全日本ラリー選手権第3戦Sammyツール・ド・九州2020 in 唐津は、11月27日(金)の競技初日を終えて、三菱ランサーエボリューションの奴田原文雄/佐藤忠宜がトップに立った。2番手には新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI)、3番手…

全日本ラリー選手権第3戦Sammyツール・ド・九州2020 in 唐津は、11月27日(金)の競技初日を終えて、三菱ランサーエボリューションの奴田原文雄/佐藤忠宜がトップに立った。2番手には新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI)、3番手には勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)というオーダーだ。

新型コロナウイルスの影響で当初の4月開催から大きく遅れた今大会は、2020年シーズンの最終戦。大会スケジュールそのものも、27日金曜日の午前中にレッキを行い、午後にはスタートする変則的なものとなった。初日は2SS、2日目に9SSを走る、計11SSが戦いの舞台だ。季節が4月から11月に変更になったことによって、一部のステージでは落ち葉や枯れ木が多いコンディションとなっていたほか、初日のSS2は日没後の走行となる点など、これまでにない難しさをもつラリーとなった。さらに、タイヤへの攻撃性が高いとされる唐津の路面で、使うことのできる6本のタイヤをどのようにマネージメントするのかという点も、難易度を上げるひとつの要因となる。



また、今回のラリーには、注目の新車であるGRヤリスが4台登場した。オフィシャルカーとして2台、コースの安全を確認する00カーと0カーが走り、競技車両としてはクスコ・レーシングとオサムファクトリーの2台が初の全日本ラリーに挑んだ。00カーと0カーはTOYOTA GAZOO Racingの全日本ラリーチームがメンテナンスを担当。00カーは豊岡悟志/足立さやか、0カーには眞貝知志/安藤裕一が乗り込む。クスコ・レーシングは柳沢宏至/保井隆宏、オサムファクトリーは福永修/齊田美早子がドライブ。JN1クラスでスバルWRX STIや三菱ランサーエボリューションを相手に戦うこととなる。



JN1クラスのチャンピオンは、ランキング首位の新井大輝から4番手の新井敏弘まで、4人によって争われる。新井大輝は優勝すれば、2日目のレグポイントに関係なくチャンピオンが確定する状況だ。15時00分、サービスパークの置かれるボートレースからつ駐車場から、カーナンバー1をつけた新井大輝がスタート。オープニングステージとなるSS1では、ランキング2番手の奴田原がベストタイムをマークして機先を制することに成功した。ナイトステージとなったSS2では、トラブルなどで今シーズン波に乗り切れていない勝田が一番時計。僅差ながら、2006年から12年連続で唐津を制したスピードは伊達ではないことを示してみせた。

この結果、首位奴田原、4.2秒差の2番手で新井大輝、3番手に勝田というトップ3が形成された。その後ろには鎌田卓麻/鈴木裕、新井敏弘/田中直哉、そして福永が続く。注目のGRヤリス勢は両車ともノーマルに近く、各種パーツやセッティングなど、ラリーカーとしての熟成はまだまだこれからといった印象だが、「第一歩を踏み出せたことに意味がある」と福永が語るとおり、先陣を切って実戦投入をした両チームにとっては今後大きなアドバンテージとなるはずだ。



ドライバーチャンピオン候補が2名に絞られたJN2クラスは、トヨタGT86 CS-R3を駆る中平勝也/行徳聡、トヨタ・ヴィッツGRMNの中村英一/大矢啓太、ホンダ・シビック・タイプRユーロの上原淳/漆戸あゆみがエントリー。この日を終えてトップは中平、1.8秒の僅差で上原、上原から約20秒離れて中村というオーダーとなった。

首位の中平は「淡々とチャンピオンに向かって走るだけなので、リスクを避けて走っています。抑えすぎると逆に危ないので、今くらいのペースを刻みたいですね。落ち葉は多いですが、グリップがないわけではなく、走りやすいです。チャンピオンを獲りにきているので、とにかく現状キープですね」とコメント。2番手は、前戦ラリー北海道でのリタイアで自身のチャンピオン獲得の可能性が潰えてしまった上原。「久々に真っ暗な中のSSを走りましたが、ラリーをしているという実感があって楽しかったです。でも、暗いからオジさんたちは軒並みタイムを落としていますね(笑)。見えていても、スピード感覚が一段下がっている印象です。明日は新しいステージもありますし、うちのナビにチャンピオンの目があるので頑張ります」と、初日を振り返った。




トヨタ86とスバルBRZが鎬を削るJN3クラスは、竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ)を筆頭に、5クルーにチャンピオン獲得の可能性が残されている激戦区。SS1は曽根崇仁/竹原静香(トヨタ86)が制したが、SS2は山本悠太/山本磨美(トヨタ86)がベストタイムをマークし、クラストップに立った。

山本は「今回のラリーでは、初日のSS『SANPOU』がキモだと思っていたので、ここでしっかり攻めてタイムを出すことができたので良かったです。ターマックラリーのナイトステージは僕自身初めてなんです。汚れている部分が今ひとつ見えにくいんだなと。明日もしっかり走って、デイポイントも狙っていきたいです」と、手応えを感じた様子。2番手の山口は、「久々のラリーで、最初はペースが上がらずクルマに人が付いていけていませんでした。暗くなると落ち葉の影響もあり、かなり走りにくいですね。明日はコースも変わるので、セッティングを変えてトップを狙えるようペースを上げていきます」と展望を語った。選手権首位の竹内は3番手。「今日はセットアップ的にもチャレンジングな仕様で行ったんですが、いいところと悪いところが、しっかり分かりました。まだ勝負権もあるところにいますので、悪くなかったと思います。できればトップにいたかったんですけどね。明日はしっかりデイポイントまで狙い、チャンピオンも狙っていきます」と意気込みを語った。

