベルアップを遂げてきたが、来年はさらに本番を意識したマネジメントを見せてくれることを期待している。