これが"ジャパン"カップだ。 デアリングタクト(牝3歳)、コントレイル(牡3歳)、アーモンドアイ(牝5歳)と、この秋に…

 これが"ジャパン"カップだ。

 デアリングタクト(牝3歳)、コントレイル(牡3歳)、アーモンドアイ(牝5歳)と、この秋に"日本初"の快挙を遂げた3頭の三冠馬が激突した歴史的な一戦は、大げさではなく、世界中の競馬ファンを感動で震わせるレースとなった。

 その心揺さぶるレースにあって、あらためて際立っていたのは、このレースがラストランとなったアーモンドアイの強さだ。



3強対決に沸いたジャパンCを制し、有終の美を飾ったアーモンドアイ

 今回のレースの中心は、「3強」であることは言うまでもない。だが、その3頭以外も色気を持って臨んでいたことが、その引き金となった。

 この1年で、アーモンドアイとて負ける馬であることが明らかになった。端から勝てない相手と思ってしまえば、萎縮してしまうが、そうでないとわかれば、もはや遠慮はいらない。

 そして今回が、現役最強の女王と戦うことができる最後の機会。つまり、打ち破ることができるラストチャンスでもある。しかも、最強の女王は中3週のローテで不安を抱えていた。

 そのため、欲望をむき出しにした馬たちは皆、血気に逸った。

 まずは、キセキ(牡6歳)である。逃げ宣言をしていたヨシオ(牡7歳)、逃げて結果を出してきたトーラスジェミニ(牡4歳)の存在など意に介さず、スタートから先手を取ってレースを引っ張った。

 1000m通過タイムは57秒9。アーモンドアイの驚異的な日本レコードをアシストした2年前のレースを上回るペースで、後続を大きく引き離した。

 たとえ無謀なハイペースでも「この馬を気持ちよく行かせるのは危険だ」ということは、誰もが認識している。そうして、直線を向いてからもリードを保つキセキをいち早く捕らえにいったのは、2~3番手の好位に位置し、アーモンドアイの前でレースを運んでいたグローリーヴェイズ(牡5歳)だった。スタミナ丈夫が、先手を取ってアーモンドアイを封じにかかったのだ。

 一方で、アーモンドアイを見る形で追走していた同厩舎のカレンブーケドール(牝4歳)は、4コーナー手前から外目を進出。勢いをつけて、アーモンドアイのギアが上がる前に同馬を飲み込む算段だった。

 しかし、そうした脇役たちの"仕掛け"にも何ら慌てることなく、アーモンドアイは直線に入って、涼しげに抜け出してきた。周囲の騎手たちが懸命に追うのとは対照的に、鞍上のクリストフ・ルメール騎手の手は軽く促す程度。残り200mで一発ムチが入ってからは、完全に脚色が違った。

 その間、ライバルとなるデアリングタクトはコントレイルに行き場を奪われて、進路を内側にとって猛追。グローリーヴェイズ、カレンブーケドールとの3着争いを制するのが精いっぱいだった。デアリングタクトを封じたコントレイルは大外から強襲。4頭横一線の中からクビひとつ抜け出すが、アーモンドアイには並ぶこともできなかった。

 結局、そんな2着争いを尻目に、アーモンドアイは悠々とゴール。中3週の不安などどこ吹く風。むしろ、これこそがアーモンドアイの完成形か、と思わせる走りを見せて、GI最多勝記録を「9」に伸ばした。

 アーモンドアイにとって、前走のGI天皇賞・秋の勝利は"苦しみから抜け出す勝利"だった。最強の座から一度ならず二度も引きずり降ろされた彼女が、今一度、最強であることを証明したのだ。それゆえ、ルメール騎手はレース後に涙を浮かべた。

 だが、この日の勝利はそれとは対照的だった。さまざまな重圧から解放され、人馬ともに"ハッピー"な気持ちで競馬を楽しんでいた。それが、そのまま結果にも表れていたし、レース後のルメール騎手の表情からもにじみ出ていた。

 思い出すのは、2年前のジャパンC。レース後にルメール騎手が語っていた言葉だ。

「向こう正面では、この馬がどう勝つのか、自分も楽しみに乗っていた」

 おそらく、この日も同じだったのではないか。

 それは、もちろんアーモンドアイ自身が持っている能力の高さもある。ただ、今回に限って言えば、強力なライバルの存在があり、なおかつ、伏兵たちも死力を尽くしてベストな走りを見せたからこそ、引き出された力だったようにも思う。

 これで、アーモンドアイはターフを去るが、変わってコントレイルとデアリングタクトが現役最強のバトンを受け継いでいく。3強対決で戦前から騒がれた今回のジャパンCは、そのことを明確に示すレースだった。