2020年シーズン、名門・清水エスパルスは苦難に喘いでいる。 期待されたピーター・クラモフスキー監督の采配は裏目に出た…
2020年シーズン、名門・清水エスパルスは苦難に喘いでいる。
期待されたピーター・クラモフスキー監督の采配は裏目に出た。リーグ戦は第25節終了の時点で3勝17敗5引き分け、失点は最多の54。最下位を這いずり回り、解任という結果になった。
クラモフスキーは攻撃に殉じるような戦術に革新性があったものの、現実性に欠けていた。例えばプレスがかかっていないところでラインが高く上がって失点を喫するなど、守備の乱れを招くことになった。攻守の歯車が外れ、理想は混乱の渦に消えた。
クラモフスキー自身、コーチ歴が長く、監督という結果で生き抜くキャリアについてはほぼ一歩目だったということも災いしたかもしれない。横浜F・マリノスを優勝させたアンジェ・ポステコグルー監督と違い、チームを勝利する集団にできなかった。選手も負け続けたことで自信を失ったようなプレーが増え、悪循環を引き起こしたのだ。
クラモフスキー解任後、新たに平岡宏章監督が就任した。以来、3勝1敗。成績的には、目に見えて持ち直している。名門、清水は復権を果たせるのか?

横浜FC戦で金子翔太の先制ゴールをアシストした鈴木唯人(清水エスパルス)
11月25日、ニッパツ三ツ沢球技場。清水は横浜FCに敵地で挑み、1-3と勝利を収めている。前半は清水のショータイムになった。5分に金子翔太,6分にジュニオール・ドゥトラと立て続けに得点し、38分にも竹内涼が追加点を決め、0-3と半ば勝利を手中にした。
「いい守備からいい攻撃を」
それが、清水のお題目になっていた。まず、攻撃に無理に枚数を掛け過ぎない。相手のビルドアップを許さないプレッシングを見せ、それが攻撃につながった。また、自陣に侵入された時も、センターバックを中心に堅い守りを見せ、その安定感がビルドアップの丁寧さにもつながっていた。そして守備の安定が、攻撃的才能を持った選手を後押ししたのだ。
この日、ピッチで最も輝きを放ったのは、2トップの一角に入った鈴木唯人だった。
鈴木は19歳の高卒ルーキーながら、ボールを受け、運ぶ様子は泰然とし、不敵さすら映る。試合開始直後には前線でボールを受け、前を向いて寄せの甘さを見抜くと、右足を躊躇わずに振り切った。
トップクラスでは、シュートを打つことそのものが簡単ではない。前節のコンサドーレ札幌戦でも、交代出場で4本のシュートを放っているが、アタッカーとしての素養があることは一目瞭然だ。
先制点のシーンでは、左サイドに流れてボールを受けると、1対1を果敢に挑む。鋭いステップで縦に抜き切って、マイナスのグラウンダーパスを左足で折り返し、アシストを記録した。
「鈴木唯人がドリブルで相手を抉ってくれて。試合を通して脅威になっていたと思います。(自らのゴールも)お膳立てがすばらしかったですね」(清水・金子)
鈴木は、ラインのはざまを漂うセンスが抜群に長けている。巧みにボールを呼び込み、前を向くのだが、その動きが自然で無駄がない。それ故、余裕を持って次のプレーを選択できる。高いレベルでプレーする資質を備えていると言えるだろう。後半になっても、ラインの間で受け、逡巡なく右足を振り、シュートはGKの手に収まったが、センスを見せつけた。
そのシュートがネットを揺らせるかどうか――。少なくとも、鈴木はその境地まで達している。
後半、清水は横浜FCのシステム変更などでプレッシングが後手に回り、反撃を受ける形で1点を返され、守勢に回った。連戦連敗だった記憶によるものなのか。リズムが悪くなると、突如として自信を失ったようにボール回しにもミスが出て、いたずらに相手に渡していた。
しかし、守備に立ち戻った戦い方は最後まで粘り強さを見せたとも言える。
「(前半に)追加点を奪えてよかったです。後半は勢いに押されて受け身になってしまいましたが、焦ることはなく、自分たちのサッカーができました。強いて言えば、せっかく奪ったボールを相手に渡していたので、そこでつないで攻撃をやり切ることができれば......。ただ、私が監督になってパーフェクト(と言えるよう)な試合だったと思います」(清水・平岡監督)
サッカーの世界では、攻撃的にすることが必ずしも攻撃を活性化するとは限らない。守備の土台を作ったセレッソ大阪は上位に食い込み、坂元達裕のようなアタッカーを輩出し、清武弘嗣を蘇らせた。いい守備はいい攻撃を生み出すのだ。
清水はJ1の中で比較しても戦力的に劣るわけではない。堅実で明確な戦術を基礎にすることで、お互いが高め合い、台頭する選手は自然に出てくるだろう。攻守のバランスを取り戻すことが先決だ。
残り5試合。来シーズンに向けて、鈴木はひとつの希望と言える。