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JN4クラスはスズキ・スイフトスポーツ同士のバトル。ドライバーズチャンピオン争いはランキングトップの古川寛が絶対的に有利で、4点獲得すれば自力優勝という状況だ。ところがその古川は、SS1で岩にヒットしロワアームを破損。大きく出遅れてしまい、初日をクラス8位、総合47番手まで順位を落とすこととなってしまった。一方トップは、最初の2SSを連続ベストタイムでまとめた高橋悟志/立久井和子。2番手には須藤浩志/新井正和、3番手には地元の黒原康仁/川原愛がつけた。

SS1では総合6番手と、4WDターボ勢に割って入るスピードを見せた高橋。「上手くいきました。タイヤの良い時に勝負をかけるのがポイントかなと。タイヤも6本しかないので、温存するにしても、1本目のあとに考えようと思っていました。何度も走っているところですし、明日もこのまま逃げ切りたいです」と、自信を覗かせた。2番手の須藤は「クルマを舗装用に仕上げてきました。高橋選手には届かなかったんですが、かろうじて2番手集団では勝てましたね(笑)。フィーリングはいいので、このまま2位をキープしたいです」とコメント。3番手の黒原は、「SS1の最後にマシントラブルが出て、エンジンが吹け上がらなくなりました。SS2は全然ブーストも掛からず走ったんですが、3番手で自分でびっくりしています。マシンをしっかり直して、これ以上落ちないように、上を狙っていきます」とのこと。背後に迫る西川真太郎/原田晃一と2.3秒差で最終日に臨む。




JN5クラスのチャンピオン争いは大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)と天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR SPORT)の一騎打ち。同点のため、1点でも上まわった方がチャンピオンという状況だが、このクラスでも波乱が待っていた。SS1ではスタート直後に大倉のマシンにトラブルが発生。後ろからスタートした天野が追いつき、SS1だけで1分近いマージンを稼ぎ出すことに成功した。クラストップはヤリスのセッティングを煮詰めてきた小濱勇希/東駿吾。2番手にマツダ・デミオの岡田孝一/石田一輝。3番手に天野という順位となっている。

首位の小濱は、「ヤリスはセットアップを中心にチームがアップデートしてくれたので、それがしっかり効果を見せてくれた感じです。天野選手や大倉選手は明日、本来のスピードを取り戻すと思うので、彼らに負けないよう全開で行くだけです」と、力強くコメント。「老体には暗闇とツイスティなステージは厳しいです」と、冗談交じりに語るのは2番手の岡田。「小濱選手は速くて、コンマ1秒の隙もできないですね。クルマはセッティングを変えて、すごく乗りやすかったです。タイヤはちょっと失敗してしまいましたが、明日も前を追ってプッシュします」と笑顔を見せた。3番手の天野は、「大倉選手がトラブったので、チャンピオン争いは楽な展開になりました。明日は50kmもあるので、マージンをうまくつかっていきたいです。大倉選手より上でフィニッシュすることが重要なので、しっかりタイトルを決めにいきたいです」と、気持ちを引き締めた。




前戦ラリー北海道でチャンピオンを決めた明治慎太郎がオープンクラスでの参戦となったため、勝負の行方に注目が集まるJN6クラスは、海老原孝敬/遠藤彰(トヨタ・アクア)がリードを築き首位。2番手には水原亜利沙/高橋芙悠(トヨタ・ヤリスCVT)、3番手には山北研二/糸永敦(日産マーチ)という順位になった。

首位の海老原は、「ずっとスピードが乗らない道で、ブレーキを踏まずに走れたのでクルマに合っていたんだと思います。明日はスピードレンジが上がるので、置いてかれないように頑張ります。京都と真逆のセッティングにしたらすごく良かったので、そのまま行こうと思っています」とコメント。42秒差の2番手につける水原は「SS1から頑張ったんですが、アクアに差をつけられてしまいましたね。ヤリスはクルマが軽いので、ハイスピードもツイスティも得意なはずなんですが、私自身はハイスピードがやっぱり得意ですね。明日は違う特徴のステージになるので、クルマのセッティングを少し変えて、動画を見返してまた頑張ります」と、翌日の追い上げを誓う。3番手の山北は「ノーマルショック、ノーマルパッド、スタビなしのクルマですから、思いのほか成績が良くてびっくりしています。今日のSSは得意なので、今日に賭けてきました(笑)。明日はノートの電池との戦いですね」と、日産車同士のバトルに言及した。

28日(土)の競技最終日はSS3〜SS11の9SS、SS距離51.69kmが戦いの舞台となる。3SSを3回走行するが、6SSを走ってサービスを行い、残りの3SSを走る構成。2020年シーズンのクライマックスに向け、各クラスで熾烈な戦いが続く。

Sammyツール・ド・九州2020 in 唐津 レグ1終了時点結果
1. 奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションX) 17:08.3
2. 新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI) +4.2
3. 勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI) +6.9
4. 鎌田卓麻/鈴木裕(スバルWRX STI) +12.4
5. 新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI) +16.6
6. 福永修/齊田美早子(トヨタGRヤリス) +53.8

7. 高橋悟志/立久井和子(スズキ・スイフトスポーツ) +1:03.4
10.山本悠太/山本磨美(トヨタ86) +1:10.4
11. 小濱勇希/東駿吾(トヨタ・ヤリス) +1:13.2
16. 中平勝也/行徳聡(トヨタGT86 CS-R3) +1:22.9
39. 海老原孝敬/遠藤彰(トヨタ・アクア) +3:15.5