有観客で行われた全日本ジュニア選手権。アイスダンスでは西山真瑚(人通1=東京・目黒日大)・吉田唄菜(N高)組が登場した。昨シーズンは、同大会で優勝を果たしことを始め、ユース五輪に出場するなど様々な大会で経験を積んできたこのカップル。コロナ…

 有観客で行われた全日本ジュニア選手権。アイスダンスでは西山真瑚(人通1=東京・目黒日大)・吉田唄菜(N高)組が登場した。昨シーズンは、同大会で優勝を果たしことを始め、ユース五輪に出場するなど様々な大会で経験を積んできたこのカップル。コロナウイルスの影響で拠点が違うという状況の中、ドリームオンアイスに出演、そして前大会の西日本選手権で優勝するなど、今シーズンも存在感を放っている。今大会でも、二人の演技は輝いており、リズムダンス(RD)は、58.74点、フリーダンス(FD)は、91.06点、どちらも1位の演技で見事連覇を果たした。

 

2020 Japan Junior Figure Skating Championships

有観客の会場で笑顔いっぱいの演技をする

 全日本ジュニア選手権、初日に行われたRD。西山・吉田組は第二滑走。名前がコールされると、観客のいる会場からの声援に笑顔で応える。リンクに登場すると、アイスダンス界をけん引している2人の持つオーラと華やかさが会場を包む。リズムダンスは『コーラスライン』。曲が始まると、愛らしい表情と息の合った振りで会場を一気に引きつけていく。最初のツイズルでは、互いの距離が近いところで動きをシンクロさせ、レベル4を獲得する。そのあとのステップでも音を繊細に捉えるエッジさばき、そして体を大きく使った滑りでまるで2人でハーモニーを奏でるようなスケーティングを見せる。第一のパターンダンスでは4つの内3つ、第二では2つのキーポイントをきっちりと決めた。曲調が変わると細やかな表情の変化や、力の入れ方の強弱で表現し、2人の世界観を作っていく。曲の盛り上がりに合わせて流れるように入ったローテ―ショナルリフトでは前の大会からレベルを1つ上げレベル4。まるで一つのステージをみたような、余韻の残る楽しい演技を披露した。 得点は、58.74点。会場に花を咲かせ、明るくするような魅力的なスケーティングとスマイルをもっている二人。実力は点数に表れているものの、まだまだ伸びしろが感じられる演技であった。次の大会でさらに磨きのかかったプログラムに期待したい。

 

2020 Japan Junior Figure Skating Championships

FD、大きな拍手に包まれた演技

 競技二日目のFDは2シーズン目となるバレエ『ドン・キホーテ』。まずはスペインの街の溌剌(はつらつ)とした音楽に合わせて、アクセントをはっきりつけ、華やかな舞で観客を2人の世界に一気に引き込む。その後曲調が変わり、ゆったりとしたテンポに合わせながらも、あっという間に滑るスピードを上げ、リンクの端から端までステップを踏んで進んでいく。美しい流れそのまま、プログラム前半の見せ場であるシンクロナイズド・ツイズルへ。2人の持ち味でもある、同調性の高くスピードのあるシンクロナイズド・ツイズルでレベル4を獲得し、会場から大きな拍手を得る。続くコンビネーションスピンでも吉田の華やかで氷上に映えるポジションと安定感のある回転速度がひかり、高い加点を獲得した。その後つなぎとして美しく伸びのあるアラベスク・スパイラルを挟みながらリフトへ。「1週間半前から2人で練習できるようになった」という状況であり、1人では練習するのが困難なエレメンツではあったがローテーショナルリフトを乗り切る。さらにカーブリフトではジャッジ前からスタートし、リンクの最奥のショートサイドまで進む。吉田を支えながらベスティスクワット・イーグルで滑る西山の、卓越したスケートの伸びが見られた。 終盤、グラン・パ・ド・ドゥのコーダの曲に合わせ会場の手拍子も大きくなっていく。「拍手とかもしてくださって、すごく楽しめた」(吉田)「お客さんがいることで自分たちも楽しんで滑ることができた」(西山)と、会場を味方につける。同時にテンポも上がっていく中ではあるが、一つ一つの動きを明確にこなし、長く見せる部分ではまっすぐに伸びた足の角度まできちんと揃えようとする丁寧さも伺えた。豊かな表情やアイコンタクトでも存分に魅せ、フィニッシュまでしっかりやり切ると、客席はこの日初めてのスタンディングオベーションとなり、大きな拍手に包まれた。 試合後、「お客さんの力は偉大だなという風に改めて感じた試合でした」と話した西山。拠点であるカナダでの練習が難しい状況下であり、試合だけでなく2人での練習も数えるほどしかできていない中で臨んだ今大会。レベルを取り切るのが難しい要素である、ステップに関してはまだまだ伸びしろがあるが、それでもリフトなどそれ以外の要素では全て最高評価のレベル4を獲得した。更に演技構成点では特に後半3項目で7点を超えるなど、2人の魅力を存分に引き出したプログラムとして今日も高い評価を受け、FDは昨年から得点を伸ばす91.06点を記録。

 アイスダンスはジュニアとシニアではRDの課題が大きく異なるため、シングルのようにシニアの全日本選手権に出場することはできない。それでも今後について聞かれると「今はまだ先が分からない状況なんですけれども、出させていただける大会があるのなら、僕もステップアップしてその大会に臨みたい」(西山)と高い意欲を見せた。

 

2020 Japan Junior Figure Skating Championships

見事2連覇を果たした

(記事 青柳香穂、岡すなを 写真 アフロ/JSF)

結果

▽全日本ジュニア選手権

西山真瑚・吉田唄菜組 1位 149.80点(RD 58.74点 FD 91.06点)

コメント※フリー後、Zoomでの囲み取材より抜粋

 

西山真瑚(人通1=東京・目黒日大)・吉田唄菜(N高)

 

――フリーの演技を振り返ってください

 

吉田 久しぶりにお客さんの前で滑ることができて、やっぱり無観客とは全然違って、拍手とかもしてくださって。すごく楽しめたので、とにかく今は満足のいく演技ができたなと思っています。

 

西山 久しぶりにお客さんの入る試合で、お客さんがいることで自分たちも楽しんで滑ることができて、お客さんの力って偉大だなという風に改めて感じた試合でした。

 

――会話をしながら滑っているようにも見えましたが、どういった心境で滑っていましたか

 

吉田 やっぱり真瑚くんが若干緊張しているのが伝わってきたので、一緒に緊張してしまわないようにお互いに頑張ろう、とかあとちょっと、とか言いながら滑っていました

 

――本当に会話をしていたんですね、西山選手はそれに励まされましたか

 

西山 本当に自分が緊張していて。でもちょっとしたそういうことで緊張がほぐれるので、ありがたいという感じです。

 

――今後試合がどのようになるか分かりませんが、どのようなことを目標に頑張っていきたいですか

 

吉田 今回こうやって大会ができて連覇することができたことはすごく嬉しかったので、このあとどうなっていくか分からないんですけど、もし今シーズンまだ大会に出ることができたら、さらにレベルアップした私たちを見せられればいいなと思います。

 

西山 大会が開催されて、自分たちがそこでパフォーマンスできるというありがたさをすごく感じた大会でした。今はまだ先が分からない状況なんですけれども、出させていただける大会があるのなら、僕もステップアップしてその大会に臨みたいなと思います。