11月29日にバーレーンで開催されたF1第15戦バーレーンGPでマシンが激しく炎上する大クラッシュが起きた。1周目の3コーナー過ぎでハースのロマン・グロジャン(フランス)がコントロールを失い、路肩のガードレールに激突。その瞬間に火柱が上が…

 11月29日にバーレーンで開催されたF1第15戦バーレーンGPでマシンが激しく炎上する大クラッシュが起きた。1周目の3コーナー過ぎでハースのロマン・グロジャン(フランス)がコントロールを失い、路肩のガードレールに激突。その瞬間に火柱が上がり、マシンがあっという間に炎に包まれた。

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国際自動車連盟のジャン・トッド会長のツイッターでもグロジャンの脱出映像を引用


 グロジャンの安否が心配されたが、炎の中から自力で脱出。すぐにヘリコプターで首都マナマのバーレーン国防軍病院に搬送された。その後の発表では骨折もなく、両手の甲や足首のやけどだけで済んだ。

 事故から一夜明けて本人がインスタグラムを通じて動画メッセージを公開した。鼻に酸素チューブが装着され、両手には包帯が巻かれていたものの、「僕が無事だったことをまずは言いたい。ほどほどに無事だね」と元気な姿を見せた。

 脱出するのに20秒近くかかった。それでも無事だったのは装備品の安全性の高さにある。国際競技の場合は国際自動車連盟(FIA)の公認を得た競技用ヘルメット、いずれも耐火炎のレーシングスーツ、アンダーウエア、バラクラバス(目出し帽)、ソックス、レーシングシューズ、レーシンググローブ、さらには頭頸部(とうけいぶ)保護装置の8点の着用が義務付けられている。レーシングスーツの場合は10秒間炎にさらした後に平均で2秒以内に消えることとされ、耐熱性も厳格な基準が設定されている。

 命が救われたのは装備品だけでなく、コックピットを覆う頭部保護装置「ハロ」がマシンに取り付けられていたことも大きかった。グロジャンも動画メッセージの中で「数年前はハロに反対していたが、今ではF1に導入された装置の中で最も素晴らしい物だと思っている。ハロがなければ、こうして話すこともできていなかった」と感謝の言葉を口にした。

動画を通じて元気な姿をみせた入院中のグロジャン(ハースの公式ツイッターから)

 チームによると激突時のスピードは時速221キロ。衝撃でマシンはガードレールを突き破って真っ二つになり、漏れた燃料が引火して大火災につながった。炎の勢いはすさまじく、この時にグロジャンが頭部にダメージを負っているか、気絶していれば、おそらく逃げ遅れていただろう。

 鎮火後にモノコックは丸焦げになっていたものの、ハロはしっかりとコックピットに装着されていた。ハロに守られていたからこそ、炎の中から脱出ができたといえる。

コースマーシャルに肩を担がれて救急車に搬送されるグロジャン(ハース提供)


 22年前の記憶がよぎる。1998年に富士スピードウェイで開催された全日本GT選手権(現スーパーGT)で大田哲也選手の乗っていたフェラーリが大雨のなかで始まったフォーメーションラップでのローリング中にコントロールを失った他車と衝突して炎上。大雨で視界不良となっていたことが混乱を招いた。

 マシンは一瞬のうち炎に包まれ、太田選手は90秒近く中に取り残された。それでも後方を走行していた山路慎一選手や、現場のコースマーシャルに助け出されて命を取り留めることができた。全身の熱傷がひどく、幾度にもわたり皮膚の移植手術をしなければならなかったが、5年後の2003年にレースに復帰。この時の事故は映画化もされた。

 その事故の瞬間は現地のプレスルームにいた。スタート時は多量の燃料を搭載しており、クラッシュが炎上事故につながりやすい。前年の1997年には同じ富士スピードウェイで全日本F3の選手が他車と絡んでホームストレート上のブリッジに激突して死亡するという痛ましい事故が起きていた。当時の私は駆け出しの記者だったが、モータースポーツがいかに危険な競技であるかをまざまざと思い知らされた。

 F1の運営側も炎上事故に至った原因を究明すると表明している。今回のグロジャンのクラッシュも一歩間違えていれば、死亡事故になっていただろう。今年のF1は大きな事故が頻発しており、バーレーンGPと同じ会場で開催される次戦サヒールGP(12月6日決勝)が気にかかる。念には念を入れて安全対策を徹底してほしい。

[文・写真/中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)


※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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