渋野日向子にとって、2020年は試練の一年だった。 コロナ禍により、3カ月遅れで迎えた国内開幕戦は予選落ちに終わり、およそ2カ月にわたるイギリス・アメリカ遠征では、海岸沿いのリンクスコースの難しさを目の当たりにし、アメリカ特有のグリーンに…

 渋野日向子にとって、2020年は試練の一年だった。

 コロナ禍により、3カ月遅れで迎えた国内開幕戦は予選落ちに終わり、およそ2カ月にわたるイギリス・アメリカ遠征では、海岸沿いのリンクスコースの難しさを目の当たりにし、アメリカ特有のグリーンに苦心するなど、世界との壁を肌で実感した(最高順位は24位タイ)。

 今年の国内最終戦であるJLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップを終えた渋野は、全英女子オープンのほか、国内4勝を挙げた2019年よりも「価値ある一年でした」と笑顔で2020年を振り返った。

「2019年の絶好調のあと、(今年は)自分のゴルフに対しての考え方、やりにくさを感じながらやっていた。今までできたことができなくなってしまったことで、"(過去に)戻りたい"っていう感情が芽生えた。

 でもそこから、"また作り上げていく"という感情に変わった。それは、苦しんだから気づけたことだと思いますし、これを経験しないと前に進まない」

 とりわけパターに苦しみ、予選落ちが続いた時期は、心が折れそうになる瞬間は幾度もあった。

「メンタル的につらいですよね、予選通過できなかったり、自分のゴルフがうまくいかなかったりすると。でも、まだまだゴルフ人生は長いので、いろんな経験をして、また新しい自分のゴルフを見つけられたらいいなと思います」



今年の国内最終戦を3位タイで終えた渋野日向子

 ツアーチャンピオンシップリコーカップの開幕を前に、渋野は「一日3アンダー」の目標を立てていた。2日目までに7アンダーまで伸ばし、目標を上回るスコアで決勝ラウンドに入ったものの、そこから思うように伸ばせず、通算6アンダーで4日間の戦いを終えた。それでも、3位タイという結果は今季最高順位で、気分が悪いはずがない。

「1日目、2日目はよくがんばっていたかな。3日目、4日目は本当に耐える2日間だった。これまでなら耐え切れず、3日目、4日目にもっと(スコアを)落としていたかもしれない。

 でも、(2週前の)伊藤園レディスのあたりから、ちょっとずつ気持ち的にラクになってきて、ポジティブに考えていくことによって、打数を減らせることがわかった気がする。そのことを、あらためて実感した4日間でした」

 国内ツアーはツアーチャンピオンシップリコーカップが最後となったが、12月10日からは海外メジャーの全米女子オープン(12月10日~13日/テキサス州)が待つ。

「今年の最終戦が大きな大会だし、しかもアメリカ。出場機会を与えていただいたこともありがたいですし、開催していただけることもありがたい。悔いが残らないように戦いたい。

 日本で調子がよくなってきていると思うので、自分らしいプレーがアメリカでもできるようにしたい。それができたら予選通過できると思うので、まずはそこを目指していきたい」

 タイで合宿を行なった昨オフとは違い、オフの期間は海外ではなく、国内で練習やトレーニングに励む予定だ。そして、無事に開催されれば、東京五輪がおよそ半年後に控える。

「あったらいいんですけどね。今はオリンピックというより、アメリカツアーへの気持ちが強い。アメリカツアーに出るためのことを考えていたら、自然とゴルフもレベルアップしてくると思いますし、それによって、結果も伴ってくれたら......。

 そうなると、世界ランキングも上がるだろうし、アメリカツアーに参戦する目標の過程に、オリンピックがあるという感じで今は考えています」

 昨年末に口にした最終目標である「海外メジャー全制覇」=グランドスラムを、今年の渋野は一度も口にしなかった。苦しみのなかから見出した光明は、この壮大な夢につながるはずだ。